学園都市祭開催・2日目

露店開始2日目。

今日は昨日の事を鑑みて最初からロッソ商会と宰相家、さらにはギルドから手を借りている。

さらに今日は素晴らしい助っ人がいる。


「今日は頼むぞダンテス。ドワーフの作った物をバンバン紹介してくれ。」


「まかせな、義兄弟!アニキたちと一緒にドワーフの技術は世界一だと知らしめてやるぜ。」


「リーサとネフェルも頼んだぞ。リザードとラミアの品が優秀だってここの連中に見せつけてやれ。」


「任さレタ。ドラゴンの眷属ここにありって教えてヤルゾ。」

「お任せください。この辺りでラミアよりも魔法が得意な種族はいませんので格の違いを教えてあげますわ。」


ホテル・マキアスの建築の際にストンズ子爵とともに荒れ地に帰ったリーサだったが宰相やロダンさんが荒れ地産の商品に飛びついたのを見て(※この場でする様な話じゃない参照)学園都市祭に間に合わせるべく馬車に詰めるだけ荷物を積んでこっちに帰ってきてくれたのだ。

その際に護衛も兼ねた希望者が多く付いてきてくれたので荒れ地連合総出で来てくれた。

サイクロプスたちがここにはいないのは途中で石畳の建設現場を見た際にサイクロプスの兄妹が仕事をしてたのを見て手伝うことを決めたかららしい。

…あとで、ロッソ商会経由で差し入れを届けてもらおう。


応援に来てくれた皆に声をかけているとゴーン、ゴーンと2日目の開始を告げる鐘が鳴る。

しばらくすると雑談の声と多くの足音が聞こえる。

こっち方面には俺の露店と騎士学校と魔法学院ぐらいしか無い。

とはいえ両学園は祭りが開催期間中は授業が無いらしいのであの人の群れはうちの露店に用事があるのだろう。

どうやら今日も修羅場の様だ…


・・・

・・


朝のラッシュも一通り落ち着き今はある程度人の群れをコントロールできている。

とはいえ非常に多くの人がいるなか問題が起きていないのは理由がある。

それは宰相夫人がたい焼きの列に並んでいるからだ。

普通に関係者として渡そうとしたのだが宰相夫人がそれを拒否。

自ら進んで長い行列にお友達と並んでいった。

夫人曰く「たまには学生気分に戻りたい」との事だったのだがそれだけではないだろう。

恐らく今日も行列になると見込んで自ら並ぶことで高位の貴族が並んでるのに横入り出来ると思うなよって威圧しているのだろう。

貴族って怖い…


「イサナ店長。今日も盛況なようで何よりですな。」


「ロダンさん。おはようございます。ロッソ商会の人たちが頑張ってくれているおかげでもあります。我々だけではどうしようもなかったですね。」


ロダンさんは俺に声をかけたアンコ物を売ってる露店と荒れ地の品を売ってる露店を見た後しみじみと言葉を出した。


「ワシが若いころに神武皇国との貿易が始まり多くの商人が神武皇国の商人に品を求めました。神武皇国の商人は多くの物を持ち込んでくれましたが我が国の商人はそのなかの砂糖と香辛料にしか食いつきませんでした。何故だが分かりますかな?」


「…食べ物系は分かりやすいからじゃないですかね。美味しい物が正義なのは種族関係ないでしょう。」


「それも間違いない正解でしょう。でもより大きな事が原因です。それは我が国の商人が相手の文化を知ろうとしなかったからです。公国の商人は神武皇国の持ってきたと思い込んでしまいました。たとえば反物がいい例かもしれません。神武皇国の商人は反物が服になると説明をしてくれましたが公国の商人はそれが理解できませんでした、何故あのような軽く薄い生地が服になるのかと。公国の服の生地は重く厚い物が多いのです。その服の違いの一番の理由は着方の違いがあったからです。公国は寒い冬でもなければ大体1枚ですが神武皇国は数枚重ねるのが基本だと知ったのは年を取ってから。実際に来ている姿を見たのはメイちゃんを見てからです。神武皇国の商人はスムーズに商売を続けるためかこちらの服装を着ることが多いですからね。」


「それは神武皇国の商人も説明不足というか説明下手と言うかそういうのではないですかね。」


「ハハハ、まぁ両方でしょうな。もしも神武皇国に詳しい商人が多くいればその辺の説明もしてくれたかもしれませんし、我々ロッソ商会が黒砂糖で悩まなかったかもしれないしこのように学園都市祭に神武皇国の商人を大々的に招いていたかもしれません。ですがそうなることはありませんでした。ロッソ商会が国内の品をメインに扱っているという事も理由かもしれませんが他の商会の様に他種族の文化を積極的に学ぼうとは考えもしなかった。ですがイサナ店長は他種族と交流をし、このベストの様に相手の技術と素材を活かしたこの国向けの商品を開発までしてしまいました。あのガラス杯はあらゆる立場の人が驚きを見せるでしょうが、このベストは気づいた人の価値観を大きく変える逸品ですよ。」


「そこまで大それたことを考えていたわけではないのでそんなに褒められると恥ずかしいですね。こちらとしては売れる品を考えただけですから。」


「売れる品を考えただけですかそれが出来る商人なんて数える程度しかいないですよ。」


そんな褒め殺しされると恥ずかしくて顔から火が出そうなんだけど…

ちょっと誰か助けてくれないかな。


「イサナ店長大変です!ドワーフの親方と客が騒動をおこしてます。」


…そういう助け方は嫌だったなぁ


急いでガンテツがいる露店に行くと怒っている客とは別にガンテツは不思議な顔をしていたどういう事?


「おお、義兄弟来てくれたか。ワシがこやつに武器は売れぬ言うと怒りだしたんじゃ。」


「貴殿が噂の店長か。金もきっちり用意したのに売れぬとこのドワーフが言うのだ。説明してもらおう。」


「お客様、少し確認いたしますのでお待ちいただけますでしょうか。」


俺はガンテツを少し遠ざけると小声で聞いてみた。


「…あのお客の金が少なかったとか?」


「…いや、金は問題無い。試しに武器を振ってもらって体も触って確認した。剣筋もいいし筋肉も魔力も申し分無い。」


金も問題無くて技術的にも肉体的にも問題無いのに売れない…?

ああ、もしかしてそういう事かな。

俺は一つの確信をもって揉めてた客の所に戻った。


「お客様。申し訳ございませんが一度試し切りを見せていただいてもよろしいでしょうか。」


「それで剣を売ってくれるのならいいだろう。」


試し切り用の巻き藁を設置して男に切ってもらう。

男は剣を手に取ると袈裟斬りを行った後、返す刀でそのまま横に一閃した。

その流れるような動作に思わず感嘆の声を上げる共に拍手を行うと周りからも拍手が巻き起こった。

先ほどまで怒気をはらんでいた男も周りから賞賛の拍手を受けると少し落ち着いたのか照れくさそうに拍手を受け取っていた。


「さて、お客様。改めてお聞きいたしますがこちらの剣が欲しいという事でよろしいでしょうか。」


「そうだ。重さはあるが丈夫で切れ味の良い剣を求めるのは当然の事だと思うが?」


「なるほど、なるほど。でしたらなおさらここにあります剣をお売りすることは出来ません。なのでこちらをどうぞ。」


意味が分からないといった表情を浮かべる男に俺はあるものを手渡す。


「そちらは学園都市祭の最後に行われるオークションの招待券でございます。メインはオークションですが一部の品は一般販売を行います。そしてそこで販売する品ですがここに置いてあります様なの作った品ではなく一人前。もしくはそれ以上の腕前を持ったドワーフの名匠が作り上げた物が並びます。お値段も吊り上がりますが是非そちらを見てからどの武具をご購入するか検討してくださいませ。」


最初はポカーンとしていた男であったが理解したのか食い入るように招待状を見た後、招待状を天に掲げるように持って大きなことを上げた。


「すまない、店長。少し興奮しすぎた。ただ、そういった理由なら初めから言ってくれれば良かったものを。勘違いして怒ってしまったなんて恥ずかしいではないか。」


「?ワシは最初からここにあるのは売れぬって言っていたぞ。」


「あ~、お客様。ドワーフと言うのは頑固者のイメージがあると思いますがそれ以上に素直な性格の者が非常に多いです。ガンテツが売れないといったのは意地悪ではなく腕と吊り合ってないから売れないと言いたかったのです。ただ、ドワーフは職人気質なのか一言足りなかったりするので今後ドワーフと関わる事があったら時は何故なのか聞いてみるといいですよ。」


「なるほど。そうだったのか。」


「下手な腕前の者が名剣を手にしたら無駄にケガを増やすだけじゃし腕の良い者がを手にしたら逆に腕が錆びつくからな。武器も防具も己の腕に合うものをつけるのが一番じゃ。」


そう言ったガンテツが試し切りのコーナーを指さすと学園の生徒が多くいたが巻き藁を斬れなかった者や無理やり斬ったせいかささくれの様なものが残っていたり、斬った勢いを殺しきれずそのまま転倒するものまでいる。

確かにあんな子たちに名剣は危なっかしくて渡せないわな。


「何はともあれお客様はドワーフの首長であるガンテツに腕を見込まれたほどですので良い剣に巡り合えると思いますよ。」


「うむ。良さそうなのを見繕っておいてやろう。」


「それはありがたい全財産を持ってうかがわせてもらう。」


そういって男は笑顔で帰っていった。

この後は特に問題無く時間になったので終わった。

今日は実に平和だったな。

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