第7愛 肉テロパーティの実力!
翌朝一行は、ネム宿場町を出発し、一路北へ向かう。しばらく進むと、ネイト湿地手前の平原にて、魔物の群れがユズキ達を出迎える。
「グギャアアアアアアアア」
魔物の叫声が平原に響き渡る! 人間の子供位の身長をした褐色肌の魔物――ゴブリンが裸同然で棍棒を手に襲いかかって来たのだ。
「ヒャッハー! ゴブリンなんか、私
「ああなるとマリンは誰も止められないの」
「ゴブリン、ご愁傷様」
エルフの
「僕なんか目で追うので精一杯。戦闘慣れしている動きだ」
「私じゃああの妖精さんには勝てそうもないわ……」
「ラスト一体ーー行っくよぉおおーー! ――
〝進撃のマリン〟の
「あれが光属性の攻撃。マリンさんは接近戦タイプなんですね」
「あの強さなら、ある程度強い敵も圧倒出来そうね」
最初の目的地、ネイト湿地へと到着する。紫色の沼からは鼻がひん曲がりそうな程の異臭が立ち込め、泡が沸騰しているかのようにボコボコと発生している。明らかにこの先を進む者を阻むかのように立ち塞がる湿地。
「……これ……どうやって渡るの?」
「確か、触れると服も皮膚も溶けてしまう猛毒だったはずよ」
正直ユズキとレミリアだけだったらここで諦めていたかもしれない。渡る手段がないのだ。しかし、歴戦のAランクパーティは違った。
「さてと……うちの出番」
「ヒャッハー! 私も加勢するわよ」
「え? ツカサさん、マリンさん、何をする気なんですか?」
「まぁまぁ、
ツカサが独特の構えからゆっくりと息を吐き、弧を描くように掌を回転させ、そこから両手を前に突き出す。マリンも同時に地面へ両手をついた!
「
「光魔法!
ツカサの両手から放たれた大量の水が湿地の対岸へと伸びていき、地面に両手をついたマリンが創り出した光の絨毯が水上に敷かれていく。清き水と光の絨毯による一本の長い橋が湿地に架かった。
「す、すごい!」
「技と魔法の規模が違うわ」
光の橋を渡りつつ、エルフのノゾミがツカサの
「ツカサは
「……このくらいなら余裕」
どうやらツカサもユズキと同じ、特殊技の持ち主らしい。
「僕も水を扱う攻撃をしますが、毒の沼地を覆うなんて使い方、した事がなかったので驚きです! 凄いです、ツカサ
「せ、せんぱい?」
「同じ水の使い手で冒険者としても先輩ですから! ツカサ先輩と呼ばせて下さい」
「べ……べつに私はどちらでもいい」
そっぽを向く彼女が一瞬満更でもない表情をしたのだが、ユズキに見えたかどうかは定かではなかった。
「きゃっ、レミリアたん危なーい!」
突然レミリアに寄り掛かったマリン、そのままの勢いでレミリアがユズキへ凭れかかる形となる。ユズキの腕にレミリアの果実がむにゅんと当たる。
「ちょっ、レミリア! あた……あたってる!」
「ごめんユズ君! 今のは、マリンさんが……あ!」
見るとマリンの胸の真ん中に沼地からの飛沫がかかったらしく、ハート型の穴が出来ていた。マリンはどうやらレミリアを飛沫から守ろうとしていたらしい。
「ユズキさーん、見て見て! 胸の穴がハート型になってるわよぉー」
「わっ、あわわ……ちょ、ちょっとマリンさん近づかないで下さーい」
「待って! マリンさん、ユズ君にそんな刺激の強いもの見せちゃだめですーー」
光の橋を走って猫妖精の誘惑から顔を真っ赤にして逃げて行くユズキ、そんなユズキの後を追うマリン、そこに続くレミリアなのであった。
「のほぉーーマリンの果実も美しいのぉーー」
「こら貴女が興奮しない!」
ノゾミに冷静なツッコミを入れるツカサなのである。
★★★
ネイト湿地を抜けると、ゴツゴツした岩場が点在する小高い丘――イカロスの丘に到着する。
EランクのゴブリンにDランクのヘルハウンド、
「ぎしゃあああああ――
「甘いよ、――
レッドゴブリンが放つ火属性の初級魔法、
「戦舞――
「グギャアアアアアアアア!」
圧縮された水により、吹き飛ばされ岩へ激突するレッドゴブリン。そのままレッドゴブリンは息絶える。
「はーい、わんちゃん達ーー。ちょっと眠ってて下さいねぇー。
続いて夢妖精のレミリア。対象を眠らせる魔法――
「ヒャッハー! 君達、なかなかやるわね!」
「ふふふ……彼のあの動き、そそられるの」
「眠りの魔法の彼女も有能」
弱い魔物達を一掃し、このまま順調に行くかと思われたその時、丘の上にて咆哮する魔獣が出現する。
「……そう簡単にはいかないみたいだね」
「ユズ君、ここからが本番よ」
冒険者の行く手を阻むかのように、そこにはCランク魔獣ミノタウロスとキマイラが闊歩していたのであった――――
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