幕間・世界ふしぎ探検! 熱風街道開通500周年記念SP2

「私は今、荒野地帯から離れて熱風街道沿いの馬車留駅にきています。今年は熱風街道の開通500周年という事でどこの駅もお祭り騒ぎですね。」


熱風街道は当時の子爵であったストンズ家とカービン家が国に提案したことから始まったがその原案を考え出したのがオオイリ商店の創設者、イサナである。

生まれについてなど良く分かっていない事もあるイサナであるが学園都市に登場してからは度々貴族の記録に登場している。

そんな彼が表舞台に立つきっかけが熱風街道の敷設であった。

彼が熱風街道の敷設の原案を出した後、荒野地帯の3部族と交流し公国との友好条約の橋渡しを行った。

これにより熱風街道の開通が重要性が増しそれに比例してイサナが表舞台に上る事が必要性が上がっていったのだ。


「当時、道と言うのは各地方領主が敷設、整備を行いその見返りに関所などを作り通行税などを集めていました。ただ、この通行税も地域や道で金額が変わるなど大きな問題を抱えていたとの記述があります。そうした問題を改善するためにも両子爵が提案した国を縦断する熱風街道について当初から着目をしていた人物がいます。」


学園都市は公国の建国時に国境に睨みを効かせるための城塞都市であったが年月の経過と共に南部の1都市に変り、その堅牢さに着目し騎士学校と魔法学院が創設され今に伝わる学園都市へと変貌していった。

そして、ストンズ子爵領は公国の荒野地帯と隣接する北部の領地の一つでありカービン子爵領は東部の森林地域と隣接する領地であった。

数の多くの領地をまたがりながら東部沿いに街道を通す事などは許可が出るわけ無いのだが許可を出した人物がいる。

それが当時の女王、セレンディア・セーレ14世であった。

生まれながら剣のギフトを賜ったセーレ14世は他者を寄せ付けない圧倒的な戦闘力とすぐに城から抜け出す破天荒な行動から幼き頃から狂王女などと揶揄されていたが国益に繋がるのならば地方の下級領主などの意見も積極的に取り入れており下級貴族からの支持は高かった。

そうした考え方と通行税問題が重なりイサナが北部との友好条約を持ってくる前から女王はこの工事に目を付けていた。


「実際に当時の常識や情勢に囚われないイサナとセーレ14世の仲は非常に良く一介の商人と国家元首とは思えない程長く深い付き合いをしていくことになります。セーレ14世も亡くなる間際に何かあれば国を捨ててでもイサナに頼れと子や孫に伝えたという逸話が残っておりイサナ側も重大な事柄や近況報告といった日常的な事まで多くの手紙をセーレ14世に送っています。この2人がいなければ公国が今日まで残っていなかったと言う歴史学者も多くいます。」


この2人が始めて出会ったのは荒野地帯であった。

熱風街道の原案を考え付いた存在が気になりセーレ14世が荒野地帯まで押しかける形になった。

セーレ14世は当初自らの身分を隠してイサナに接近したが不必要に上流階級と関わりたくないと一度拒否するが押し問答の末オオイリ商会の従業員という形に収まったとセーレ14世側とイサナ側両方の記録に記載されている。

この時にイサナは友好条約の前段階となる通商条約とガラスで出来た品を携えていたのだがセーレ14世はそれを知らぬままオオイリ商会はサイクロプス、ドワーフ、リザード達の使節団と共に熱風街道の開通予定ルートを南下し学園都市を目指すのであった。


「この時に初めて異種族を見た人も多く公国に大きな衝撃を与えました。一番遠い西部の貴族がわざわざ見に行ったという記載も残っていてイサナの与えたインパクトの大きさの凄さがうかがえますね。また、この遠征は北部で最も大きいサイクロプスが問題無く学園都市に到着出来るかの試験も兼ねているのだとイサナが語ったと言うのがセーレ14世の記録にあり熱風街道の重要性や問題点などに気づいたとされています。」


道中いろいろなハプニングに見舞われながらも一同は学園都市に到着。

その際にイサナはロッソ商会の助力もありグランヒルズ宰相に謁見し使節団の代表であり当時のドワーフの首長であったガンテツと共に通商条約の事を初めて公国側に伝えた。

その際にセーレ14世が自らの正体を話しその場で受け入れる事を表明した。

後に他種族国家言われるようになる公国の初めての異種族間との条約だった。


「こうした前例の無い中で動くをもっとも得意としたのがイサナでした。イサナの行動について公国の歴史学者の方はこう語ります。」


「イサナの行動にはいい意味で常識というものがありません。公国が北部と交流をしていなかったのも建国当時の異種族を巻き込んでしまったという負い目からであり政治的、宗教的なタブーは存在していません。いうなればイサナより先に公国の商人たちが異種族と大々的に関わっていたとしても問題はありませんでした。ですが、公国最大であったロッソ商会でも公国内での取引が主で貿易相手も王国や聖国といったニンゲンの国ばかりでした。商人が競合相手の少ない取引先に異種族を選ぶのは何ら不思議ではありませんが当時の考え方や所属する国の思惑多くの事が商人たちに二の足を踏ませたのです。ですが、そう言った常識に囚われないのがイサナのスタンスです。ヒトが住んでいるなら需要があり、取引があり、商機が生まれるのです。商売の基本を分け隔て無く起こったのがイサナの基本です。ただ、当時の商人たちと違うのが取引相手の事を真摯に考えるという事です。当時は利益至上主義と言えるような悪徳商人も非常に多く相手によって売値を変えることなど当たり前でした。ロッソ商会が大きくなれたのも売値を商品の前に掲示し誰であっても均一価格で販売するという公平性が評価されたからです。イサナはそういった手法は当然ながら北部の種族との交易が始まる前に宿泊できるようにとホテルを建設し、しかも考えうる限り種族差に配慮して設計したのです。そうして作られたホテル・マキアスの設計思想は今でも複数種族向けのホテルのスタンダードなスタイルになるほど洗練されています。他の商人は交易が始まってから建設を開始し始めましたし作ったとしてもただ、部屋を大きくした程度などで異種族の事をほとんど考慮していなかったのを見るとイサナの先見性や発想の異質さが良く分かります。」


「そうした、イサナ達の旅からクエスチョン。イサナは多くの魔道具を持っていたことで知られていますがその中の一つに精霊アールヴの宿と言われる物があったとされています。これは作りたい場所に簡素ながらもちゃんとした建造物が造れるものとされていて実際その造れたものが熱風街道沿いのあちこちに残っています。ですが、その中にある設備は精霊アールヴの力で動くので個性的な形をしているものが多くあります。では、ここでクエスチョン。この深さは私の腕ぐらいしかない石造りのマス状の設備ですがこれは精霊アールヴの宿の特徴の一つと言われています。さて、これは何の設備でしょうか?」


♪♪♪

♪♪


「さて、精霊アールヴの宿を特徴する石造りの設備は何かと問題です。」

「その設備は今も家にありますか?」

「必要な設備だとは思いますが今も家にあるところは稀でしょう。では、お答えください。」


「では、書き終わったようですので一斉に見ていきましょう。」


『井戸』

『囲炉裏』

『電話(固定式)』


「回答が割れましたね。シロヤナギさんが井戸、イタニシさんが囲炉裏、ノムラくんが電話かっこ固定式となりましたがシロヤナギはどうして井戸と?」

「そうですね。やはり長旅になると水の確保は大事だと思うんですよ。ですので水が汲めるところは必ず用意するのではと思いまして。」

「なるほど、ではイタニシさん。」

「僕も水か火どっちかを扱う物で迷ったんですよ。ゆっくり休むには暖かい場所と食べ物は必要かな思ってこっちにしました。」

「では、最後にノムラくん。」

「必要だけど今は稀になったって言ったらこの固定電話しか思い浮かばなかったですね。それにあのイサナなら作ってしまいそうですし。」

「では、正解のVTRをどうぞ。」


・・・

・・


「さて、正解ですがこの精霊アールヴの宿ですが実はまだ現役で各々設備に魔力を込めると近くにいる妖精たちが力を貸してくれるそうなんです。では、お願いします。エルフのガイドの方が魔力を設備に込めますよ。うわ、うわ、凄い!水が湧いてきましたよ。」


「どうぞ、ぜひ飲んでみてください。」


「では、一口。冷たくておいしいですね。」


「普通の魔法で作った水は魔力の塊なので魔力への対応性が低いヒトが飲むと体調を崩したりするのですが妖精や精霊が生み出した水は自然にある近くの地下水などを呼び出してくれるので問題なく飲めるのですよ。」


「そういう事なんですね。というわけで正解は井戸、でした。」


エルフの伝承には精霊アールヴの宿についてこう伝わっている。

『釜戸はあっても薪は無し、氷室はあっても氷無し、井戸はあっても釣べ無し。』

これは魔法を生活の道具にしているエルフが精霊アールヴの宿を主体に暮らしていた時を表していると伝わっている。

魔法で解決できるエルフの特権であり当時の生産能力の低さを皮肉っているとも言われている。

その後、エルフ社会でも効率的な釜戸や井戸などを作る技術が発達すると同時に妖精や精霊任せになる非効率的な精霊アールヴの宿は徐々に姿を消していった。

失われた魔術を扱う魔道具をイサナがどのように入手してかは不明であるが今もなお伝わる古代魔法の重要の証拠として学術的にも価値は高く、古へのロマンを感じる観光客が種族を問わず訪れる人気の観光スポットとなっている。


テッテッテー♪♪♪

♪♪


「正解はシロヤナギさん。イタニシさんとノムラくんはボッシュートです。」


テレテレテテテン♪


「水のほうやったかぁ。2分の1を外したなぁ。」

「でも、あれで井戸として使えるって魔法って凄いですよね。」

「魔法使いの方と関わる事は本当に稀ですからね。何歳になっても魔法には驚かされますね。」


「では、CMの後はラストミステリーです。最後はイサナが建てたホテル・マキアスに迫ります。」

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