第11話 クエスト失敗

攻撃的になったアルマジロンは危険だと判断したディレイによって、氷結の魔法で動きを止められ一刀両断に切り倒された。さすが3次職である、圧倒的な強さであった。


「ジンタ。悪いが今日は終了だ。今の状態じゃ多分どうやってもクエストクリアは無理だ」

ディレイに現実を突きつけられる。

「そうだね、今日は帰りましょう。ジョブクエストは期限がないから、焦る必要はないよ」

ニジナは空気を読めない言葉が多い。俺は焦っているんだよ。ジョブポイントが欲しくて仕方ないんだ。


みんなに説得されて今日は一度戻ることになった。完全なクエストの失敗である。町に戻ると、反省会の為に勇者酒場へと向かった。


「まず、氷結系のモンスターを召喚できるようにしないとダメだな」

反省会とは名ばかりの飲み会とばかりと思ってたが、ロンドベンがもっともらしい意見を言ってきた。


「代表的な氷結系の召喚モンスターって何がいるかな」

ニジナも真面目なふりして話を繋げる。その問いにはディレイが答えてくれた。

「そうだな、まず代表的なのはジャックフロストかな、あとは氷トカゲとかアイスエレメンタルなんかもそうだな」

うわっ全然エロくない奴ばかりだよ・・そんなの召喚したくないので却下だな。

「ユキジョロウってのがいなかったっけ」

珍しくニジナがいいことを言った。ユキジョロウって女型のモンスターだよな・・

「ユキジョロウはダメだな。ジンタのレベルじゃ手に負えない」

「ディレイ! なぜそう決め付けるんだ。為せば成ると思わないか」

俺が力強く意見すると、やれやれといった感じで説明し始めた。

「いいか、ユキジョロウのレベルは25前後だ。ジンタ。お前のレベルはいくつだ」

「普通よりちょっと出来がいい11だ!」

「いいか、召喚モンスターをコントロールできるのは、召喚士とのレベル差が精々5くらいまでだ。もし、召喚できたとしても、レベル差が10以上も開いたら暴走するのが目に見えてる」

「暴れ馬を乗りこなすのも悪くない!」

「・・・・いや、なぜそこまでユキジョロウにこだわるんだ。氷トカゲでも十分アルマジロンを倒せると思うぞ」

「トカゲなんて嫌だ!」

俺がそう力強く言うと、ディレイは何を勘違いしたのかこう解釈した。

「そうか・・そうだったのか・・お前、トカゲが苦手なんだな。悪い悪い。それじゃ、お詫びにいいことを教えてやる。召喚石って知ってるか?」

「召喚石・・なんだそれは、いいものなのか」

「お前、召喚士のくせに、召喚士の知識ないよな・・まあ、いいけど。召喚石ってのは召喚士が使うマジックアイテムだ。小さな石なんだけど、それに契約した召喚モンスターを待機させておくことができて、いつでもその召喚石から任意のモンスターを召喚できる便利なものだ」


なんだと! なんだその夢のようなアイテムは! そんなのあるなら誰か教えてくれよ。よし。そうなれば話が早い。その召喚石に女モンスターを入れればいいだけだな・・と、そう考えていたのだけど、どうもそう話は簡単ではなかった。ディレイの話はまだ続く。

「だけどな、その召喚石の契約ってのが特殊でな、モンスターとの絆というか・・ある程度の信頼関係がないと成立しないらしい」

「モンスターとの絆なら自信がある! 俺はモンスターを愛している!」

「・・まあ、そうだな、愛するくらいじゃないとダメだと思う。あと、空の召喚石を手に入れないとダメなんだけど、これがすごく高い。お前、金持ってるか?」


「大丈夫。貯金が10万ゴルドほどある」

「・・・空の召喚石は、セールで買っても100万ゴルドはするぞ」

「なんだと! 少し足らないじゃないか!」

そう俺が言うと、ニジナがつっこんで来る。

「どこが少しなのよ・・」

「ニジナが80万ゴルド貸してくれるから、あと10万足りない」

俺はそう言うと、驚いた顔でニジナが怒りだす。

「あんた! どうして私の貯金額知ってんのよ!」

「前にニコニコと通帳を見ているのを後ろから確認させてもらった」

「勝手に確認するな!」


「まあいい。本気で召喚石が欲しいなら、金はギルドから貸してやっても構わない。お前が強くなるのも、ギルドとしてはプラスだからな」


うむ。金は喜んで借りよう。それがギルドの為であるし、俺の性欲の為だ。だけど問題はどうやって召喚石に入れるモンスターと契約するかだ・・ちょっと情報収集が必要かもしれない。

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