学園都市祭開催・1日目
今日から学園都市祭がとうとう始まる。
祭りの期間は5日間でそのうち4日間は大市と呼ばれていてこの国のいろいろな品物が集まり至る所で店が広げられている。
ただ、4日目はオークションが開催されるので俺たちは3日間だけ露店を出す予定だ。
5日目はフィナーレと言う事でパレードとかあるらしい。
この祭りが終わればこの国は本格的に冬支度に入るらしいので冬の間の楽しみとかをここで買っていくとの事だ。
ということはつまり皆の財布のひもが緩いという事。
さぁ、バンバン売るぞ!!
「これは、これは旦那。儲かりまっか?」
いつもの露店とは別に善哉とたい焼きを販売する様の露店を準備しているところに小豆を仕入れてくれた胡散臭い雰囲気を持っているキツネ目の露店の主人があいさつに来た。
「ぼちぼちでんな。ってかまだ始まってもないよ。」
「まったくもって完璧な返しですわ。黒髪ですし旦那は神武出身なのでは?」
「いや、俺はもっと遠い所から来たよ。ただ文化圏がそっちに似てるんだよ。」
「さいですか…ところで小豆を販売すると言っとりましたがホンマに売っとるんで?」
「もちろん。メイちゃん!善哉とたい焼き一個ずつ持ってきて。」
かしこまりました!と返事をしたメイちゃんがお盆の上に善哉とたい焼きを置いてもってきてくれた。
ほんとは塩昆布とかあれば良かったんだけどなぁ…
「おお、これはおおき…に…」
お盆を受け取った露店の主人はメイちゃんを見て固まってしまった。
「メイちゃんがどうかしたか?」
「いえ、見事な着物でしたんで気になったんですわ。あのおひい様とはどこで知り合ったんで?」
「ああ、元の主人が賊に襲われてるところに出くわしてな。その主人はもう手遅れだったがメイちゃんは無事だったから保護してそのまま一緒にって感じだな。一度親元に連れて行ってやりたいとは思ってはいるんだがおそらく
「いや、あのお方は間違いなく神武の者ですな。黒髪紅目は神武の者以外あらしません。」
「やっぱりそうか。ニンゲンでも黒髪紅目は神武の証なのか?」
「え、ええまぁ…そうやと思いますよ。」
今のメイちゃんはヴィオラの魔法で見た目は鬼ではなくニンゲンになっている。
だから今の姿は黒髪紅目の少女だ。
その姿を見て神武出身って言ってるのだから確定でいいだろう。
しかし、鬼が治める
「ごちそうさまでした。いやぁ、こんな美味い善哉は初めて食べましたわ。こっちのたい焼き言いましたか、これもえろぅ美味くて感動しましたわ。それに何より見た目が良い!めで鯛ですからなぁ!!」
こっちの世界でもその言い回しがあるのか…
露店の主人が帰ってしばらくすると学園都市祭の開催を告げる鐘がなる。
とはいっても俺の場所はあまり人気の無い北側だ。
基本的にゆっくり行けるだろう。
「やっほーイサナ店長。遊びに来たよ。」
やって来たのは騎士学校に所属してるアーウィンだ。
今日は以前に当てた騎士装備を来ているのでいつも以上に凛々しく見える。
「いらっしゃい。今日も荒れ地の商品を置いてるが学園祭仕様として特別ゲストにドワーフの職人たちを束ねる首長のガンテツがいるからドワーフ製品の解説とかしてくれるぞ。それと
アーウィンを含め周りの学生たちに聞こえるように大声で宣伝する。
男女問わず騎士学校はガンテツの所に行って魔法学院の子たちはお菓子を買いに行くのが多いかな。
なんて観察してたらすぐ後にアンコの屋台の方から学生たちの歓声が聞こえてきた。
どうやら貴族のご子息たちもお気に召したらしい。
まぁ、この国の貴族のトップである宰相夫人が喜ぶぐらいだから当たり前だよな!
「あ、主!こっちを手伝ってくれないか!流石のボクもさばき切れないよ。」
「主様こちらにも援軍を!手が足りません!」
我がオオイリ商店の歴戦の店員(3人中2名)から悲鳴が上がる。
ガンテツと一緒にいつもの露店を見ていたのだが気づけば隣の露店には大行列が生まれていた。
ヒエ…これはもう俺が入ったからってどうすることも出来ないのでは…
「おはようございます、イサナ店長。大盛況ですね。」
俺に声をかけてきてくれたのは黒いロングヘアーに眼鏡が似合う魔法学院の生徒セイミ・グランヒルズだった。
過去にビンゴ大会でクリスタルゴーレムの躰を当てた(戦勝パーティー(貴族と言えど子供は子供)参照)ラッキーガールでありグランヒルズ宰相の長女になる。
「セイミ様本日もわざわざお越しくださりありがとうございます。挨拶も早々で不躾で誠に申し訳ございませんがグランヒルズ家からの救援をお願いいただけますでしょうか。オオイリ商店はもう限界でございます。」
もともと宰相家から人手を借りる話はしていたので使用人を借りるのは問題無いのだが想定よりも人が集まるのが早すぎた。
早くても初日のお昼ごろから込み合うのではないかというのが俺と宰相家の読みだったのだがまさ朝一からここまで来るとはこのイサナの目を持ってしても読めなかった。
「使用人を大至急走らせましたのですぐに来るとは思いますがこれはいささか多すぎますね…」
クールな美少女が引きつるような笑顔を見せながら隣の露店の行列を見る。
いや、ほんと、凄いよねヴィオラが自分に魔法をかけて凄い速さで対応しているのに人が減るどころか増え続けているもんね。
「セイミ様。本当ならばここでご対応をさせていただくのが正しいのでしょうが店の主として部下だけに任せるわけには参りませんのでこちらで失礼させていただきます。」
「いくのか義兄弟。」
「ああ、ガンテツ。こっちは任せたぜ…」
それだけ言うと俺は隣の
その後、宰相家の使用人と交代した時俺たちは完全に燃え尽きていたのだった。
◆◆◆
【アンコ】
・アンコそのものは
・経緯としては交友関係にあったロッソ商会が詐欺まがいで大量の黒砂糖を仕入れてしまいそれの処理に困った際にイサナに相談した。
その後、イサナが学園都市を歩いていた際にたまたま小豆を発見しアンコに加工した。
・当時の公国の貴族向けの甘味と言えば色鮮やかで限度を超えた甘さの物が台頭しており真逆ともいえるアンコの見た目に当時の女王と宰相夫人は驚きを隠せなかったが一口食べた時その優しい甘さにたちまち魅了されてしまったと宰相夫人の日記に記載されている。
・宰相夫人はこの時にオオイリ商店のパトロンとなり直近に迫っていた学園都市祭にアンコを使った露店を出すように進言。
イサナもその進言を受けて善哉とたい焼きを出す露店を出店するとイサナと宰相家両方の思惑を超えるほどの大盛況となった。
・その後、宰相夫人は自らの主催するお茶会には必ず和菓子を出すようになったどころか自らの家の料理人を
・これが現在の老舗和菓子店の大丘屋であり
『公国と和菓子』より抜粋
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます