悪知恵は影で動く
懸念だったサービスエリアの説明会は宰相の協力もあって何とか終了した。
宿場町を再利用するという事が条件であることと売り上げが一定以下なら無税になるというところが納得材料になったようだ。
また、貸し馬屋に関しては小領のところに意外と人気だった。
造園費用を王家持ちというところもあるがどちらかという王家直轄の兵士が少数でも入ってくれる事がありがたいことらしい。
少数とはいえ直轄兵が入れ替わりで入る事で情報の伝達の速さや正確性が上がるかもしれないと期待しているとの事だった。
これに関しては俺も宰相も考えてはいなかったが、こういう意見が出た事で貸し馬屋の比重が大きく上がりそうだと宰相が零していた。
まぁ、そんなこんなでいろいろあった説明会も終わり俺はオークションの為に動き始めた。
最初は過去にオークションを開催したことがあるロッソ商会のロダンさんに話を聞きに行こうとアポを取ったらすぐに来てほしいとの返事が来たのでロダンさんの邸宅に来ていた。
執事の方に部屋に案内されると中ではロダンさんと現商会長で息子のアレクさんが神妙な顔持ちでテーブルに置かれた何かが入った袋越しに話し合っていた。
「返事を頂いたので参りましたが急用でしたら後日にしましょうか?」
「いやいや、気にしないでくれたまえ実をいうと我々もイサナ店長の意見を聞きたくて来たのだ。まずはオークションの事について話し合うとしようか。こちらの事は後からでも構わないのでな。」
「まぁ、そういうことでしたらお言葉に甘えますよ。」
オークションに関してはかなりスムーズに進んだ。
ここ数年、学園祭で行われるオークションをずっと主催していたらしく今年もある程度は準備していたらしい。
そこに俺が荒野連合の商品を持ち帰って来た事でロッソ商会からオークションに参加して欲しいと打診するつもりだったらしくある程度商業ギルドにも話を通していたらしい。
そこに俺が露店で売ろうとしたものだからオークションに出るように誘導された感じだな。
いやぁ…まんまとギルドマスターとロッソ商会の掌の上で転がされた感じだな。
流石は国一番の商会を作り上げた男。
駆け出し行商人の俺では太刀打ちできないわ。
そんなこんなで会場の手配やパーティーの準備、当日のスタッフの用意などは全部ロッソ商会にお任せする形になった。
おんぶにだっこ状態だがそもそも行商人である俺に会場の手配をする伝手やスタッフなどの人材がいないのだからお願いするしかない。
ちなみに何故かこんなに手伝ってもらってばっかりなのにオークションの主催が俺でロッソ商会は協賛という形になった、げせぬ…
「とりあえずオークションの枠組みに関してはこれであらかた決まりましたね。それでロダンさんたちの相談とはなんですか?」
「それに関してはまずはこれを見てほしい。」
そうしてテーブルに置かれていた袋を渡されたので中に入っていたものを取り出す。
中から出てきたのは若干黒光りする甘い香りを漂わせた塊だった。
【黒糖(上質)】
・鬼が主体の国である
・
・独特な苦みを持つのが黒糖の特徴であるが品質が良いため苦みもまろやかで非常に美味
「これはかなり質のいい黒糖のようですがこれに何が問題があるのですか?」
【目利き】の結果をもとにロダンさんとアレクさんに問いかけると非常に困った顔を浮かべた。
「実をいうと我々の落ち度といわれるとその通りなのだがこちらは貴族向けの砂糖の上品を海岸沿いの西部の商人に頼んだ。そして納品されたのがこちらの黒糖だったのだ。」
「?これほどの品質なら貴族に売っても問題無いのでは?」
「イサナ店長。残念ながら貴族というのは見栄を張らねばならぬのでな。品質は悪くとも少しでも手のかかる白砂糖を用意せねばならぬのだ…我々商人からすれば無駄にコストがかかるので愚かと思うかもしれないがそうした見栄がいろいろと流行を作るので商人も答えなければいかぬ。非常に面倒ではあるけれどな。」
め、めんどくさい…
だがそうした富裕層が流行を作り経済を回して発展していくのは元の世界でもあったことなので言いたいことややりたいことはよくわかる。
ただ、そうした事情なら返品できるんじゃないか?
「求めたことと納品物が違うので返品はされなかったのですか?」
「そこが我々の落ち度の部分なのだ。売買の時の契約書も交わしていたのだがそこには上品質の砂糖としか書いていなかった。本来ならこれで貴族向けとわかるのだが相手は白砂糖と明記していないのだから返品に応じないと言っているのだ。」
「ああ、そういうことですか…そんな阿漕な事をされたということは今までとは違う商人を使ったってことですね。」
「その通りだ。我々もいろいろと見積もりを取ったのだがそこで1段低く出してきたのがこの商人だったということだ。我が商会の新人が見つけたらしく上司を伴って契約を取ってきたのだが蓋を開ければこういう事だ。実際に上質なので契約書的には間違っていないのでこちらも強く出れ無いということだ。」
「なるほど…ちなみに貴族以外には売れないのですか?」
「売れなくはないが少し時間がかかるな。イサナ君も知っての通り砂糖はもともと高価な物だ。それが上質なものとなると仕入れの関係もありさらに高くなる。貴族相手なら高くとも売れるがこれは貴族が買わない物。そして貴族以外からすれば手を出すには躊躇する値段だからな。」
「これは完全にハメられましたね。なんでしたらすこし買わせて貰いますよ。うちのホテルで使えるか試してみます。それに相談事ってそういうことでしょう?」
「ハハハ、さすがにここまで言えばお見通しか。学園都市なら貴族が内部向けで使うかもと思って一部持ち込んでいるのですぐにお渡ししよう。」
アレクさんに値段を教えてもらうと確かに庶民が日常で使うには高かった。
帯に短したすきに長しとはこういう事を言うのだろうか。
さてと、どう扱おうかな。
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