5
眠りに落ちた葵を幹は眺めていた。口がちょっぴり空いていて、少しにやけている。
可愛らしい寝顔を眺めていると、いたずらをしたくなってしまう。幹は恐る恐る少し空いた口に自分の指を入れてみた。
「んん、幹ぃ」
そんな寝言を言って葵は口に突っ込まれたそれをちゅぱちゅぱとしゃぶりだした。
「ひゃ!」
こそばゆい感覚が指先から伝わって幹は驚いた。
美味しそうに舐めまわす葵。赤子がおしゃぶりを加えて喜んでいるような愛おしさを幹は感じた。
(可愛いなあ。葵は本当に可愛い)
幹は堪らず頭を撫でた。それが幹の精一杯の愛情表現である。頭を撫でたついでに、葵の頬を突く。ちょっとだけ葵の身体がビクついたが、未だに目覚めていないと幹は思った。
(私なんで幹の咥えてるのぉおおお!?)
しかし実は葵は目覚めていて、自分が幹の指を咥えていることに喜びつつも戸惑っていた。
「あれ、なんか動きが止まったな」
幹は葵の口が止まったことに不思議に思う。葵はバレないように必死に口を動かした。
(は、恥ずかしいぃいい。でも何だろう、変な気分)
葵の中で徐々に恥ずかしさが薄れ、代わりに何かが芽生える。
(幹の美味しい。もっと舐めたい。もっと幹の舐めたい!)
葵の感情が高まる一方、幹は再び『おあずけ』を実行したいと思っていた。
幹は強引に指を引き剥がす。唐突に訪れた虚無感に葵は酷く飢えた。
幹は葵の唇を指でそっとなぞる。目を閉じている葵はすぐそこに幹の指があることを知る。
堪らず葵は目を開けて勢いよく幹の指を食べた。
「うわ!」
その勢いのまま幹を押し倒すと、まるでおあずけに耐えられなかった犬の様に夢中で指を舐めまわすのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます