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 本当はソフトクリームの為だけに外出するのはどうしようかと思ったけれど、そう言えば欲しかった新刊が出ていたことに気づいたので朝食もそこそこに家を出ていた。

 ほら、朝の方が学生とか少ないし、それに新刊だって午後から読めるじゃん? 一石二鳥じゃん? だから断じていい歳してソフトクリームの為だけに外出したわけないから、なんて誰に言っているのか分からない言い訳を脳内で言ってみる。

脳内の誰かが返す。『食べてもいいよ』

 そうして行きの道で本屋に寄って欲しかった新刊と、帯とPOPに引かれた本を購入して早速店に向かう。地図アプリで店の位置を確認するとメインの通路から二つ向こうの路地を入ったところのようだ。こんなところ絶対に通らないから今日のことがなかったら多分一生知らなかったと思う。

 なんとなくドキドキしながら路地を曲がって歩く。一体どんな店なのか、そしてソフトクリームの日キャンペーンの秘密の新作ソフトとはなんだろうか。その店では七月三日から二日間、その新作の先行発売がされているとのこと。目当てはこれだ。新作も気になるけど何より価格が三十パーセントオフ。

「生クリームがけソフトクリーム、とか?」

 うーん。なんだろう。でもミルク感たっぷりのソフトクリームが一番の売りみたいだし、きっと何かそれ系の奴に違いない。絶対美味しいやつ。

 なんて食べてもないのに勝手に想像が膨らむ。いや待て、まだそうだと決まった訳じゃない。例えばアフォガードって可能性もあるじゃないか。それも好きだからいいんだけど。

 路地を曲がって視界に入った薄水色の可愛らしすぎる店を見つけて一瞬歩みを止めそうになるけど、グッと一歩を踏み出して店に向かう。

 丁度いい、この時間はあまり人がいないみたいだ。三人組の女性が店の近くにいるだけだし。そんなことより新作は? どんなヤツなわけ?

「・・・?」

 一目見た感想は「なんで?」だ。受け取る際に店員からの説明を受けた時、多分俺は変な顔をしていたに違いない。正確に言えば戸惑った顔だ。

 だってあんなにミルク感の強いソフトクリームを売りにしていたのに! まさかバニラビーンズの入ったソフトクリームを出されるとは思わないじゃん!

 俺はバニラよりもミルク派なんだよ! 

 なんて憤りを感じつつとりあえず店員からそれを受け取って来た道を帰る。

うーん、バニラのソフトクリームって美味しい印象がないんだよな。なんだかそれの味しかしないって感じで、あんまり好きじゃない。昔に食べたバニラのソフトクリームが激マズだったからかもしれないけれど・・・

「・・・」

 えぇいままよ。このまま溶けていく様子をただ見ている訳にもいかないし。多分きっと美味しいに決まっている。だって新作だぞ?

 決心して一口パクリ。

「・・・っ!」

 瞑った目蓋の奥でパチパチと星が輝く。まじか。

「何これ最高に美味い」


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