霊具・収穫者の鎌
グランフィリア様の関係者っぽい魔族のお嬢さんの為に何か無いか見繕う為にバックヤードにやって来た。
すると、腕輪が青く光り俺に話しかけてくる。
≪フフフ、見ていたぞ。あの者は我が主に相応しい。≫
宝物庫の何かが反応したようだ。
俺は悠々とカバンに手を突っ込むと柄の様な何かが触れたので勢いよく引っこ抜く。
カバンから出てきたのは家庭菜園とかで使ってそうな手持ちサイズの鎌だった。
柄の所は木製っぽいが刃の部分が青白く光り常にピンボケしてるかのようにハッキリと見えない不思議な事になっている。
≪フフフ、お初にお目にかかる御使い殿。我は冥王に仕えし者が携えし鎌の原初の一振りなり。さぁ、我を新たな持ち主の下に案内してくれたまえ。≫
…この鎌、妙に偉そうだな。
とりあえず持ってく前に【目利き】を使って確認しとくか。
【霊具・収穫者の鎌】
・冥王に仕える収穫者達が持つ鎌の原型となった物
・今は手持ちサイズだが大きさを調整することが可能で両手で扱う大鎌にもなる
・収穫物以外は触れないように出来るのでどんな場所でも振る事が出来る
・そもそも冥界の物なので波長が合わない者は目視することすら不可能
・値付けは不可能
冥王に仕える収穫者達って何者だよとか、何を収穫してるんだよとか、はっきりと刃が見えないのは波長が合ってないからかとか、いろいろ思う事はあるが正直この鎌地味なんだよね…
刃が特殊な事以外特に装飾も無いし
さっきから早く合わせろって煩いから持っていくか…
「お待たせしましたお客様。是非ともお客様にお持ちしていただきたい逸品が御座いましたのでご用意いたしました。」
「お客様だなんてそんな堅苦しく呼ばないで名前で呼んでよってそういえば名乗ってなかったね。レーラって言うんだ。夜魔であるヴァンパイアのレーラだよ。気軽にレーラさんって呼んでね。」
「かしこまりました、レーラ様。ではこちらがレーラ様の逸品。収穫者の鎌でございます。」
そうして収穫者の鎌を置いた赤い
見る前は拍手で出迎えてくれたけどいざ目にするとだんだんと拍手の勢いが弱まって来る。
「…なんかショボくない?」
「こちらは収穫者の鎌と呼ばれる霊具でございます。かの冥王に仕えし収穫者が携えし鎌にございます。大きさはその場に応じて変える事が可能です。良ければ手に取ってください。」
うろんな目で収穫者の鎌を見ていたレーラさんは何度かちょんちょんと指でつついた後、鎌を手に取った。
すると、青白いもやが掛かった刃が輝きだした。
≪フハハハハハ、ようやく我を手に取ったな若きヴァンパイアよ。貴殿を主と認めるので我を使いこなしてみよ。≫
「わ、わ!何か喋ったよ!」
「霊具は主を認めると話し出すのですよ。つまりレーラ様は収穫者の鎌に選ばれたのですよ。」
「この霊具の所持者になったってこと…?」
「さようでございます。この霊具がレーラ様を主と認めたのです。」
「そっか…そっかぁぁ!霊具の持ち主、霊具の主。フフフフフ…」
フフ、チョロい。
さっきまで地味とか言ってたのにな。
まぁ、喜んでくれたなら問題ないけど。
「これってレーラさん好みにカスタマイズしていいのかな?」
「それは…どうでしょうか。何なら直接聞いてみればいかかですか?」
≪ククク、主の好みに合わせるのも出来る霊具の証。我が妙技とくと見よ。≫
収穫者の鎌がそう言うとレーラの手を離れ彼女の顔の目の前で止まった。
そして青白く輝くと今まで茶色く何の変哲もない木の柄が象牙の様に白く滑らかになり女神と月の様な彫刻が施された柄に変貌した。
「凄い、凄いよ収穫者の鎌。カッコよすぎるよ。」
≪ククク…そうであろう、そうであろう。我は実像なき幽体である。主の好みに合わせるなんて造作もない事よ。≫
冥王に仕えるって事はもともと持ってた人も幽霊になるし幽霊の持ち物ならそりゃ幽霊、幽体になるか。
それにしても、褒められていい気になってる収穫者の鎌をみて思ったがこの二人かなり似た者どうしなのではないだろうか。
「さすがは偉大なる母が選んだ商人だね。想像を軽く超える物を出されちゃったよ。」
「ありがとうございます。ちなみにお代に関して結構ですよ。逸品とそれを持つに相応しい相手を結ぶのがこちらの使命ですし、何より並みの品物と違ってそもそも値段をつけれるような物ですらないですからね。」
「お金がかからないのは良いけどとは言って何もしないのはなぁ…ああ、そうだ。じゃぁ耳寄りな情報をあげるね。春先にここから南の森でゴーレム騒動があったでしょ。あれの原因は聖国の神官だよ。どうやって持ってきたかは知らないけどゴーレムの素材を持ってきてそれを使ってひと騒動するつもりだったんだろうね。まぁ結局魔剣の持ち主にゴーレムがやられちゃったしその神官もレーラさんが始末したからこれ以上の騒動は起きないよ。あの辺りの警備隊は森の奥に行って森を刺激するのをためらってあまり調査しに来なかったけど今は大丈夫だから調査しに来るといいよ。もうだいぶたつからどれだけ証拠が残ってるか分からないけど多少はあるんじゃないかな。」
お、おう…いきなりとんでもない情報ぶち込まれて俺としては若干困惑気味なんだけど。
「魔族の仕事って人知れずに行うことが多くてさぁ。レーラさんの仕事は公国と王国の国境線の平和なんだよねぇ。あの森って規模の割に魔力が多くて動植物もよく育つからスタンピードも起きやすいし色んな人が両国を衝突させようと暗躍するんだよねぇ。レーラさんとしてはもっとのんびり生きたいんだけどこれがほんとに難しくてね。そりゃ公国の東部の森林地帯に比べたらちっちゃいけどレーラさんが一人で見るにしては広いから大変なんだよね。かといって普通のヒトが奥に入ったらエサになっちゃうから協力もお願いできないんだよねぇ。っと、気づいたらもう日暮れだよ。そろそろヒトは寝る時間だろうからレーラさんは帰るね。」
喋るだけ喋ってレーラは帰っていった。
なんというか台風みたいな人ってああいう人の事なのかなって疲れた頭でぼんやりと考えたのだった。
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