第30愛 ケモ耳嬢はお姉様のキスで目覚める

 闇……何者も捉える事が出来ない静寂の空間……。黒で塗りつぶされたかのような漆黒の世界。そんな闇の中で光の国ライトレシアのエルフの王――ブライティは目を覚ました。


「む……ここは……」


 四肢を動かそうとするが、何かに縛られたかのように動かす事が出来ない。


『目覚めたか、王よ』


 漆黒の闇の中にも拘らず、自身のが動いたように見える。影は実体化し、影の騎士のような姿となる。


「これは、お前の仕業か」

『拙者はシェイド。我が主の影となる存在』


 王は拘束されている自身の置かれている状況を理解する。王はまだ殺されていなかった。


「ここはどこじゃ?」

影の牢獄シャドゥプリズン。王の命は我が主の手にあると思うがよい』


「ではお主に問う。何が目的じゃ」


 影は蝋燭の灯のように揺らぎ、影の剣を引き抜く。そして、王の首下へ剣先を突きつけ、王からの問いに問い掛けで返したのである。





『――古代メイナ族の秘宝はどこにある?』



★★★


「嗚呼ーーフォボスさまぁーー私はもう開発されてしまいましたぁーー。怖いのぉおおーーもっと私を縛ってぇええ!」

「……ショコラちゃん。早く救ってあげないと、彼女が壊れてしまうわ」


 身を捩じらせ悶える妖狐の尻尾が激しく小刻みに震えている。度重なる痛みと恐怖によるフォボスからの支配に、彼女の精神は壊れかけ、今までに味わった事のない快感へ目覚めかけてしまっていた。


「くっくっくっ……その雌狐はもう儂のモノじゃのぅ。ショコラよ、そこの小娘をお前が殺せ! そうすれば、後でとびきりのをやろう! じゃがその娘、殺すに勿体ない身体をしておるからの。殺す前に好きに犯してもいいぞ?」

「フォボスさまぁーーわかりましたぁーーレミリアお姉様ぁああーー私のために死んで下さーーい」


 瞳の中にハートマークを浮かべたまま薙刀の刃を光らせ、ショコラがレミリアへゆっくりと近づく。


「くそっ! させない!」


 ユズキがショコラの下へ向かおうとするが……。


「おっと、お主の相手は儂じゃろう? ――暗黒球シャドーボール!」


 フォボスの掌から放たれる漆黒の球を手に持つ扇を開き、受け止めるユズキ。彼の身体が後方へと押し出される!


「ユズ君!」

「なぁによそ見してるんですかぁーー?」


 ヒュンッ! と空気を切る音。下から掬い上げた薙刀の刃がレミリアの顔を掠め、ブロンドの髪が数本はらりと落ちる。同時にユズキも眼前に迫るフォボスへ向き直る!


「レミリア、こっちは大丈夫だ!」


「私もなんとかするわ! ユズ君の寵愛を受けているもの。この温かい想いがあれば乗り切れるわ!」


 ちらっと視線を交差させ、レミリアとユズキは眼前の相手へと集中する!





「やっとやる気になりましたぁー? いきますよぉー? 妖気弾――夢追い球ユメオイダマ!」

「夢魔法――夢妖気弾エナジーボール!」


 妖狐ショコラ夢属性の能力アビリティと、夢妖精レミリアが放つ夢属性の魔法。同属性の妖気力フェアリーエナジーと魔力がぶつかり合い、相殺された……のだが……!?


「あれ……!?」


 火花のような白い閃光が飛び散ったかと思うと、ショコラの身体が一瞬後方へ飛ばされかける。寵愛により強化されたレミリアの魔法が少し勝った形となったようだ。


「うそっ!? 圧し負けた!? なら、これならどうですか? 狐風――妖術――鎌鼬かまいたち!」


 振り下ろした薙刀が空気を斬り、真空の刃がレミリアへ向かって襲いかかる! レミリアが防御態勢を取るも、魔導士のローブが引き裂かれる!


「ふふふ……これは効くみたいですね……狐風――妖術――鎌鼬かまいたち!」 

「夢見への誘いよ――童夢音波ドリームウェイブ!」


 鎌鼬かまいたちを回避しつつ、レミリアが対象の妖気力フェアリーエナジーを直接減らす、目に見えない童夢音波ドリームウェイブを放つが……。


「妖狐にはその攻撃視える・・・のですよ? 狐風――妖術――鎌鼬かまいたち!」

「嗚呼……!?」


 レミリアの服が引き裂かれ、片方のメロンが半分露出した状態となり、数ヶ所の傷から血が滲む。一瞬怯んだレミリアへ向かって尻尾を振りつつ妖狐が飛びかかり、そのまま彼女を押し倒す! そして、妖気で出来た縄のようなモノで彼女の手足を縛ってしまう。


「これでもう動けませんねぇーお姉様!」

「くっ……やめなさいショコラちゃん!」


「お姉様ぁーー首筋に傷が出来てますよぉーー?」

「やめなさ……ひゃん!」


 ペロリと舌で首筋を舐められ、声をあげてしまうレミリア。数ヶ所出来た傷を舐められる度、ゾクリと電気が走ったかのような信号が全身を駆け巡る!


 (駄目……さっきユズ君の寵愛を受けたばっかりだから……感じやすく……)


「このままお姉様犯しちゃっていいですかーー? そして……死んで貰いますよ!?」

「……痛っ!?」


 ショコラが思い切りレミリアの右肩に鋭い牙を立てる! 肩口から血が溢れ、心臓の鼓動が早くなる!


「死の恐怖と同時に得た痛みはやがて快感になるんですよぉー? フォボス様が教えてくれたんです。レミリアさんも快感味わって死んで下さいねぇー」

「くっ、ショコラ……やめっ」


 服を引き裂かれ、優しく舌で愛撫されたかと思うと傷口を抉られる。快感と痛みの波状攻撃にだんだんと感覚がなくなり、どっちが快感でどっちが痛みなのか、感覚が麻痺してくるレミリア。


「そろそろ、お姉様のこの豊かなメロンを味わいますね」

「……これ以上は……」


 ショコラがレミリアのプルルンと露出した果実を堪能しようと手を伸ばす。レミリアが目を閉じた瞬間、脳裏にはメロンで優しく包み込むユズキの姿が浮かぶ。


 (ユズ君……ダメ……このままやられる訳には……いかない!)


「え!? 消えた……!?」


 刹那、縛られていた筈のレミリアの身体がその場から消失し、果実を蹂躙しようとしたショコラの両腕は地面を掴む。ショコラが立ち上がり、周囲を見回し彼女の名を呼ぶ!


「何処よ! レミリアお姉様?」

「――ここに居るわよ、目を覚まして、ショコラ!」


 突然ショコラの眼前に服が剥ぎ取られ、剥き出しとなった巨大な二つの果実が出現・・し、妖狐の顔を強制的に埋めさせる! 寵愛による淫媚な空気とレミリアが持つ甘い芳香がショコラの脳裏を蹂躙し、そのまま両手で果実を押さえられる度、柔らかい彼女の弾力に全てを忘れてしまいそうな心地よさに襲われる。


「んんん! んんんん! お姉……さま……んく……息が……」


 そのまま強引に押しつけられる解放された果実の暴力。呼吸が出来ないまま頭の中をぐるぐる果実による快感が駆け巡り、息が出来なくなったショコラは、そのまま意識が朦朧とした状態で何も考えられなくなる。


「らめぇ……もうなーんにもわかんにゃーーい……」

「ショコラ、そのまま安らかに眠りなさい。そして、恐怖の呪縛から解き放たれましょう。貴女を現実へと送り届けます! ――目覚めの口づけアウェイクキッス!」


 頬に口づけをした瞬間、桃色の光がショコラを包み込む。呪縛から解放する夢妖精の口づけにより、彼女は恍惚な表情をしたまま目を閉じ、ゆっくり横たわるのだった ――――

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