第5愛 肉テロが得意なフレンズ《パーティ》なんだね!

「この魔獣キングリザード肉の野生ワイルドステーキ、締まった筋繊維が織り成すミディアムレア肉の断面! これこそが〝萌え断〟の真骨頂なのよー、分かる?」

「〝萌え断〟……ですか?」


 夢端末ドリームアンドロイド夢仮想空間ドリームネットへアクセスし、画像を見せつけて解説している猫妖精。黄色いサラサラした髪が美しく、肉球はぷにぷに、身体はモフモフして気持ち良さそうだ。


「ヒャッハー! 〝萌え断〟を知らないなんて時代遅れね!」

「いや……夢端末自体、僕持ってないですし……」


「なっ、それじゃあ、にくテロが出来ないじゃないですか!?」


 ユズキの発言が予期せぬ返答だったのか、今度は銀髪の女エルフが驚嘆の声をあげる。


「ユズ君と私は意志伝達があるから、離れていても会話出来るしね。私のような夢妖精ドリームフェアリー夢渡の力ドリームポーターで色んな場所へ移動も出来るから、ユズ君と私には夢端末は必要ないわ」


 ユズキの横に座った契約者パートナー、夢妖精レミリアが補足する。


「そんなぁ!? 人生と妖精生フェアリーライフの半分損してるわよー?」

「のほぉーーすっごくおおきいのぉーー堪らないのぉーー」

「こら、駄エルフ、肉に発情しない」


 銀髪エルフが肉画像に涎を垂らしたところで、蒼い人間界のチャイナ服風の格好を身につけた女妖精が冷静に突っ込みを入れていた。





 夢都ドリームタウン冒険者協会にて、特別依頼エキストラクエストへ参加表明をしたメンバーは五名だった。


 ユズキ・ルーシア 種族:人間 主属性:水 冒険者ランク:D 職業ジョブ舞踊士ダンサー

 レミリア・ミネルバ 種族:妖精人ピクサノイド 主属性:夢 冒険者ランク:C 職業:夢魔導士

 マリン・ノヴァ 種族:獣妖精(猫) 主属性:光(聖) 冒険者ランク:A 職業:狩人ハンター

 ノゾミ・ルイーネ 種族:エルフ 主属性:闇 冒険者ランク:A 職業:弓使いアーチャー

 ツカサ・アクアリウム 種族:妖精人 主属性:水 冒険者ランク:A 職業:魔導拳士マジカルバトラー


 ギルドにてお互い自己紹介をした二つのパーティメンバーは、一路馬車にて、特別依頼攻略へ向け、ネム宿場町へと移動していたのである。


「それにしても皆さんAランクって……凄いんですね。今までどんな冒険をして来られたんですか?」


 興味本位で質問したこのユズキの発言をきっかけに、馬車内にて、先ほどのにくテロ談義が始まったのである。牛馬ミノホース、コロコロ豚、モフモフラム大翼竜ウイングドラゴンから魔獣キングリザードに至るまで、過去彼女達が狩って・・・来た肉の解説をひと通り受けたところで、リーダーらしき猫妖精が締め括る。


「……という訳で、肉と共に歩き、肉と共に生きる。肉あるところに私達、飯テロパーティは存在するのよ、分かる?」

「あ……はい……」


 マリンが大きな肉球をユズキの顔に押しつけ、ぷにぷにした感触を味あわせる。


「ユズキさんは、まだまだおこちゃまなんですね。いずれ分かる時が来ますよ、お・と・な・の・あ・じ・が」


 続いて巨大な二つのメロンを顔へ近づけるノゾミ。堪らず動いたのはレミリアだ。


「ちょ、ちょっと! ユズ君にメロンの果実は間に合ってますから!」

「ノゾミ、その子には専属メロン・・・・・がついてるよう。その位にしてあげるといい」


 顔を赤くしたレミリアの様子にノゾミの横に座っていたツカサが声をかける。


「あ、貴女達はそういう・・・・関係なんですね。ごめんなさい」

「いやいや、そういう関係って何ですか……僕とレミリアは使役主マスター契約者パートナーなだけですから……」


 その言葉に驚く飯テロパーティ。


「え!? 使役主ですって!? この妖精界フェアリーアースに人間が存在する事すら貴重だと言うのに、妖精と契約する人間なんて滅多にお目にかかれないわよ?」


 猫妖精のマリンが不思議そうにユズキを見つめる。


「ええ、私もご主人様マスターは存在しますが、隷属関係にあります故、根本が違います」


 ノゾミの首には隷属の首輪らしきものがついていた。ピンク色の首輪は一見ペットにつける首輪のように可愛らしいデザインだ。どうやらノゾミにもご主人様マスターと呼べる者が存在するらしい。


「いや……かつて水の国アクアディーネに現れた救世主メシアも人間だと聞いている。こうして存在するなら事実なのであろう」


 ツカサは腕組みをしつつ、自身の中で自己解決をしているようだった。


「僕の場合はとある目的を果たすために旅をしていたのですが、たまたまとあるダンジョンでレミリアと出会い、こうして契約するに至ったんです」

「あれは運命的な出会いだったわ」


 うっとりした表情でユズキを見つめるレミリア。彼と彼女の間には契約に至る過去があったようだ。


「へぇー、君達も色々あってここに居るって訳ね。ヒャッハー! 面白くなって来たわね! 特Aランクの高級肉、皇帝牛馬ジェネラルミノホース……嗚呼、想像しただけで滾って来るわ!」

「のほぉーー溢れる肉汁ーー堪らないのぉーー」

「こら、駄エルフ、想像でイカない」


 (本当にこのパーティと一緒で……大丈夫なんだろうか……)

 (ユズ君……特にあのメロン・・・には気をつけてよ。油断したら襲われるわよ!)


 心の中で会話する、ユズキとレミリア。

 ちなみに特Aランクはお肉のランクであって、皇帝牛馬は魔物ではないため、魔物ランクの位置づけはない。ややこしくなりそうだったため補足しておこう。


 こうして馬車は、中継地点であるネム宿場町へと到着するのであった。 

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