第10話「仕切り直し」

深いエメラルドグリーンの海辺は、キラキラと陽光を照り返す。

その向こうに那覇の街並みが一層輝いて見える。


午後になって双葉とれむは、理宇から詳しい事情を聞いた後、那覇の中心街、泉崎に出た。


理宇とはそこで別れた。

彼女はまだ不安そうにしていたが、それでも双葉たちに相談した事で幾分緊張がほぐれたようだった。


午後を回り、日差しは肌にジリジリと突き刺さり、痛いほど強さを増してきた。

しかしその割に気温自体はそれ程高くなく、湿気がない分サラッとしている。


那覇の市街地までは車で十五分程。

車窓からはヤシ並木や色とりどりの花々が楽しめた。


「で、所長。これからどうしますか?」


まさか今更稜葉たちと合流しようとは流石のれむも言い出せない。


「そうだな……、とりあえずどこか落ち着ける場所で方針を立てて、そこから現段階で出来得る調査をしようか」


「了解です」



国際通りに入ると途端に混み入ってくる。

那覇市は人口約三十一万人。

車以外の交通機関は発達していない。

特に那覇では陸上交通の行き詰まりは年々悪化の一途である。


双葉たちはメインストリートを真っすぐに進んだ。

メインストリートとはいうが、やや細く狭い道である。

行く先々ですれ違う人たちに気を配らねばならない。

通りの両側はデパート、輸入雑貨、民芸品店、郷土料理店等が軒を連ねている。

それらを縫うようにして土産物袋を下げた観光客たちの一行が行き交っている。


「あっ、所長!あれ見てください。あれ…あれシー……なんでしたっけ?」


ひと際賑わっている通りを歩く中、れむが興奮した様子で双葉の白いスーツの袖を軽く引いた。

れむが言っているのは歩道の入り口に置かれた獅子を象った置物だ。

どうやらそれが中々思い出せないらしい。

双葉は軽くため息を吐きながらも説明してくれる。


「あれはシーサーだ。沖縄特有の魔除けの置物だよ。古来から悪鬼や悪霊のもたらす災いを防ぐといわれている」


「あっ、そうでした。シークワーサー?あれと混在しちゃて……えへへ」

「……今すぐ沖縄県人に謝りたまえ」


こうして双葉と並んで那覇の市街を歩いていると、軽いデートをしているような錯覚に陥り、れむは一人でご機嫌だった。

双葉の方はというと、そのような感慨を抱く事もなく、相変わらずの仏頂面で視界の先にある小さなレストランを指さした。


「よし、春日君。あの店で休憩しよう」


それは沖縄の県花、デイゴの花で彩られた洒落た店だった。


「はい。所長♡」


二人は連れ立って店へ入った。









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