第19愛 RE:男の娘から始まる妖精界生活
「ふむふむ、じゃあ貴女達姉妹はその雇い主に実質母親を人質に取られているようなもの……という事ね」
くの一姉妹からの報告を受け、猫妖精マリンが腕組みしつつ、状況を整理する。
「はい、私達の雇い主はとある貴族と繋がっておりまして、権力で田舎に置いて来た母を罪に落とすなんて容易いと……」
「ママんにはあたしらが暗殺稼業をやっているって内緒にして仕送りだけ送っているのねん。私達は仕方なく雇い主の元で暗殺稼業をやっているのねん」
桜色のツインテールの妹さくらと鶯色のポニーテールの姉うぐいすからの報告により、ある程度の状況が見えて来た。
その雇い主と繋がる貴族とやらが、恐らく国王の命を狙っている者だろう。何名かの暗殺者を雇い、今回ブライティ王の来訪に併せて仕掛けて来る予定らしい。さくらとうぐいすは当日の任務遂行のため、ひと足早く
「じゃあ暗殺者を退けて、その雇い主をなんとかすればいいって訳ですね」
話を聞いていたノゾミが自慢のメロンをゆさゆさしつつウインクする。
「なっ、そんな簡単に……!? 無理ですのん!」
「お姉様……この方の果実……破壊力抜群ですっ!?」
簡単になんとかする発言をする銀髪エルフに驚くくの一姉妹。さくらは驚いている方向が違う気もするが……。
「大丈夫ですよ。僕達はもうご存知でしょうが、暗殺を止める追加
「でも裏で糸を引いている貴族がいるのん……」
ユズキの提案も、苦悶の表情をするうぐいす。
「それもきっと大丈夫だわ。こちらの依頼主は夢見の巫女だもの。夢見の巫女へお願いして、貴女方の母親を匿って貰えたなら問題ありません」
「お姉様……レミリアさんもユズキお兄様もこうおっしゃってます。信じてもいいのでは……」
ポニーテールを揺らし、歩きつつ考え込むうぐいす。
「ユズキ様! わかっているのん? 国王の命を狙う暗殺者は、相当の手練れなのん。ユズキ様の……その
(いや……
ユズキが心の中でそう思っていると、今まで発言をしていなかったツカサが手をあげていた。
「はい、ツカサ!」
「裏をかけばいい」
マリンが手をあげたツカサの名を呼ぶ。
「え? ツカサ先輩?」
「貴女達くの一はユズキ君暗殺に成功した。雇い主の下へ戻り、裏をかけばいい」
ツカサは普段あまり発言しないが、時々頭の回転が早い事がある。
「二重スパイって訳ですね! さすがツカサ」
「それ、いい考えね! 国王暗殺も食い止めやすくなるかも?」
マリンとノゾミがその案に乗っかる。
「あの……僕……勝手に死んだ事にされてるんですけど……」
「大丈夫だ、問題ない」
ツカサがさらっと大丈夫発言をする。そして、皆へ自身の作戦を述べるのである。
「ツカサさん、それっ! いいですねっ! それならユズ君が死んだと言っても問題なさそうね!」
「待って……まさか……また
ここに居る女性陣全員が不敵な笑みを浮かべ、ユズキへとゆっくり迫るのであった。
★★★
「本当にこれで街歩くの?」
「
花柄のデザインをあしらったサロペット風のスカート。町娘のような可愛らしい格好。マリンブルーの髪は三つ編みにされている。顔を紅くして恥じらう姿はどこをどう見ても完全に女の子だ。
「なんか周囲の視線が凄いんですけど……バレてないこれ?」
「だめですご主人。小声でもちゃんと女の子の口調で話して下さい」
可愛さ抜群のユズキは周囲の視線を釘付けにした。本人の心配とは裏腹に、男の娘だとバレてしまう心配はなさそうだ。そして、手を繋いで歩く
「お、そこの可愛い
「あ、はい……ぼ……じゃなくて私ですか?」
「おう、嬢ちゃん! 隣の騎士さんはお兄さんかい? 手を繋いで兄妹仲がいいねぇ!」
「うむ、
そう、レミリアは全身銀色の鎧に身を包み、男装用のかつらを被っていたのである。破壊力抜群の果実を隠すため、布を巻いていたのだが、それでも膨らみを隠せないため、鎧で全身を覆う事にしたのだ。どこに敵が潜伏しているか分からない以上、しばらくは仲のいい兄妹に扮する事となったのだ。当然マリン達とも外では別行動だ。
「兄妹仲がいいのはいいこった。どうだい、これ人間界の食べ物で鯛焼きって言うんだ! 食べていくかい? 一匹、銅貨二枚だぜ!」
「あ、じゃあいただきます」
(魚……じゃないよね……? 熱々だ……)
店主より、お魚の形をした茶色い食べ物を薦められ、銅貨二枚で購入するユズキ。未知の食べ物に戸惑いつつもゆっくり口へと頬張る。
「は、はっ、あふっ(熱っ)! え? 甘っ!? これ……あんこ!? あ……でも外皮とあんこの甘さがちょうどいい……おいひいれす、おじさん!」
「ぐはっ!? お嬢ちゃん! 俺の負けだ! もう一匹、兄さん分も持っていきな!」
ユズキのとびきりスマイルにノックアウトした店主が鯛焼きをもう一匹サービスするのである。騎士の格好をしたレミリアがもう一匹の鯛焼きを受け取る。
「うむ、感謝する。ユリア行こうか」
「え、あ、うん。
(あぁん!? ……ユズ君!? お兄ちゃんって呼ばれるのも新鮮でいいわーー)
(ちょ……このタイミングで意思伝達しないでっ! って、夜の妖精モードにならないでっ!?)
銀色の鎧に隠された内部で、下半身に汗をかき、身悶える夢妖精なのであった――――
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