第15愛 水戟のツカサ
水妖精、ツカサ・アクアリウムは
冒険者協会へ登録する際、本人が持つ属性と適性、
剣や斧で戦う
「ツカサさん、行きますよ!」
「……ええ」
ユズキが龍の紋様が刻まれた扇を取り出し、自身の持つ水属性の魔力を纏わせていく。そのままツカサとの間合いを詰め、回転しつつ扇より水撃を放つ。
「戦舞――
「甘い」
ユズキの扇は空を切り、水流は渦を巻いたまま壁へと向かっていく。既にしゃがんでいたツカサがそのまま彼の腕に向かって上段蹴りを繰り出す。慌てて上体そらしで避けたユズキへ続け様に放たれる
「今のが……水刃?」
「そう、
原理は扇に水属性の魔力を纏わせた、ユズキの
「凄い切れ味ですね」
「……これ位序の口」
扇への水属性の魔力を強め、ユズキが仕掛ける! 回転しつつ加える彼の水撃を水刃で払いのけるツカサ。両者の水撃がぶつかり合う度に飛沫が舞い、水が弾けるような音が木霊する。
「……君の攻撃は直線的すぎる。それではうちに勝てない」
ツカサの強力な蹴りを扇で受け止めた瞬間、湖面に何かが激突したかのような水の弾ける音と共に、ユズキの身体が吹き飛ばされた。
(今の実力差じゃあ、接近戦で勝てないか……ならば……)
「清き水よ、閃光となり、悪しき壁を突き破れ!
親指を立て、人差し指と中指を真っすぐ標的へ向けた状態で、魔法を詠唱するユズキ。中級攻撃魔法――水流閃光だった。高速で放たれる水の閃光がツカサへ向かって一直線に放たれる!
「
並の魔物であれば、肉体を貫通する程度の威力を持った水流閃光であったが、ツカサの肉体へと届く寸前、彼女の両手から創られた水の壁により阻まれてしまう。やがて、水の壁が消え、次なる攻撃を仕掛けようとツカサが動き出したその時……。
「戦舞――
「……消えた!?」
ツカサの周囲に霧が立ち込め、視界が遮られる。そのまま目を閉じるツカサ。
「清き水よ、閃光となり、悪しき壁を突き破れ!
突如、背後から放たれる水の閃光に防御が間に合わずツカサの肩口を掠める。斬れた箇所から赤い血が流れる。
「……うん。筋はいい。でももう一歩」
「戦舞――
ツカサの立つ地面より水流が巻き起こり、彼女の身体を上空へ吹き飛ばした! ……のだが、水流に巻き込まれる瞬間、腕を交差させ、そのまま上空より回転しつつ地面へと着地する。蒸気により遮られた視界の中、一直線に走り出したツカサは、標的に向かって強力な一撃を放った!
「
「ゴブァッ!?」
お腹に当てられた掌より放たれた水撃により吹き飛ばされたユズキはそのまま壁へと激突する。やがて、周囲を包んでいた霧が晴れていく。ゆっくりと倒れた青年の元へと歩み寄るツカサ。
「特殊技によって視界を遮るやり方は正解。だが、魔法や技を放つ時に気配を消す必要がある。熟練の者が相手ならば居場所が分かってしまう」
「さすがです……ツカサ先輩。僕の魔力も尽きてしまっている……いずれにせよ僕に勝ち目はなかったですね」
お腹を押さえたまま苦笑いするユズキ。魔力も戦闘技術もまだまだツカサに劣る中、善戦したと言えよう。
「……いや、センスはある。接近戦も変則的な動きを磨けば強くなる」
「ありがとうございます。ツカサ先輩、これからもよろしくお願いします」
ゆっくりと立ち上がるユズキ。ツカサの口元が一瞬緩んだように見えた。
「別に……私はどちらでもいい」
★★★
「ふぅ……困ったわ……全く隙がありませんね」
訓練という名の模擬戦闘開始直後、ノゾミの持つ弓より高速で放たれる闇属性の矢。こちらが攻撃する隙を与えてはくれない。彼女が高速移動する度に、二つの果実がぷるるんっ! ぶるるんっ! と、左右に高速移動していた。
「逃げているばかりでは私に傷ひとつつける事は出来ませんよ?」
「え!? 消え……」
先ほどまで正面へ居た筈のエルフがいつの間にかレミリアの背後に廻り、漆黒の
「くっ……!」
思わず膝をつくレミリア。獲物を狙う細く鋭い視線に、いつもの発情したメロンの面影はなかった。
「大丈夫、訓練だから殺しはしません。ちょっと眠っていてもらいますよ? ――
レミリアを狙った漆黒の矢が一直線に向かって来る! 腰に携えていた大きな杖を両手で前に出し、彼女は叫んだ!
「そう簡単には負けません! 夢に還れ! ――
レミリアの前に渦のようなゲートが出現する。あの
「のほーー。そう来なくっちゃ! じゃあ……少し本気出しちゃいましょうか?」
ノゾミが戦闘を楽しむかのように笑みを浮かべた。
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