第4章 白熱!学園都市祭

学園都市祭開催のお知らせ

レディアと宰相から押し付けられた計算の仕事も終わりまた学園都市でひっそりと露店を開いているといろいろないろいろなうわさ話が聞こえてくる。

やれ、あの先輩とこの先輩が付き合ってるだとか、どこそこのお店の店員が可愛いだとか、あの家のパーティーでコショウが出たとかなんとか。

俺の露店は店を出すには人気にんきの無い騎士学校と魔法学院の通学路沿いだからそんな話は貴族の子供達や彼らについてきた使用人達がこぼしていく。

俺の見た目が子供だからか、ヴィオラがイケメンだからか、メイちゃんが可愛いからかは知らんが彼ら彼女らはよく話してくれる。

中には商売につながる噂もあって、あちらで食事会がありそうと聞けば飲食物や食器その他諸々売り込みに行き、こちらで誕生日が近い子がいると聞けばアクセサリー系を売り込みに行く。


そんな事を続けていけばいろいろとお得意さんも増えてくる。

最近の上客はノエライト教の神官だ。

レディアにいろいろ聞かされていたから最初来たときはかなり警戒したがいざ話してみるとめちゃくちゃ普通、むしろ腰が低い方だった。

ちなみ購入目的は蜜蝋みつろうで出来たロウソクだった。

なんでも教会の神像の前には夜になると一晩中ロウソクを燃やすのだがこの都市にいた唯一の蜜蝋ロウソク職人が年の為に引退したらしくどこから調達したらいいか困っていた時にうちの噂を聞いてやって来たのだ。

正直ハチ関連商品はルージュ・ビーのおかげで無双状態だからすぐに納品したらすっごい喜ばれた。

定期購入してくれたら割引するといったら即決してくれたおかげでウハウハだ。

最近はたまにふらりと表れて雑談して帰ったりするのを見るとストレスとか溜まってるのかなと不安になる、今度何かサービスするか。

ちなみに、一般的なロウソクとして安価な獣脂で作られているのが使われているがこれは正直酷い。

火を付けたら煤も凄いし匂いも凄い、あれを一晩中燃やしてたら神像がギトギトになりそうだ。


「なぁなぁ店長。店長は都市祭で何か特別な店をださないのか?」


俺にそう言ってきたのは騎士学校に所属しているアーウィンだ。

金髪碧眼、黙ってれば正統派王子様系なのに話し始めたらチャラい感じがする少年だ。

ちなみに、ゴーレム騒動のあとのビンゴ大会で二等の騎士セットを当ててたりする。(※戦勝パーティー(貴族と言えど子供は子供)参照)


「最近至る所で告知しているヤツか。特別バージョンを出すつもりだけど多分高くて手が出せないんじゃないかな。」


「ああ、親向けの商品を出すつもりなのか。でも、店長の本気は気になるなぁ。ちょっとだけでいい良いから教えてよ。」


「まだダメ~。こういうのは発表するタイミングが大事だからな。」


「えぇー!!店長のケチ!教えてくれるぐらいいいじゃんよ。」


「そうか、そうか、俺がケチか。なら今度から武具の手入れ用品の割引なしでいいな。」


「あぁ、まってまって。俺が悪かったからそれだけはやめて。ホントにあの一式使いやすいから値上げされると泣いちゃう。」


アーウィンは基本的に武具の手入れ用品を買いに来る。

せっかく手に入れた装備に着られるだけは嫌なので必死に鍛錬をしていると他の生徒から聞いている。

見た目王子様とは裏腹に彼の手はゴツゴツしておりタコもできている。

だからこそ俺は応援の意味を兼ねて手入れ用品は割安にしている。

オオイリ商店は少年少女の為に影ながら協力しているのだ。

あと、これだけフランクに接しているのはアーウィンからのお願いだからだ。

『自分よりも賢い子供に丁寧に接されると背中がムズムズする』との事だ。


「まぁ、出せるかどうかはギルドの判断待ちだけどな。でも基本的にはじかれる事無いらしいし出せるだろ。当日は冷やかしに来てもいいぞ。一流品だから勉強にはなると思うしな。」


なんて、話してたのが今日の午前。

今、俺の目の前で申し訳なさそうな顔をしているのは学園都市の商業ギルドのギルドマスターだ。


「イサナさん、申し訳ございません。イサナさんの希望しています店の出店ですがギルドで話し合った結果。認可出来ないと判断致しました。」


「ギルドマスター。もし書類等に不備があれば直しますから理由をお聞かせてくれますか?」


「簡単に言いますとイサナさんの持ち込む物はあまりにも高価すぎて露店として扱うには警備を始め多数の問題があると判断致しました。」


あー、なるほど…

それは考えてなかったなぁ…


「ですが、場所と方法を変えてなら出す方法はございます。」


「場所と方法を変えてですか…?」


「ええ、学園都市祭の開催中はこの国から多くの貴族が集まります。そこでギルド主体でオークションが開かれます。そちらなら警備はもちろんその他の問題も解決できますので是非ともこちらに参加して頂きたいのですがどうでしょうか。」


「なるほど…では、そちらに参加しましょう。ただ、一つ我がままを言って良いでしょうか。」


「我がままですか。どのような件ですか?」


「オークションに出すという事でこちらも一人前と呼ばれる職人が手掛けた物を出品致します。ですのでオークションより前にこの露店で半人前の職人が作った物を販売したいのです。宣伝という意味もありますがここの生徒たちはこの先異種族と関わることが多くなってくると思います。その際にこの種族はどういった生活をしているからこのような道具が作られたといった紹介も兼ねたいのです。ギルドとしては警備などの問題があるとは思いますがそうした責任は全てこちらで負います。」


「解りました。オークションの宣伝を事前に行う事は珍しい事ではありませんし若い子たちが異種族に興味を持ってくれるのは商業ギルドとしてもメリットは非常に大きいです。遠慮せずに出してください。こちらも可能な限りバックアップ致しましょう。」


ギルドマスターが手を差し出して来たので俺も手を出してグッと握手をする。

学園都市祭か…

ちょっと頑張ろうかな!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る