第9話 最大の弱点

イーブルダンジョンは、冒険者の街、ルーディアの北部の森の近くにある。街から歩いて30分ほどの距離で、道中は舗装されているので歩きやすい。さらにそこまでの道の脇には、いろんな店が並んでいて、冒険者相手の商売で繁盛していた。


そんな賑やかな通りを進んでいくと、イーブルダンジョンの入り口がある。ダンジョンの入り口は10メートルほどの幅があり、高さも3メートルはある。巨人族でも体を屈めれば入れる大きさだ。


俺たちパーティーは、イーブルダンジョンに入ると、最初の分岐点を右に進んだ。それは2階層への階段があるルートで、進行ルートと呼ばれていた。


パーティーの最初の戦闘は、1階層の進行ルートを進んだところにある、モンスターが湧き出る、モンスターポータルと呼ばれるポイントで始まった。


そこにいたのはシュレイプローダーと呼ばれる、何本もの触手を持つモンスターであった。出会った瞬間、シュレイブローダーは、触手を激しく動かして、その敵意をむき出しにしていた。


「ジンタ! 後ろに下がれ。そいつは見た目より攻撃力が高い」


ここはロンドベンの言葉に、素直に従う。だけど、後方からシュレイブローダーのウニョウニョしている触手を見ていると、俺の召喚したドリアードがあの触手に絡まれて、陵辱されるのを想像すると堪らなくなってきた。ドリアードの胸やアソコがあの触手に色々されてるのが見たい・・俺は、スキルパネルを開いて、ランダム召喚スキルを実行した。


しかし、当たり前のように召喚されるのは父ちゃん坊やのノームである。マジでただの偏りなのか不安になってきた。ノームが触手に色々されているのを見る気にはなれないので、普通に攻撃するように命令した。


ロンドベンが、触手の攻撃を剣と盾で防いでいる横から、ノームが地の魔法を放つ。それは衝撃波のように地面を走り、シュレイブローダーに直撃する。触手の何本かが引きちぎれ、その戦闘力が弱ったのを見て、後ろからルドビッヒが弓技で攻撃する。レーザーアローと呼ばれる光の矢がシュレイブローダーを貫く。貫かれた部分が黒く焼け、シュレイブローダーはベタリと崩れ落ちて消滅していく。


「倒したな。ジンタの召喚、なかなか使えるじゃないか」

いや、こいつは使えない奴だ。ロンドベンは何を言っているのだ・・


「そういえば他にはどんなモンスターを召喚できるの、ジンタ」

「ウンディーネとドリアードが召喚できるはずだ・・できるはずなんだ!」

ジンタは祈りの言葉のようにそう叫ぶ。


そのあと、敵と遭遇することもなく、二階層に到着する。アルマジロンの生息区域は少し奥にあるので、そちらに向かう。途中、少し天井の高い大部屋に入ると、不気味な翼が羽ばたく音が聞こえて来る。


「何かいるぞ・・」

ロンドベンが皆に注意をする。俺は音の聞こえる上を見上げた、そこには豊満な胸を露にさらけ出し、局部も丸見えの、素敵なモンスターが羽ばたいていた。

「ハーピーよ!」

敵の正体に気がつき、ニジナがそう叫ぶ。

「ハーピーの爪は鉄も切り裂く。みんな気をつけろ」

ディレイの警告など無視して俺は助走をつけてジャンプする。そしてロンドベンの背中を踏み台に、もう一度高く宙に飛び上がる。


冒険者の身体能力は女神の加護により強化されている、召喚士とはいえ通常の人間とは比べ物にならない跳躍力で、俺はハーピーに飛びついた。いきなり抱きつかれてハーピーは驚き戸惑っていた。


もはや俺を止める者はいない。ハーピーと一緒に地面に落ちると、その豊満な胸に顔を埋める。至福の時である。まさに興奮が最高潮に到達しようとした。その間ハーピーの爪で、背中のあたりをグチャグチャされてるけどそんな痛みなど気にしない。すべての集中力を、胸に顔を埋めてるその場所に集める。


「ジンタがハーピーを捕まえたぞ!」

「よし! 今がチャンスだ。攻撃を集中しろ!」


性行為の邪魔をするんじゃない。そう叫びそうになったが、その叫びも仲間の攻撃に邪魔をされる。ロンドベンの剣や、ルドビッヒの矢で攻撃されたハーピーは、その生命力を失っていき、どんどんその温かい体温が失われていく・・ダメだ・・まだ俺は興奮したい・・ハーピー・・死ぬんじゃない。そう心の中で叫ぶが、そんな祈りは届くこともなく、やがてハーピーは力尽き、消滅する。


「よく捕まえたぞジンタ」

「ジンタ。グッジョブ!」


そう俺を褒める仲間の声も、性の対象を殺された俺の心を癒すくことはなかった。どうして俺は一人で来なかったんだ・・一人であれば邪魔されることもなく、最後までやれたんじゃないだろうか・・そうか、そうだな、今度一人で来てみよう。そう考えてると、ハーピーにやられた背中の傷からの出血で、バタリとその場に倒れてしまった。


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