第13愛 ゆうべはお楽しみでし……(以下略)

 ゴルの宿屋の朝食会場は、VIP客も一般客も同じ食事会場となる。料理長ガストがボンテージファッションで厨房を仕切るあの食事会場だ。


 ユズキの腕にしっかり自身の両腕を絡ませたレミリアがVIP宿泊棟に続く螺旋階段を降りて来ると、階段を降りる度に豊満なメロンがたぷんと揺れ、食事会場に居たお客さんが釘付けとなった。


 可愛らしく幼い顔のユズキとレミリアの様子は仲の良い百合っプル姉妹にも見える。階段を降りると、先に会場へ着いていたにくテロパーティが二名ふたりに気づき、ニヤニヤした笑顔で出迎えた。ユズキは頬を赤らめたまま視線をそらす。


「ゆうべはお楽しみでしたね」

「のほぉおーー幸せそうなのぉおお」

「……初夜」


「あ……あの……皆さん何か勘違いしてません?」


 おそるおそるユズキがマリン達へ尋ねる。


「あらー、昨日酔っていてご主人様は覚えてないのかしら?」

「でも二名の幸せそうな様子でわかるのー」

「……初夜」


「マリンさん、ノゾミさん、ツカサ先輩……僕達……たぶん想像しているような事はやってませんよ?」


 頬を赤らめたままのユズキがそう答えると、飯テロパーティは鈍器で頭を思い切り殴られたかの衝撃と共に驚愕の表情となったのである。


「なっ、馬鹿な!? レミリアたん!?」

「ふふふ……マリンさん……いいんです……ご主人様マスターとのはちゃんと深まりましたから」


 驚くマリンに向かってそう言うと、レミリアは他の客に聞こえない程度の声で昨晩の出来事を語り始めるのである。



★メ★★ロ★★ン★


「嗚呼! ユズ君! 私……もう……!」


 レミリアの顔とユズキの顔との距離がだんだんと近づいていく。淫媚な香りと空気が周囲に充満し、彼女の呼吸が早くなっていった。


 やがて、彼女の柔らかいピンク色の唇とユズキの唇があと数センチでひとつとなろうとした……その時、彼女の瞳が空色の瞳に溜まった雫を捉えた。


「え……ユズ君!?」


 (え? ユズ君? ……どうして泣いているの?) 

 

 ユズキの瞳に溜まった雫はやがて一筋の涙となりミルク色の頬を伝っていく……。


「……お姉ちゃん……怖いよぅ……」


 (――!?)


 そして、レミリアは思い出す。ユズキが幼い頃から辛い思いをして来たという過去の話を……。


 彼の特殊技オリジナルスキル〝寵愛〟は、今でさえ抑え込む事も少しは出来るようになっているものの、元来本人が予期せぬ時に発動する技だった。よって、産まれながらの恩恵ギフトにより〝寵愛〟を授かっていた彼は、幼い頃から年上の女性に異常な・・・までに可愛がられ、辛い体験をして来たという。


 大人の女妖精に浚われ、身体を縛られたまま襲われかけたり、彼を溺愛してしまった女性に殺されかけた事もあるという……。恐らくレミリアとひとつになる場面に直面した事で、過去の実体験を記憶投影フラッシュバックしてしまったのだろう……。


「お姉ちゃん……誰なの!? ……もう縛らないで……いじめないで……」


 (――ユズ君!?)


 ユズキを愛おしく思うあまり、レミリアは彼の気持ちも考えずに暴走してしまっていた事に気づく。


 (これじゃあ過去ユズ君を襲っていた下衆ゲス女達と同じじゃない……!?)


 彼を思い、彼女のブロンドの瞳から雫が零れおちる。そして、そのまま彼をそっと抱き寄せる。


「ユズ君……大丈夫……私よ、レミリアよ。私は貴方を縛ったりしないわ。だからもう、泣かないで……」

「……レミ……リア?」


 レミリアの甘い香りがユズキへとゆっくり伝わり、ユズキがそっと目を閉じる。


「ユズ君……貴方の気持ちを考えず……ごめんね……もう大丈夫よ」

「……レミリア……お姉ちゃん……いい香りがする……」


 いつもと違う呼び方に胸の奥が締めつけられたかのようにキュンとなる夢妖精ドリームフェアリー。抱き寄せた身体をそっと離し、彼をじっと見つめる。不安そうに瞳をパチパチさせるユズキ。


「ユズ君……お姉ちゃんが、これからはずっとずっと守ってあげるからね」

「……僕……縛ったり、虐めたりしない?」


「大丈夫。だって私……貴方を愛おしく思っているから」

「お姉ちゃん」


 そう言うとレミリアは赤いレースの入った上の布地をそっと外し、ユズキの服を脱がせていく。そして、添い寝する形で、隠していた物がない状態のメロンで彼の顔を包み込んでいく。彼の温かい吐息が極上の果実へとかかり、下半身にも愛おしさが溢れて来る。


「ユズ君……大好きよ……」

「お姉ちゃん……僕もしゅき……」


 ユズキがようやく安心した表情となり、目を閉じる。


 (ご主人様マスター……私、一生かけて貴方をお守りするわ。これからゆっくり時間をかけてご主人様の不安を取り除いてあげますね)


 レミリアは心の中でそう誓う。産まれたままの姿となり、彼を包み込んだ状態で、シーツに包まる二名。優しく抱き合ったまま、使役主マスター契約者パートナーはそのまま眠りについたのであった。


★メ★★ロ★★ン★


「そう、そうやって愛を誓いあったのね」

「しゅ……しゅごいのぉおーー私も下半身が疼い……」

「駄エロフ、今はまだ朝」


 さすがに包み隠さず話してしまうには性癖がバレてしまう部分はあったため、少しオブラートに包みつつ、昨晩の出来事を話し終えるレミリア。彼女が話していく内、あまりの羞恥にユズキは下を向き、顔は真っ赤になっていた。


「ま、ま、ま、待って! そんな口調に僕なってたって聞いてない!」

「え? だってユズ君。なんとなく覚えてるって言ってたじゃない?」


 お酒に酔っていた事もあり、昨晩の記憶が曖昧だったユズキは、まさか自身がまるで幼児退行・・・・したかのような口調になっていたとは知らなかったのである。ただ、昨晩レミリアの温もりに包まれ、気持ちよく眠りについた事だけは覚えていた。


「今度お姉さんも混ぜて欲しいわねぇ。経験豊富なお姉さんが、ユズキ君の不安を取り除いてあげるわよ?」

「ちょっとマリンさん! ユズ君を誘惑するのやめて下さい」

「す、す、すいません、マリンさん間に合ってます!」

 

 明らかに動揺した様子で小さくなるユズキ。 


「だめよノゾミ。わ、わたしにはご主人様マスターという存在が居るのぉーー」

「貴女はご主人が居るからだめ。どちらかと言えば……なんでもない」


 隷属関係にあるご主人様を想い、一名ひとり悶える銀髪エルフノゾミと、最後は言葉を濁してそっぽを向く水妖精ツカサ


「駄目ですーー! ユズ君は私専用・・・なのーー」

「レ、レミリアーー」


 契約者パートナーの私専用宣言に、益々その場に居た堪れなくなるユズキなのであった。 

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