第23愛 君《美少女》の名は
『こんにちはー! 僕だよ。みんなのアイドル、パンジーだよ! 今日は待ちにまった
『お、あれです! 光の国の聖都、ブライティエルフご用達のケンタウロス馬車が見えて来たよ!』
美しい鬣を靡かせ颯爽と馬車を牽く人馬一体のケンタウロスがメイン通りへ入って来ると、道の両脇より歓声があがる。五体のケンタウロスが速度を落とし、出迎えるギャラリーに答える貴族達。真ん中の馬車に荘厳な雰囲気を出した国王の姿が見えた。
「今のところこちらは異常なしよ、ノゾミ」
「こちらノゾミ。マリン、遠くから狙っている者も今のところ居ないよう。問題ないです。ツカサ、そちらは?」
都全体を見渡せる高台より監視をしているノゾミ。弓を構え、怪しい動きがあれば狙撃を阻止する位置。
「こちら夢見御殿手前、ツカサ。こちらも異常なし」
肉テロパーティは国王が
『みんな国王の来訪を歓迎しているよ! この後、国王様と貴族の皆さんは夢見御殿で巫女の弥生様を含む幹部の皆さんと会食、会食の後は会談、
やがて、ケンタウロス馬車はメイン通りを通過し、夢見の巫女が居る、夢見御殿へと向かっていく。
『次は
何事もなく中継は終了し、貴族や国王達を見る事が出来た妖精達は皆、満足そうな表情をしていた。
「……これから暗殺が起きようとしているなんて思えないくらい平和ね」
国王の無事を見届け、路地裏へと隠れる
★お★★に★★く★
「弥生殿、こうして直接お会いするのは巫女就任式以来かの?」
「ブライティ王お久しゅうございます」
荘厳な雰囲気を醸し出すエルフの王――ブライティと、絢爛豪華な水色の着物と金色の髪飾りを身につけた弥生が握手をする。
「弥生殿もすっかり巫女が板についておるの」
「いえいえ、先代の十六夜様に比べるとまだまだですわ」
ブライティ王と弥生が昔を懐かしみつつ対話をしていると、弥生のお付をしている卯月が
「ブライティ陛下、ブライティエルフご一行様、会食の準備が出来ております。皆様迎賓の間へとご越し下さいませ」
貴族の整った衣装を身に纏ったエルフ達が迎賓の間へ入ると、それまでの和の様相とは打って変わって高い天井に豪華なシャンデリアが吊るされた、一面金色の刺繍が施された絨毯が敷かれた部屋が上流階級の者達を出迎える。
立食パーティの形式で豪華な食事が並ぶ。ユズキ達が取り寄せた皇帝牛馬のローストビーフやステーキも用意されている。ひな壇中央のテーブルにはブライティ王と大臣らしき人物、弥生と卯月が座る形となった。
「堅苦しい話はなしじゃ。
「乾杯!」
一同乾杯の合図と共に、会食が始まる。会食には夢見部隊の幹部達も一部参加しているため、ブライティ王に何か起きないよう監視していたが、何事もなく会食は進む。貴族達も豪華な食事にお酒が進んでいるようだ。そんな中、ブライティエルフの貴族の
「おぉ! 流れる大海原のように深く蒼い髪……神聖な光魔法のように輝くミルク色の肌……その世界を全て見渡すかのような空色の瞳……私は君のような人に巡り合うためにきっと此処に来たんだね」
「ええっと……はぁ……」
金色の髪を靡かせ白く美しい手にキスをする貴族の男性。顔立ちは整っているが、身分を全面に出したかのような雰囲気を醸した男性であった。突然の出来事に思わず動揺し、身震いしてしまうお姫様のような桃色と白のプリンセスドレスを着た人物。
「嗚呼すまない……自己紹介がまだだったな。私は彼の有名なエルフの大貴族――グランデ家バディス公爵の嫡男、ブラストだ。美しい君の名は?」
プリンセスドレスの子の手を握ったまま傅くブラスト。
「ええっとぼ……私は……」
「ブラスト様、ご機嫌麗しゅうございます。ユリアは大切な私の妹である。私は兄のレミリオだ」
「ほう、兄は騎士団に所属しておるのかな? そうかユリア姫と言うのか。ではレミリオ殿も義兄になる可能性がある訳であるから、ご挨拶をしておかねばなるまいな」
「あ……あの……」
急すぎる展開に困り果てた表情となるユリア。いや、もうお分かりであろう。ユリアはユズキ、レミリオはレミリアである。
「ブラストさん申し訳ございません。私はユリア姫お付メイドのショコラと申します。ユリア様はこういう場に慣れておりません故、この位にしておいていただけませんか?」
「おぉ! 君のその耳は妖狐かい? なんと気持ちが良さそうな尻尾と耳。君はグランデ家の専属メイドとなるかい?
今度はショコラの手を取り、じっと見つめるエルフ。困ったような表情となるショコラ。
「すまないね、君達。ブラストは美しい女性と見ると誰でも声をかけるんでね。気にしないでくれ」
「クロース、フランツ家のエルフが何しに来た。私はこのお姫様を正妻に迎え入れようとしているんだ。邪魔をしないでくれ」
銀髪銀瞳のエルフがブラストの横に現れ、ユズキ達にお辞儀をした。端正な顔立ち、身分を隠したような立ち振る舞い、所作から人柄が窺える。
「いいのかい? 君
「ちっ、今それを言うか……。ユリア姫、私達は明日迄滞在している。正妻の件、考えておいてくれたまえ……」
ユズキに背を向け、颯爽と隣の席へ立つブラスト。残されたクロースという男が改めて謝罪してくれた。
「クロース様感謝する。ユリアの兄としてお礼が言いたい」
「いえ、当然の事をしたまで。グランデ家とフランツ家は代々派閥争いのような事をしていてね。お見苦しいところを見せたね。でも確かに君は美しいねユリア姫」
握手をするクロースと苦笑いするユズキ。
「ええと……ありがとうございます……」
「ユリア姫は世界一の可愛さです! メイドの私が保証します!」
「うむ。私自慢の妹である」
たじろぐユズキの横で瞳をキラキラ輝かせたメイド姿のショコラと、美しいに激しく同意し頷く騎士姿のレミリアなのであった。
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