第4話「風水県、沖縄」

沖縄は日本最西端に位置する亜熱帯の島国である。


北端の硫黄鳥島から南端の波照間島と東端の北大東島から西端の与那国島まで大小合わせて108もの島々がある。


沖縄は元々「琉球」と呼ばれ、日本の文化を持った人々が移り住み、その歴史を作って来た。

15世紀の始めから約500年間、沖縄は「琉球王国」という独自の国家が敷かれていた。

しかし明治12年に沖縄県と改め、琉球王国は解体された。

その後、第二次世界大戦後に米国の統治下に置かれたが、昭和47年に日本へ返還され、現在に至る。


そんな複雑な歴史と独特な風土を持つ沖縄へれむたちは足を踏み入れる。


れむたちは早朝の便に乗って昼頃には沖縄本土へ到着していた。

その間、れむは信じられない事に初めてだという飛行機にまるで子供のようにはしゃぎ、双葉の頭痛を増長させていた。


「まったく、君という半人前は……。いいか、修学旅行じゃないんだぞ。それを君ときたらあちこちキョロキョロ、バタバタと勝手に席を立つわ、キャビンアテンダントには気軽に世間話を仕掛けるわ…一緒にいて恥ずかしかったぞ。君も来年は二十歳になる。そろそろ分別というものを弁えて、節度と落ち着きをだな……」

「ふぁ~い。先生~」

「誰が先生だっ!」

あくび交じりに気のない返事をしながられむはピョンピョンと飛行機のタラップを降りていく。

降りるとすぐに南国独特の少し重い湿気を含んだ熱気に包まれる。

丁度観光シーズンという事もあり、周囲は観光客たちでごった返している。

最近は不況も影響してか、海外より国内旅行の方が人気があるそうだ。


「ところで所長、これからどうするんですか?」

他の観光客たちに交じって、自分たちもそのまま観光旅行といきたいところだが、残念な事に今回は仕事で来ている。

まずは仕事を優先しなくてはならない事くらい半人前所員であるれむにも分かっていた。


「そうだな……。取りあえずはレンタカーを借りて荷物を置きがてら宿泊先のホテルへ向かおう。その後は弟の宿泊先へ行って合流し、依頼主のお宅を訪ねてみるか」

観光客たちの集団から抜け出した双葉たちは一旦立ち止まり、予定を立てるべくスマホと手帳を交互に見て確認をした。

彼は予めおおよその予定をしっかり立ててから行動するタイプだ。

すべてが行き当たりばったりのれむとは正反対である。

「う~っ。早速予定ぎっしり」

「ほら、さっさとしないと置いていくぞ」


双葉はもうゲートを出て先へ進んでいた。

涼やかな彼の立ち姿は人目を惹く。

れむは彼の綺麗なレモン色の髪を目印に追いかける。


「もう、待って下さいよ~。置いていかないで下さい」


こうして二人は那覇空港を無事?……後にした。

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