第10愛 君の皇帝牛馬を食べたい
「じゃあ、持ち帰った
モフモフした尻尾をフリフリしつつ妖狐のショコラが取得物の提示を促す。
無事に
「では行きますよ、
様々な色へ床が明滅したかと思うと、空間が歪み、そこに見上げる程の巨大な高級肉の塊が出現する。
「わぁーー! す、凄いですね! 本当に皇帝牛馬のお肉を五頭分もゲットしちゃったんですねぇー」
霜降りがかった高級肉の塊に思わず瞳を輝かせるショコラ。他メンバーも思わず喉を鳴らし、涎を垂らしている。
「さぁ、新鮮なうちにいただきましょう! ……って、報酬としてこのお肉、少しは貰えるのよね!」
「早くぅ、早く欲しいのぉーー」
「ノゾミ……もう少し我慢……」
どうやら
「えっと、飯テロパーティの皆様、すぐに依頼主を呼んで参りますので少々お待ち下さいませ!」
ショコラがペコリとお辞儀をし、部屋の奥へ待機しているらしい依頼主を呼びに行った。
「こんな肉を大量に取り寄せる依頼主って、さぞかしお金持ちなんだろうね」
「報酬は何なのかしら……」
ユズキとレミリアも浮足立った様子で依頼主の登場を待つ。
「――おぅ、お前等待たせたな! 皇帝牛馬を新鮮なまま運ぶその力、流石だな
「え? まさか……!?」
「ゴルゴンさん!?」
部屋へ入って来た男は、お金持ちの様相とは比べ物にならない格好をした、背が低い髭面のドワーフだった。
★お★★に★★く★
「ゴルゴンさんって……あのムキムキコックが居る『ゴルの宿屋』のご主人よね?」
「そんなご主人がなぜこんな特別依頼を?」
「宿屋の主人が特別依頼を依頼……疑問」
部屋へ入室した特別依頼の依頼主は、ユズキとレミリアが
宿屋の主人突然の登場により、飯テロパーティも疑念を抱く。
「まぁ、いいじゃねーか。とあるVIP客用に皇帝牛馬が欲しかった……と言えば納得だろ?」
「幾ら人気の宿屋とは言え、ゴルゴンさん、あの大量の肉……しかも普通じゃ手に入らないお肉を依頼するなんて……何かあるとしか考えられないわ」
レミリアも疑念を抱いていたらしく、そのままゴルゴンへ質問を投げかける。腕組みをしていたゴルゴンがニヤリと笑みを浮かべた。
「ふっ、まぁそうなるわな。この特別依頼はな。条件を満たす冒険者を探すための試練みたいなもんさ。実はこの特別依頼、依頼主は俺じゃない。本当の依頼主は……夢見の巫女だよ!」
「夢見の巫女だって!?」
「え!?
ユズキとレミリアが同時に反応する。
ここに来て夢見の巫女の名前があがると思っていなかったからだ。
夢見の巫女とは、此処――
「まぁ、積もる話はそこにある肉を食べながらにしようか。皇帝牛馬……食べたいんだろ?」
高級肉をお預け状態にして話半分の飯テロパーティから歓声があがる!
「ヒャッハー! 特A肉の報酬キターー! 待ってたわよぉお」
「肉ぅううううーーのほぉおおおーー滾るのぉおおお!」
「ノゾミ……ようやく実食よ」
「え? でもゴルゴンさん、VIPなお客さんに提供する肉じゃないんですか?」
「確かになかなかこんな高級肉食べられるものじゃないけど」
「それだけ危険を冒して依頼をこなしてくれたんだ。それくらいの礼はするさ。それに
ゴルゴンが受付嬢のショコラを呼ぶと、ショコラが皆を別室へと案内する。大きな台車に乗せた皇帝牛馬と共に、床に魔法陣が描かれた部屋へ移動する一同。
「特定の地点と地点を結ぶ転送装置、夢渡りの力を応用した
「おう、ありがとなショコラちゃん! さぁ、うちの料理長が直々に、皇帝牛馬のステーキを調理して提供するぜ!」
「ありがとうございます、ゴルゴンさん」
「こんな高級なお肉いただけるなんて一生に一度あるかないかねぇ」
こうして一同は、高級肉実食という豪華報酬をいただくのである。
★お★★に★★く★
鉄板の上で肉が踊る。
ひと口サイズへと斬り揃えられるお肉が目の前の皿へと並べられていく。向かい合わせで用意されたカウンター式の席に並んだメンバーはさながらお預け状態の犬だ。
「へい、お待ち! 皇帝牛馬のステーキ。ミディアムレアでお届けだ。付属の塩で食べるといいぜ!」
「ヒャッハーーいただきますーー」
「お肉なのぉーーおつゆが溢れてるのぉおおーー!」
「……いただきます」
「僕らも食べようか、いただきます」
「ええ、ユズ君。いただきます」
飯テロパーティが横で騒ぐ中、上品にお肉をフォークでひと口取り、口へ含むユズキ。肉厚たっぷりのお肉を噛んだ瞬間、溢れる肉汁と共に旨味が口の中へ広がり、脳内へと旨味成分が駆け巡る。しっかりとした皇帝の肉厚は、肉としての存在感を残しつつ、高級肉はユズキの口の中で溶けていったのである。
「こ、こんなに美味しいお肉……初めて食べました!」
「凄いわ……ユズ君、私いま……すっごく幸せよぉー」
「ヒャッハーー、イクーー天国へいっちゃうぅううう!」
「らめぇーーおつゆがぁああああ、私の中でぇええーー溢れちゃうのぉおおおーー」
「……ハァアア」
(注:皆さんお肉を食べているだけです)
恍惚そうな表情の
「ガストさん、その格好、なんとかならないんですか?」
「まぁそう言うなユズキ。これは俺様のポリシーだ。美味しく食べて貰えるのは料理長にとって至福の瞬間だからな。あ、勘違いしてそうだが、お嬢ちゃん達がどれだけ美しくても俺様は
親指を立てるガストがユズキへウインクする。どうやらこの筋肉隆々な料理長、女の子には興味ないらしい。ユズキが一瞬にして青褪める。気を取り直して目の前のお肉へ集中する事にした。
「どうだい? 特A高級肉の味は?」
そこにゴルゴンが入って来る。先ほどの話の続きをしにやって来たのだろう。皆の様子を見て満足そうな表情となる宿屋の主人。
「ゴルゴンさん、こんな美味しいお肉、初めて食べました! ありがとうございます!」
「ゴルゴンさん、このお肉凄いわ……口の中で溶けていくの。ありがとうございます」
ユズキとレミリアが改めてお礼を言う。
「だろ! こんな高級肉、早々食べられるモンじゃねぇぜ! さっきの話の続きをしようかとやって来たんだが……しばらくは無理そうだな……」
「何度も幸せの波がぁーー来ちゃうわぁん」
「私の中でぇええーー皇帝がぁあああーー暴れてるのぉおおーー」
「……はぁはぁ……至福」
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