第3愛【悲報】寵愛スキル、ムキムキにより相殺される
「ひゃぅうう……何これぇ……熱い……」
「こんなの初めてぇええ」
「らめぇええ! その目で見つめないでぇえ」
瞳をハートにしてユズキを見つめる女妖精達。宿屋中の女性が注目している……という訳ではなさそうだ。それでも幼そうな外見から想像出来ない鋭い視線と魔法でオークを圧倒したユズキの姿にうっとりし、熱い視線を送る者。全身の疼きを抑えられずに身悶える者。中にはビクンビクンと下半身を痙攣させている者まで居る。
(嗚呼……やってしまった……周りをちら見するだけでこれだ……早くここから離れないと……)
特に周囲のテーブルに座っていた女性達の様子がおかしい。ユズキが寵愛スキルを発動した瞬間に彼を〝視て〟しまったからだろう。同時に彼女達は、魔法を発動した際の
「レミリア……部屋に戻るよ!」
「はぅう……
(レミリアよ、お前もか)
普段は頼りになるお姉さんタイプの
「あの……すいません……あれ? 何、突然話しかけてるんだろ私?」
その時、比較的まだ正常そうな桜色の髪をした妖精がユズキの前に立った。
「あ、はい……何でしょう?」
「わわ、わたしを抱いて下さい!」
(だめだこの子、早くなんとかしないと!)
※注意――全ては彼の寵愛スキルが原因です。
「抜け駆けはだめよーー」
「私も私もーー」
「嗚呼……膝がガクンガクンって……」
「だーめ、
女性陣に取り囲まれ、揉みくちゃにされそうになる直前。レミリアのある意味
「――何だ何だ!? オークの客が騒いでいたと思ったら、
すると、厨房から騒ぎを聞きつけたのか、料理長らしき
「きゃあああああああ」
「嫌ぁあああああああ」
「へ、ヘンタイよーー」
女妖精から一斉にあがった悲鳴は明らかに先程までの黄色い悲鳴とは別物であった。悲鳴の理由は彼の格好にあった。全身の布地を極限まで抑えた黒い艶やかなボンデージファッション。大胸筋や上腕二頭筋。ありとあらゆる箇所より、褐色肌の筋肉が剥き出しとなっている。
突如出現した公開セクハラさながらな大男に、女性陣が逃げるようにしてその場を離れる。コック帽を被っているが、知らない者にとっては、彼がこの宿屋の料理長であり、かつてAランク冒険者として名を馳せた
「ガストさん、助かりました。ありがとうございます」
「またお前〝
自慢の筋肉をピクピクさせたコック帽を被ったムキムキの男。名をガスト・ウェルダムと言う。普段は厨房に隠れて出て来る事はないが、食堂で騒ぎが起きた際に登場するこの宿屋の隠し球だ。ただし、隠し切れていない球の部分がボンテージファッションの下半身箇所から盛り上がって見える。料理長は、ユズキが
「それにしてもガストさんの
苦笑いをするユズキに大胸筋を動かし応えるガスト。
「お前ももっと
(いや、ガストさんに寵愛を使う事はないと思うんで大丈夫です)
心の中で否定するユズキ。
「あ……あれ? ガストさん、どうしたんですかぁ……?」
ようやく〝夜の妖精〟から通常仕様に戻った夢妖精レミリア。どうやらこちらも寵愛状態から解放されたらしい。寝起きのようなトロんとした表情で目を擦っている。
「おぅ、レミリアちゃん。結構飲んでたみたいだな? 今日はそのまま休んだらどうだ?」
「うぅ……そう言われると、少し頭痛いかも……」
今になってアルコールが効いて来たようだ。心配してユズキが水を渡すと、レミリアがグラスを受け取る。
「ありがとうユズ君……そのまま部屋に連れてって貰える?」
「もう……飲みすぎですよーレミリア」
肩から担ぐようにしてレミリアを抱えるユズキ。彼女のメロン級の果実がたぷんと揺れる。
「後はこっちで処理しとくから、ゆっくり休みな」
「ガストさん、ありがとうございます」
「ふふふ……あの子達、面白そうね!」
「あの子、私のご主人様と同じ香りがするの」
「ふん……別にうちは興味ないわよ」
黒いラバースーツのような衣装を着た猫耳と黄色い髪の女妖精。
レミリアと負けない果実を携えた長い耳と美しい銀髪の女エルフ。
ユズキと同じ蒼い髪を靡かせ興味なさそうにそっぽを向く格闘家風の女妖精。
食堂の端より受ける視線に、この時まだユズキは気づいていないのであった――――
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