第4話 誰よりも早く
まずはパーティー編成だな。俺は早急にレベルを上げる為の、冒険に出かけるメンバーを考える。
経験ポイントは、戦闘しなければ入ってこない。戦闘とは、敵を殴るだけではなく、仲間を回復したり、召喚士だったら、召喚したモンスターが敵を攻撃したりしても入ってくる。
パーティーで敵を倒した場合、その経験ポイントの分配は、その貢献度によって変わってくる。基本的に、敵の攻撃を受けたり、敵に致命傷を与えると、貢献度は高くなる。それを考えると、俺が高い貢献度を得るには、敵の攻撃を受けて、しかも敵に致命傷を与えればいいのだ。そうなると、仲間に強力なタンクやアタッカーがいると、邪魔にしかならない。
今、必要なパーティーメンバーは・・ひ弱で、低火力、しかし敵の殲滅に役に立つ・・そんな矛盾した者だ。それで、うちのギルドからメンバーを選択する。まず、最初に選んだのは攻撃力が無く、打たれ弱い、シスターと呼ばれるジョブの冒険者、ルルナであった。シスターは女性専用の二次職で、防御も攻撃も低いが、強力な神聖魔法を使用することができる。回復も補助も使えるので、今回の俺の為のレベル上げにはもってこいである。
さらに、ハイプリーストのニジナを誘った。ハイプリーストは、シスターよりは防御能力が格段に上だが、タンクをするほどの耐久力はなく、攻撃力は皆無なので、今回の冒険に、なんとか連れて行けると思う。
そしてもう一人、
俺の呼びかけで、ギルドの寮の入り口に集合したみんなは、第一声に声をそろえてこう言った。
「このパーティーバランス悪くないか!」
その通りである。バランスが悪いのだ。まず、前衛がいない。そして火力が無い。何故かヒーラーが二人。バードの補助スキルもうまく活用できないであろうあパーティー編成なので、その存在意義も疑わしい。一見、何がしたいのかわからないが、俺には明確なビジョンが存在する。
「ジンタ。前衛職がいないぞ。どうすんだよ」
ロックが最もな意見を言ってくる。
「心配するな、今日は俺が前衛職だ」
俺が自信たっぷりでそう言うと、ニジナが呆れた感じでこう言い返す。
「ジンタ、あんた、召喚士でしょ。前衛なんかできるわけないでしょうが」
だが、俺も負けてはいない、さらに強い意志でこう言い放った。
「できる。俺は召喚士だが、じょうぶい。なんとかなるはずだ」
ロックとニジナが呆れていると、シスターのルルナが助け舟を出してくれた。
「まあ、本人ができるって言ってるし、二人もヒーラーがいれば、なんとかやれるんじゃないかな」
さすがルルナだ。これでモンスターで、露出度が高ければ惚れるとこであった。
なんとか駄々をこねる二人を説得して、俺たちはダンジョンへと向かった。挑戦するダンジョンは、イーブルダンジョン。地下五階層の中級冒険者に人気のダンジョンで、ドロップアイテム、経験値ともに良好の素敵な場所である。
と言ってもこのダンジョン、推奨レベルが15と、俺たちパーティーの平均レベルより上なので、現実、一階層をウロウロするのが精一杯だと思われた。
ダンジョンに侵入すると、すぐにオーガが数体現れる。俺はすぐにランダム召喚スキルを発動した。現れたのはウンディーネ。水の精霊であった。体は水でできているみたいで、裸体は無いが、そのフォルムは女体そのものであった。そんなウンディーネを見ていると、すごく興奮してきた。もはやその興奮は抑えきれず、体の局部に隠しきれない反応を見せていた。
「ジンタ! 何やってるの、すぐにモンスターに命令しないと!」
俺がウンディーネを見てボーとしていると、ニジナがそう叫ぶ。
確かに、召喚時間は数十秒しかない、すぐにウンディーネに俺の局部を触るように・・いや違う。敵を攻撃するように命令した。
攻撃を命令されたウンディーネは、手から体の一部を切り離すように、水の塊をオーガたちに放つ。その水の塊は、無数の刃の形となって、オーガに襲いかかる。その鋭い水の刃によって、オーガたちは切り刻まれた。だけど、攻撃したウンディーネも、時間が来たのか、すぐに消えてしまった。
水の刃に耐えたオーガ二体が、俺たちに殴りかかってきた。もちろんその攻撃は、前衛である俺が全て受ける。トゲトゲの棍棒のような武器を持っているオーガに殴られて、一瞬で血だらけになる俺。それを見て、ニジナとルルナが、俺に回復の魔法をかけてくれる。バードのロックは、竪琴を弾き鳴らし、癒しの音を奏でる。さらに俺の体は回復していく。
俺はオーガに、唯一の武器である短刀で攻撃して、チクチクとダメージを与える。その100倍の威力の攻撃で反撃されて、瀕死にされると、仲間が回復してくれる。それを繰り返して、なんとかオーガを倒すことができた。
最初の戦闘を終えて、俺以外のみんなの意見は一致する。
「いや・・これ・・無理じゃねえか・・」
俺はロックの意見を否定する。
「いや、いける!」
そんな俺の言葉に、さすがのルルナからも否定的な意見が出る。
「さすがにジンタ、辛くない? いくら回復されるって言っても、痛いのは痛いでしょ? それに回復限界がくれば、死んじゃうよ」
回復限界とは、ある一定期間に過度の回復を受けると、体の再生許容量がオーバーして、一時的に回復できなくなることである。それが戦闘中に出ると致命的で、連続した回復魔法はタブーとされている。
「問題ない。限界かなって思ったら、右手をそっと上げるので、それで判断してくれ」
そんなんで大丈夫かよと、みんな思っているが、なんとか説得して冒険を再開する。
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