第5話 負けることが嫌なんじゃない、ヌケないことが嫌なんだ。
ダンジョンの奥へと少し進み、すぐに、次の敵と遭遇する。相手は大型の獣型モンスターのサスカッチ1体である。サスカッチは、氷結耐性のあるモンスターで、火炎属性に弱い。
そうなると火属性の精霊が好ましいが、俺はそんなことを気にしない。女であればそれでいいのだ。
すぐにランダム召喚のスキルを発動する。今回、魔法陣から現れたのは火属性の精霊、サラマンダーであった。敵に対して、完璧な召喚に、仲間からは歓声が上がる。
「ジンタ! ナイスだ。サスカッチには見事なチョイスだぞ」
「チッ・・」
サラマンダーの女体とは掛け離れたその姿に、俺は露骨に嫌な顔をして舌打ちする。
俺は投げやりにサラマンダーに命令する。
「やっちゃって」
サラマンダーはその命令に従い、サスカッチを火炎の息吹で攻撃する。強力な火属性攻撃で攻撃されては一溜まりもない。サスカッチは炎に包まれてその場に倒れる。だが、耐久力の高いサスカッチはまだ生きていた。とりあえず短刀で倒れたサスカッチを滅多刺しにして攻撃する。するとサスカッチはその命を失い、光って消滅した。
サスカッチの倒れた場所には、光る宝石が落ちていた。ロックはそれを拾い上げてこう言う。
「よし、ドロップアイテムだ!」
「雪の結晶石みたいね。なかなかのレアドロップよ」
これ一個で、今日の稼ぎとしては十分なドロップアイテムであった。冒険者が、冒険に出て、一番気にするのは、その日の日当である。それをクリアーできたことは、気持ちにかなりの余裕ができる。
それからの狩りは順調に進んだ。順調と言っても、俺は常に痛い思いをしてボロボロの状態になるし、召喚もなかなか女の子が出てくれなくなった。だけど経験ポイントは順調に溜まっていっているようだ。目をつぶってステータスを確認すると、かなりいいペースで経験ポイントが稼げているのがわかる。この調子だと、一週間くらいでレベルアップするんじゃないだろうか。
だけど、本日の最後の狩りにするつもりであった敵が、厄介な奴であった。
「バルンカイドよ。気をつけて、奴には物理攻撃が効かない!」
ニジナがそう教えてくれる。俺はすぐにランダム召喚スキルを発動する・・とするが、スキルが発動しない・・
「しまった! 魔力枯渇だ・・・」
今日は多くの魔力を必要とする召喚を10回以上してしまった。それで魔力が無くなってしまったようだ。
その状況を見て、ニジナが唯一使用できる攻撃魔法を放った。それは光属性の魔法で、レールライトと呼ばれる魔法であった。レールライトの光は、まっすぐ伸びていき、バルンカイドに命中する。だが、効果的な属性攻撃ではないようで、ほとんどダメージを受けていないようであった。
「ダメか・・・」
バルンカイドは、幾つの触手をウネウネさせながら、近づいてくる。俺は短刀で斬りかかった。しかし、物理攻撃が効果のない相手である。もちろんその短刀ははじき返された。
触手は鋭い鞭のように、俺に襲いかかる。肉が削げ落ちるような触手の攻撃を、数えられないくらいに受けて、さすがに頭がクラクラとしてくる。だけど俺はこんなところで倒れるわけにはいかない。まだ、何もしていないのだから。
ルルナとニジナから回復魔法がかけられる。受けた傷が癒されるが、それより受けるダメージの方が大きいようで、ダメージが蓄積されていく。
やばい・・意識が薄くなっていく・・このままでは死んでしまう。嫌だ・・死にたくない・・まだ、俺はモンスターとエロことをしていない。ダメだこんなとこで死んでたまるか、俺は色んなモンスターと何度も何度もエッチをするんだ!
「うぉぉおお!」
俺は拳を握り、バルンカイドの口に向けてそれを突っ込んだ。そして残りの魔力を全て使って、攻撃魔法を放つ。俺は召喚士になる前はメイジをしていた。もちろん、転職しても前職で取得したスキルや魔法は使用可能なので、初級の攻撃魔法なら使うことができる。だが、それを普通に使っても、威力的にバルンカイドを倒すことはできないであろう。なので、中に直接食らわしてやることにしたのだ。
中で放たれた攻撃魔法は、初級の雷撃魔法のライトニングであった。初級の魔法の中では抜群の威力を持っているのでこれを使ったのだけど、どうやらバルンカイドは雷撃属性に弱かったようだ。雷撃を受けたバルンカイドは、グジュグジュに溶けて消滅する。
倒したバルンカイドの後には、赤い石が残っていた。
「ジンタ、レッドストーンだ・・今日、二個目のレアドロップだぞ」
それはかなり高額で取引されている高魔力の石で、俺が死にそうになっているのに、みんなホクホク顔でそれを見つめていた。
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