学園都市祭開催・4日目(前)オークション開催

学園都市祭の4日目。

とうとう今日は待ちに待ったオークションの当日である。

屋台の方は説明用の職人以外は全部宰相家、ロッソ商会、ギルドの人員が受け持ってくれて宰相夫人の指揮のもと頑張ってくれている。

気にはなるが今日は屋台の方を見る余裕がなく朝から魔法学院にある大講堂みたいな場所でオークションの準備に追われていた。

こちらの人員に関してはオオイリ商店のメンバーや荒地の面々もいるのだがいかんせん人手が足りないし接客の経験なんて荒地組は全然ないのでバイトとしてゴーレム騒動の後でやったパーティーの時の様にいろいろな貴族から使用人を借りることにした。

前回はストンズ子爵とカービン子爵の伝手を頼って集めたが今回は王家のお墨付きで大々的に人手を集めた。

そうすることで財力やその他もろもろの要因で本来はオークションに参加出来ない家も人手を貸してくれたお礼として参加できるようにしたのである。

今回のオークションは品を売るというよりも荒地の面々と公国が仲良くなっていこうね、って感じの顔合わせ的な所も多いのでこうした事になった。

選考に関してはレディアや宰相達が秘密裏にしてたので俺はノータッチ。

政治的なパワーバランスとか評判の悪い貴族とかよくわからないしね。


そして顔合わせに関しては今の所問題なさそうである。

バイトに来た使用人たちは当たり前だが働くために来たのだし最初から多種族がいると伝えてあったので会場に来たに多種族の人の多さに驚きはするものの仕事の命令が来たらすぐにテキパキと働いてくれるのは流石だと思う。

貴族の方も驚きはするものの宰相やグランヒルズ侯爵家宰相家麾下きかにいる高位の貴族が下位の貴族に声をかけてくれているので問題も起こっていない。

…権力ってすごいな。


とはいえそれに甘えるばかりでは申し訳ないので俺も動く。

仲良くなりましょうねっと口で言うのは簡単だが現実はそうもいかない。

何かしらの旨み、利益が無いと仲良くなれないのは俺も知っている。

というわけで商人らしく旨みを教えてあげよう。


「皆様、本日はお忙しい中わざわざ使用人を貸してくださりありがとうございます。夜になりましたらオークションの参加者が訪れますので皆様もよりお忙しくなると存じます。ですので夜にだす軽食と同じものを僅かばかりではご用意いたしました。公国では珍しき荒れ地の美味もございますので是非ご賞味ください。」


お昼になったので貴族たちに美味しい荒地料理を振る舞う。

世界が変わってもやはり美味いのは正義なのだ。

匂いにつられてかフラフラとテーブルに集まって来る貴族たちに使用人たちがテキパキと料理を配る。

料理を食べた人たちからは「美味い」、「辛い」、「刺激的」などの感想が飛び交っている。


「相変わらず抜け目のない男だ。ただでさえ、使用人を借りるからと金を払っているのにわざわざこのような馳走を用意するとは。」


「そんな悪だくみをしているようなこと言わないで下さいよ。貴族の方々がなんの旨みも無いのに仲良くなってくれるわけないのを教えてくださったのは宰相閣下ですよ。なので商人として美味いご馳走を振る舞っているだけです。」


「よくもまぁそこまで言えたものだ。今回の使用人の選考基準はいろいろあるがその一部が今敷設中の街道沿いであったり北部に近い家の者達だ。簡単に言うと将来的に荒地同盟の面々とかかわりが近くなりそうな者達だな。そうした者達の中にはもちろんだが多種族と関わりを持つのに反対している者達もいる。だからこのオークションに参加させてその考えを変えさせようとしたのだが貴様の用意したこの料理が決めてになったであろうな。あちらの机で美味そうに食べているのがその反対派の貴族だ。」


宰相が指示する方を見てみるとニッコニコでひたすら食べている貴族たちがいた。

中には近くを通りかかったリザード達と話している人もいる。

言われなければ反対派とは思えないほど友好的なんだけど!?


「知らぬ贅沢を知らぬまま反対するのは簡単だ。だが知ってしまった贅沢を反対するのは非常に難しい。本当に見事な手腕だな。」


宰相はそれだけ言うとランチを食べている貴族たちの方に行ってしまった。

とりあえず俺もお礼をするためにちょっと挨拶していくかな。

本当はあんまり貴族と関わる気はなかったんだけどなぁ…

どうしてこうなった。


・・・

・・


美味しいランチタイムから始めた貴族へのお礼参りだが終わる頃には夕方になっていた。

最初の頃は普通にお礼を言って回るだけだったのだが北部がどんな所かを知らない人もいて教えて欲しいってなったので荒地に行った時の事を話していたらいつのまにか人が増えてきて近くにきたリザードやラミア、ドワーフ達も巻き込んで向こうの生活を話すことになって何故か知らんが壇上でリザードたちの演武が始まったりしてドンチャン騒ぎになっていたのである。

どうしてこうなった?


まぁ、俺が貴族たちの目を引き付けていたおかげで会場の準備はつつがなく終わって今はオークションの客の出迎え様に貴族たちがおめかしをしている。

オークションに来るのは豪商と呼ばれる人たちもいるが大体は高位の貴族達だ。

対して今ここにいるのは大体が下位の貴族。

貴族には貴族のしきたりがあって会場を盛り上げるのも下位の貴族の大事なお仕事らしい。

今回は他種族が多くいる異例の会場らしいがランチやさっきまでのお話でいろいろ勉強できたので任せろと力強く答えてくれたので心強い。

てか、前から思ってたけどこの国の下位の貴族たちは結構脳筋思考というか体育会系というかノリと勢いで生きてる感じはある。

領地も狭く領地を守ることが仕事となると自然とそうなるのだろうか?


「準備は終わって後は客が来るのを待つばかりか。貴族たちの驚く顔が目に浮かぶな。」


会場の裏でゆっくりしていた時にレディアが声をかけてきたので振りむくとチャイ、じゃなかったドラゴンドレスに身を包んだレディアが立っていた。

レザー製のドラゴンドレスは体に張り付くようにピッタリとしておりレディアの様な凹凸のが良く分かる体型だとそれはもういろいろとスゴイ。

この国はボディラインが分かりにくいフワッとしたドレスが主流の中にこのドレスは劇物過ぎる気がする。


「まさかここでそのドレスを持ってくるとは…その、いろいろと大丈夫なのか?」


「何を気にしている余は女王だぞ。女王がこの世で一点の物を持っていてもおかしくはあるまい。ほ~れほ~れ。」


そういってスリットの部分をヒラヒラさせるレディア。

生足が見えないように裏側に布を一枚当ててるとはいえそんなところをヒラヒラされたら見てしまうのが牛と男の本能なんだぞ。


「失礼いたします。イサナ店長はこちらにいらっしゃいますでしょうか。」


「ああ、ここにおるぞ。入るがよい。」


俺への質問になぜかレディアが答えたがまぁいいか。


「イサナ店長。お店の方は無事に終わりましたわ…っな、陛下!な、なんて格好をしていらっしゃいますの!?」


宰相夫人がわざわざ屋台が終わったことを知らせに来てくれたのだがレディアの格好に声を上げる。

まぁ、そうなるわな…


「へ、陛下!その、あの、ハレンチですわよ!?」


「宰相夫人よ何を言っておるのだ。余のこの格好のどこがハレンチだというのだ。」


「いえ、その御胸とかその、腰つきとか、その足の隙間とかあの…その…」


「何を言っている。別に胸も腰も足も露出はしておらんぞ。一体、どこが、どうハレンチだというのだ。」


そう言って堂々と胸を張るレディア。

宰相夫人の言いたいことは凄く分かる。

なんせピチピチピッタリ、ボンキュッボンでヒラヒラだし。

でも、レディアのいう通り全く肌色を見せていない。

腕も腰もスリットのある足も見せないのは当たり前だが腕もドラゴンドレスその物は五分袖ぐらいの長さで長手袋をつけてもらってエレガントな雰囲気とゴージャス感をプラスしている。

我ながら良い物を作ったとは思う…ただ、まぁ、ハレンチな雰囲気は払しょくできなかったがな。


「いや、でも、しかし、実際…どういたしましょう。」


宰相夫人はレディアの言葉とハレンチな雰囲気に完全に混乱してしまったようだ。

気持ちは分かる。

俺もいまだにこいつに着せてよかったのか悩んでるし。

そんな状況の中で宰相夫人が先ほど出した大声を聞いて宰相がやって来てさらに混乱する状況になってしまうのだが…本当にオークションは大丈夫だろうか。

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