第36愛 お姉さんがちゃんとついてるからね?
ウネウネと蠢く空間の中、夢見の巫女――弥生を先頭に、透明な道なき道を進んでいくユズキとレミリア。ちなみに
「ユズ君ざんねーん……ーー元の姿へ戻る前にお姉さんさっきの続きやりたかったわぁー」
「レミリア……目の前弥生様が居るからね。その発言やめようね」
「あら、愛を育む事は素晴らしい事ですよ? なんなら回廊途中に
「じゃあユズ君、今度宿へ戻ったら
「待って! レミリア全然表現が隠れてないから! それにあの姿そのために使うモノじゃないから!」
こんな危機的状況でも発情出来るレミリアお姉さんは大人の余裕か、はたまた(以下略)。
「影の主と接触する際に青年ユズキ状態の方が有利かと思ったのですが、先程の姿には、まだ発動条件があるみたいですね」
ユズキ自身、あの姿になったのは初めてで、とにかくフォボスという眼前の敵を倒すために必死だったのである。寵愛の持つ
(僕は本当に愛されていたのだろうか……)
空間を移動している中、ユズキがそう考えて居ると……眼前の視界が突然何かに遮られた。ユズキの女の子のようにムニムニで柔らかいほっぺが同じく艶やかで柔らかい何かにむにゅぅううと埋もれる。
「ほーら、ユズ君! 何か考え事してたでしょー? 私がちゃーんとついてるんだから心配しないの!」
「んく……レミリア……息が……」
ユズキの不安に思う気持ちを察知したかのようにレミリアが豊かな双丘の〝強制男の娘メロンサンドイッチ〟を発動したのだ。最愛の
(そうだ、そんな事を考えている場合じゃなかった。それに、今は守るべき相手が目の前に居るじゃないか)
「どう? すっきりした?」
「ありがとう、レミリア。身も心もすっきりしたよ」
「お取り込み中すいません、そろそろ到着しますよー?」
ニヤニヤしている弥生から声をかけられ、慌てて衣服を整え、決戦へ向け気を取り直す
★★★
地面より炎が噴出する。全身の穴という穴から汗が噴き出しそうな程、熱に覆われた世界。そんな世界に漆黒の馬に乗った騎士が、燃え盛る紅蓮の炎のように紅く美しい髪と戦乙女のような鎧を身に付けた女性と戦っていた。流れるような剣捌き。歴戦の戦士を彷彿とさせる両者。
そこへ岩場の陰には鎧を着た青年の姿が視界に入る。青年がタイミングを見計らい、漆黒の騎士へ短剣を投げつける。短剣を騎士が回避した一瞬の隙を逃さず、炎を纏った刃で漆黒の騎士を斬り払う。漆黒の騎士が反撃に出ようと刃を向けるが、続け様返しに放った刃により、騎士は焼き切られ、その場で延命した。
『弥生さん……これは……』
『私達……何を見せられているの?』
『これは影の主、シェイドの深層心理の世界です。このまま様子を
ユズキ達はまるで映像を見せられているかのように空間に浮かんでいた。どうやら過去の映像らしい。場面は切り替わり、闇に伏し、残骸となった騎士の頭へ声をかけるフードの男が現れる。
『あれは……フォボス?』
「……強くなりたい……拙者は……主に何も恩返しをしていない……」
「
『ナイトメア!? ……そうですか……なるほど』
弥生だけが映像を視つつ腕を組み、状況を理解したように見えた。
「――馬鹿な!? 拙者はあの時、死んだのか……」
「そうじゃ、お主の肉体は滅び、この地獄と闇の狭間を彷徨っていた。どうじゃ、お主を殺した相手が憎いか?」
「主の目的を果たしていない。拙者は忠義に誓うのみ……」
「そうか……ではそのナイトメアが果たせなかった目的、儂が果たそうぞ。ナイトメアの兄である儂、
漆黒の騎士はフードの男――フォボスの手を取り立ち上がる。フォボスが手を翳すと、
「この姿は……」
「お主はこれから影の騎士――シェイドじゃ。お主の力でもう一度、妖魔が支配する世界を創ろうぞ!」
シェイドとして生まれ変わったシェイドとフォボスが手を取り、常闇へと消えていく……。再び場面は切り替わると、そこにはブライティ王と対峙するシェイドの姿が映し出される。
「これは、お前の仕業か」
「拙者はシェイド。我が主の影となる存在」
「ここはどこじゃ?」
「
「ではお主に問う。何が目的じゃ」
王とシャイドの会話が続く。そして、核心をつく質問をシェイドが言い放つ。
「――古代メイナ族の秘宝はどこにある?」
『古代メイナ族の秘宝だって!? 弥生様!』
『いえ、私もそんな秘宝の存在は存じません。恐らく古代メイナ族の血を引くブライティ王しか知らないのではないでしょうか?』
シェイドの過去から王との会話を通じ、少しずつ敵の内情が見えてくる。
「お主に言う義理はないの。殺したくば殺すがよい」
「ただでは殺さぬ。お主が秘宝の在り処を言わない事で、
次の瞬間、影はブライティ王の口内へ入り込み、影の量が一気に増大する! 王の
「やめ……んか……」
「秘宝の在処を言え!」
「それは……出来ぬ……」
「では
「グォオオオオオオオ!」
『こんな……ひどい……』
『こいつ……早く止めないと……!』
『ユズキさん、レミリアさん! 行きますよ! 影よ、目覚めの時です。王の妖気をこれ以上呑み込む事は私が赦しません』
弥生が手を翳した瞬間、
「貴様達……ナゼ……ココニイル?」
「ひとときの夢、目覚める
蠢く影に向かって、弥生の掌から白い閃光が放たれた!
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