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「この前みたいに僕の布団で寝て欲しい」
そう言って幹は葵を連れて自室に引き込む。
「でも良いの?せっかくのお願いの日なのに」
とパジャマ姿の葵は言ったものの、内心では予想外のご褒美にうきうきしていた。幹の断りもなくさっそくベッドに横になり掛け布団に包まる。
一方で幹は、先日保険医に教わった『おあずけ』を実践する思惑を持っていた。
(はぁあああ。やっぱり気持ちい。良い匂い)
至福のひと時を過ごす葵。やがて幹に甘えたくなってしまう。
「幹ぃ~頭撫でて」
ヘロヘロな声で葵は言う。幹は葵がそうやってねだる時をずっと待っていた。
言われた通り頭を撫でる幹。しかし触れるか触れないかのギリギリのところで、さらにゆっくりと動かすので葵はまるで満たされない。
「ねえ、ちゃんと撫でてよ」
葵が言っても幹は変わらない。幹に頭を撫でられる気持ち良さを知っている葵は、もう少しで気持良くなれるのに、というもどかしさで一杯になる。
「ねぇ。撫でて。撫でてよぉ」
葵は懇願する。そんな姿に幹は何とも言えない優越感、嗜虐性に目覚めていた。
「ちゃんとお願いして。どうして欲しいの」
「頭を撫でて欲しいの」
「撫でてるよ」
「もっと!もっと強く撫でて!」
そして泣き出す葵。まるで幼児退行したかの様に、幼げな仕草に幹は愛おしく思える。
「ふえぇん。撫でてよぉ」
ポロポロと涙を零し、幹に懇願する葵。幹はその愛くるしい様子に、ついに力を込めて頭を撫でた。
幹の体温がようやく頭に伝わり、満たされる喜びに葵は悶えた。
「はあぁああ、やっと撫でてくれたあぁあ」
嬉し泣きも混じって、葵はさらに涙を零す。やがて気を失うように眠った。
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