第20話「心の扉」
「まずいな………稜葉たち、もう調伏する気でいる」
戦後「天国の一マイル」と呼ばれた沖縄のメインストリート、国際通りを車で通り抜け、双葉は賑わう繁華街には目もくれずにハンズフリーにした携帯端末の通話を切った。
通話の相手は稜葉だった。
「そうか。ならばここは儂が霊道を使って、先に希州のところへ行ってもよいが?」
助手席で大好きなビールを片手にご満悦の狗神、夜斗は酔いを知らない酒豪なので
当然一本で満足する事はなく、空の缶が何本もシートの下に転がっていた。
綺麗好きな双葉にはたとえ借りものの車だとしてもいい気分はしない。
しかしそれを咎める事はせず、ただ不快そうに顔を顰めるだけだ。
「いや、それには及ばない。精々三十分もあれば着くだろう。それより下に転がった缶を何とかしてくれ」
しかし夜斗は大きな口を開けて欠伸をすると、そのままシートにうずくまり、そのまま眠ってしまった。
夜斗は疲れている。
今日一日で何度も霊道を通って来たのだ。
だからそれは双葉なりの思いやりの現れだった。
もう永遠に戻らない過去の恋人……白羽と呼ばれた狗神に対すると後悔と懺悔のように………。
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