第22愛 元Aランク冒険者のおっさんは宿屋の主人として第2の人生を送ります

 ゴルの宿屋の主人ゴルゴンに呼び出されたユズキは、ゴルゴン達スタッフが休憩する部屋のソファーにて、ライトレシア国王来訪当日の作戦について話をしていた。


「まぁそういう訳だ。基本移動は夢渡の力ドリームポーターを使い、国王の護衛は夢見部隊ドリーマーパーティが行う。ユズキ、君のお陰で暗殺者達の情報は、くの一姉妹から大方入手する事が出来たからな。後は相手の裏をかいて捕まえ……ってユズキ聞いてるか?」

「え……あ、はい大丈夫です、聞いてます」


 真剣な表情だったが心ここに非ずな状態で目の下にクマが出来ているユズキ。そんな彼の様子を見て思わず心配して声をかけるゴルゴン。テーブルに置いてあったお茶を口に含むユズキ。


「その様子じゃあ寝不足か? まさか、レミリアちゃんとゆうべはお楽しみだったとか?」 


 ブフォオオーーーー!?


 ユズキの口から放たれたお茶は、まるで水鉄砲から放たれた水のように、見事にゴルゴンの顔へ直撃した。彼のミルク色の頬がゆで蛸のように真っ赤に染まっている。


「ゴ、ゴルゴン……さん、急に何を言い出すんですか……!?」

「……おいおい、まさか本当に・・・お楽しみだったのか!?」


 観念したかのように溜息をつくユズキ。


「……ええ……まぁ」

「がははははは!? そうかそうか! ユズキお前、そんな可愛い顔して結構やるんだな! お前達用に二名用のふかふかなベッドの部屋を用意しておいてよかったぜ!」


 (あのベッドは貴方の仕業ですか……)


 ゴルゴンがユズキに近寄り、背中を何度も叩くものだから思い切り咳込む青年。ゴルゴンの顔は完全にエロ親父だ。


「ちょっ……やめてください、ゴルゴンさん」

「おぅ、すまんすまん。いやぁ、でもめでたいな。そうかあのメロンの美女レミリアちゃんと……さぞかし盛り上がったんだろうな! がははははは!」


 この後しばらくゴルゴンのエロ談義が続いた。





★メ★★ロ★★ン★


「あら、皇帝・・お帰りなさい」

「お帰りなさいませ、皇帝陛下!」

「祝……特Aランク昇格」


 ユズキが当日の作戦を皆に伝えようと肉テロパーティの部屋へ入ると、謎のニックネームで出迎えられる彼。


「ユッズくぅーーん! お帰りぃいいいい」


 部屋に入るとユズキへ向け思い切りダイブするレミリア。今日の果実もむにゅんと柔らかく心地いい。夢妖精の甘美な香りに思わずうっとりしそうになる青年。


「……ねぇ、レミリア……彼女達に何か言った?」

「ん? 何も?」


 果実から頭を話したユズキが空色の瞳を細めると、口を尖らせて惚ける夢妖精。これはしばらくからかわれるの必至だ。昨日記憶が飛ぶ・・・・・程、魔獣と化してしまった自身を反省するユズキ。


「愛を育む事は素晴らしい事よ」

「のほぉーー私も早く舞闘士ダンサーの夜の舞を見てみたいのぉー」

「駄エロフ、専属メロンの前」


「あら、ノゾミと一緒なら……私は大歓迎よ」

「嗚呼レミリア……メロンのように大きな心なの」


 (駄目だ、こいつら早くなんとかしないと……)


 このままだと弄られ続けて一日が終わってしまいそうな勢いだったため、本題へと移るユズキ。


「あの……本題に入っていいですか?」


「あ、ごめんごめん、そうだったわね」

「いよいよ三日後に迫って来ましたね」

「……決戦」


 ユズキが肉テロパーティメンバーとレミリアへ、ようやく当日の作戦を伝える。


 既にブライティ王とエルフの貴族達一行がライトレシアを数日前から出発しているらしく、少人数の護衛のみで移動しているらしい。暗殺が出来そうなタイミングは来訪中に夢の都ドリームタウンを観光しているタイミングではないかと。


夢の都ドリームタウン内は夢見部隊ドリーマーパーティの妖狐達が当日警備を行うそうです」

夢妖精ドリームフェアリーや妖狐なら、妖気力フェアリーエナジーがある限り、夢渡の力ドリームポーターで移動し放題ですものね」


 町の住民達も注目しており、TV中継も入る予定の来訪のため、混乱を招かないようにしなければならない。ユズキやレミリア、肉テロパーティは、各拠点にて怪しい者が居ないかを監視する役目となる。


「特にユズキさんは死んだ事になっているから隠れておけるわよね」

「男の娘……可愛いのぉーー」

「びしょうじょ」


 肉テロパーティは特に顔がバレているため、騎士の格好をしたレミリアとユズキの行動が鍵となる。当日女の子・・・の格好は決定らしい。 


「どうしてこうなったかなぁ……」

「ユズ君ならきっと、〝夢国民的美少女コンテスト〟も優勝出来るわよ」


「いや応募しないので大丈夫です」


 即答で拒否するユズキに残念そうな顔のレミリア。後はくの一姉妹が暗殺者の裏をかき、足止めをする予定だ。ゴルゴン経由で冒険者協会の手練れにも連絡がいっているらしく、準備は万端のようだった。


「それにしてもゴルゴンさんって本当色んなところに顔が効くわね」


 ゴルゴンの事情を知らないマリンが疑問を口にする。


「マリンさん、ゴルゴンさんとあの料理長のガストさんは、当時勇者と冒険した事もある、Aランクの冒険者だったらしいですよ。ギルドマスターや夢見の巫女とも繋がっているらしいですし」


 夢の国ドリームプレミア出身のレミリアがマリンへ補足する。


「のほぉーー人は見かけに寄らないのぉーー」

「最強のおっさん」


 ノゾミとツカサが驚いたように頷く。


「それ……僕らが別に出しゃばらなくてもいい話なんじゃ……」


 思わずユズキが思っていた事を口にする。


「まぁ、ゴルゴンさんや夢見の巫女さんにも、恐らく何か考えがあるのでしょうね」

「報酬のために頑張るのぉーー」

「問題ない」


 ユズキもそれ以上考えないようにした。

 今は与えられた任務を遂行するのみだ。

 そして、いよいよ彼等は運命の日を迎える事となる……。

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