第37愛 咲き乱れよ、百合の花!

 影の巨人シャドウタイタン夢の都ドリームタウン中心部へ向かって侵攻を続けようとする。闇の妖気を凝縮した一撃を放たんとする巨人の口を、白猫姿の猛獣マリンが咆哮により放つ光輝く妖気の球で塞ぐ。影の手足を光の爪で引き裂き、動きを止める。


「ヒャッハーー! 続けていっくよーー! っておっと!?」


 影の巨人が口から猛烈な風を巻き起こし、猛獣マリンが後方へと後退する。そして、再生しようと動きを止めた巨人へ向かってくの一姉妹が雷撃をお見舞いする。


「これ……いつまで続くのん!」

「お姉様大丈夫です、私たちの雷撃も少しは効いているようで……きゃっ!」


 すると、失った脚を再生させた影の巨人が形を変え、素早く影で出来た触手のようなモノを伸ばし、さくらを拘束する! 縛り上げた触手は彼女の忍び装束を引き裂き、彼女のなだらかな双丘が一部露出された状態となってしまう!


「さくら! 愛しのさくらを! 許さないのん! 雷火――稲妻斬いずなぎり!」


 さくらを縛った触手と化した影を稲妻を帯びたくないで斬り裂くも、別の触手がうぐいす、さくらを縛り上げてしまい、うぐいすの林檎サイズの双丘と桃のような臀部までもが剥き出しとなってしまう。


「ひっ……ダメなのん……あたしを侵していいのはあたしが認めたお姉様か、ユズキ様だけなのん……」

「お姉様……ひゃん……大事なところに影がぁっ!」


 宙に浮かぶくの一姉妹。強く縛り上げられる度に苦悶な表情を浮かべる姉妹。果実の突起部分に影の先端が触れ、思わず声をあげてしまううぐいす。そんな姉の様子に切ない表情となるさくら。


「こんな姿……さくらに見られちゃ私……」

「あぁ……やめっ……お姉様の美しい果実が……お姉様ぁあああ」


「今助けるわよっ! ――白猫光印爪アルバライトクロー!」


 遠くへ飛ばされていた白き猛獣が態勢を整え、光輝く爪が触手型に変化した影を全て引き裂いていく! 縛り上げられていたくの一姉妹が触手より解放され、そのままモフモフの巨大な猛獣の背中へと落下する。


「モフモフ気持ちいいのん……お姉様ぁああ……助けてくれたお礼にこのまま侵してくれていいのん」

「うぐいすお姉様と一緒にさくらも天国へ逝きたいのです」


 モフモフした感触を肌で感じつつ、至福の表情でマリンへ語りかける百合姉妹。マリンは蠢く影の巨人シャドウタイタンを見据えたまま叫ぶ!


「わかったから! あんた達、戯れは巨人こいつを倒してからにしなさい!」

「わかったのん! 一緒に逝くのん!」

「マリンお姉様、どこまでもついて逝きます!」


 次の瞬間、影の奥、心臓部分より淡い光が視え、どこからともなく声が聞こえる。


『マリンさん、一時的に影の主――シェイドとブライティ王の妖気力フェアリーエナジーとの引き剥がしに成功しました! 光の力で影を消滅させたなら、縛り上げられていた王の魂は解放されるハズです!』


「さすが弥生様ね。このまま仕留めにいくわよ! うぐいす、さくら!」

「はいなのん!」

「私達の力をお見せします!」


 再び手足を形成し、立ち上がる影の巨人シャドウタイタンへ向け、白き猛獣が背中にくの一姉妹を乗せたまま突撃する! 姉妹は両手を恋人繋ぎするかのように指を絡ませたまま念じ、片方の手をそれぞれ前へ出した瞬間、全身より愛の百合花火が放たれ闇を蹂躙する!



「――熱き火花よ、ここに輝き、咲き乱れよ! 雷火――遠雷百合花火!」

「――輝く猛獣の爪撃! ――白猫輝爪撃アルバシャインクラッシュ!」」



 最大級の雷撃により全身を焼かれた影はマリンの爪撃により真っ二つに引き裂かれる。影を光が包み込み、全身を白く染め上げる。やがて光が周囲に拡散し、闇が晴れた時、地に横たわるブライティ王の姿が出現した。


 白き猛獣姿から元の猫妖精姿へ戻ったマリンが王の身体を抱きかかえ、素早く回復能力アビリティを施す。やがてエルフの王はうっすらと目を開ける。


「ブライティ王! ご無事ですか!? もう大丈夫ですよ!」

「ここ……は……?」


 この時、マリンは忘れていた。自身が産まれたままの姿で野生化し、何も身に着けていなかった事を。王の視界に猫耳姿の妖精が、美しい肢体を露にした状態で自身を抱きかかえる様子が映る。続けて現れる姉妹妖精も、戦闘により服を引き裂かれた事により、蕾のようななだらかな丘と林檎サイズの果実を弾ませつつ、王の前へと姿を現す。桜色のツインテールと鶯色のポニーテールが、果実と共に王へ優しく迫る。


「もう大丈夫なのん」

「無事でよかったのです」

 

「そうか……ここが天国か……」


「ブライティ王! 大変!」

「王が気を失ったのん」

「戦闘の傷が!? 早く回復を!」


 こうして光の国ライトレシアの最高権力者であるエルフの王は、鼻から赤い血を垂らしたまま気を失うのであった……。




★★★


「拙者は……死んだのか?」


 闇の中、シェイドは再び目を覚ます。王を取り込んだ彼は、主のため影の巨人と化し、夢の都を侵攻していたのだ。


「貴方はもう主に仕える必要はありません。貴方の魂をこのまま浄化します」


 水色の着物を身につけた夢見の巫女がゆっくり影の騎士の前へ歩み寄る。


「拙者は主のため、全てを滅ぼさねばならぬ!」

「残念ながら、貴方の魂は本来此処に居てはいけないのです。数十年も前、貴方は戦いに敗れた。地獄の狭間を彷徨っていた御霊をフォボスは呼び起こした。貴方は闇を利用されていただけなのですよ、シェイド……いえ、サタナイト」


 かつての名で弥生がシェイドを呼ぶと、影の騎士は刀を納めた。


「サタナイト……懐かしい名だ……そうか、拙者は滅びたのだな」

「生前とある国の旧都の兵士として仕えた貴方は、旧都が滅びると共に生涯を終えた。そこにナイトメアが漆黒の騎士としての命を与え、貴方はサタナイトという妖魔となってしまった」


 弥生が掌より白い光を放出すると、影の騎士は生前の美しい騎士姿へと変化する。その光景をユズキとレミリアは息を呑んで黙って見ていた。


「そうか……つまり拙者は利用されていたのか。そこの若き青年よ、君は生前の私に似て熱い意思を持っているようだ」

「え? ……僕ですか?」

 

 急に声をかけられ、戸惑いつつ返事をするユズキ。


「拙者のようには決してなるな。絶望は身を滅ぼす。忘れるな」

「もちろんです。僕は決して絶望なんかしない」

「私がついているからユズ君は大丈夫よ」


 ユズキの横にレミリアも立ち、頷く二名ふたり。その様子を見て騎士は満足そうな表情となり、光に包まれる。影の騎士シェイドは、そのまま空間にて光の粒となり、宙へと浮かぶ。


「……残念ながら時間が来てしまったようだ。拙者の本当の名はクライス・・・・。巫女よ、拙者の魂を救ってくれて感謝する。青年よ、希望を忘れるな」


 空間に弥生、ユズキ、レミリアが残る。


「さぁ、私達も還りましょう。早く此処から抜け出さないと、現実世界へ戻れなくなります」

「そんなぁ、ユズ君と愛の抱擁イチャラブする時間がないじゃない」

「レミリアはいつでもマイペースだね……」


 こうして、無事に影の騎士の魂を解放した三名さんにんは光に包まれ、空間より脱出したのである――――

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