第11愛 ミノホースからはじまる《本当の》特別依頼
特A高級肉――
「じゃあこの皇帝牛馬は、
「まぁ、そういう事だ。今度、現光の国の国王、ブライティ王と、現夢見の巫女――弥生との会談が予定されていてな。その際に光の国のVIPへ提供する新鮮な高級肉が欲しかった……という訳さ」
(どうりであんなに大量の高級肉を求めた訳だ)
ユズキがゴルゴンの説明を聞き、納得する。
「でも、ゴルゴンさん、夢見御殿の
彼女達なら
「そういえばそうね、わざわざ危険を冒して皇帝牛馬を取りに行く依頼なんかしないわよね」
「私はこのお肉を食べる事が出来て満足なのぉ」
「……不毛な依頼」
「なぁ、お前達……
核心を突いたゴルゴンの質問に、皆の表情が変わった。
「――え!?」
「あ!? そういえば……」
皇帝牛馬を手に入れたあの瞬間、漆黒の球を放った相手の存在を思い出す。ユズキはゴルゴンに目深に漆黒のフードを被った男が攻撃を仕掛けて来た事を伝える。
「やはりか……。わざわざ人目につくよう分かりやすく掲示板へ特別依頼を掲示した理由は二つある」
「それって……」
ゴルゴンは小声になって皆へその目的を伝えた。
「一つはお前達が夢見の巫女からの依頼に足る力を備えているか試す目的、そしてもう一つは、光の国の国王暗殺を目論む連中を炙り出す目的だ」
「あ、暗殺!?」
思わずユズキが声に出してしまう。
「なんだか物騒な話になって来たわねぇ」
「お肉どころじゃない話なのぉ」
「……危機的状況」
飯テロパーティも神妙な面持ちとなる。
「あの……ゴルゴンさん、じゃあ私達を襲った相手って……暗殺者の仲間なんですか?」
「レミリアちゃん。実際どうかは分からんが、もしかしたらそうかもしれん。少なくとも国王の来訪に今回の依頼が関係していると知っている者……という事になるな」
ゴルゴンが光の国の情勢について説明してくれた。光の国は大小の大きな国が集まった連合王国で、中心となる聖都――ブライティエルフ国はエルフの王族が統治しているらしい。
「ブライティ王の来訪は少人数での移動になる。よって暗殺には絶好の機会という訳だ。という訳で、今回夢見の巫女からの本当の特別依頼はな、国王の暗殺を食い止め、暗殺者を捕まえるという依頼なんだよ」
「まま待って下さい! そんな話聞いてないですよ?」
とんでもない国家規模の依頼に驚くユズキ。
「ははは、そりゃそうさユズキ。言ってないからな」
ゴルゴンが自慢の髭を弄りつつ笑い始める。
「そんな大きな話でしたら、夢見部隊や光の国の軍隊が動けばいいじゃないですか?」
レミリアも流石に疑問を口にする。
「それがだめなんだよ。光の国の軍隊はそもそも貴族が絡んでいるからな。敵がどこと繋がっているか分からない以上、ごく少数の信頼出来る者しか光の国も動かせないという訳だ。それに……」
「それに?」
聞き返したのはマリンだ。
「今回は敵を
「そう……この皇帝牛馬は餌付けだったという訳なのね……」
エルフのノゾミが観念したかのような表情となる。
(敵に顔を知られた以上、既に僕達も
「その代わり……この特別依頼の報酬は一名金貨十枚は下らないぜ?」
「のほぉおおーー皇帝牛馬のステーキ十枚分なのぉおーー」
「……豪華報酬」
エルフがいち早く報酬に飛びついた。既に肉を食べる様を想像し始めている。
通常一般的な
「……分かりました。ゴルゴンさん、その依頼、僕達にやらせて下さい!」
「ユズ君と一緒なら、絶対大丈夫よ」
「私達もその依頼受けるわ!」
「今から楽しみなのぉーー」
「敵は殲滅」
皆、覚悟を決めたようだ。
「よし、国王来訪は一ヶ月後だ。それまでは『ゴルの宿屋』の特別室に無料で泊ってもらっていいぜ! 弥生から宿代は貰ってるからな!」
ゴルゴンがニヤリと笑う。この特別依頼を受けた事により、国を揺るがす大きな事件へ巻き込まれる事になるとは……この時のユズキ達は知る由もないのである――――
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