幕間・世界ふしぎ探検! 熱風街道開通500周年記念SP1

テレテテー♪


今日の秘密の舞台はセーレ公国を南北に縦断する熱風街道。

今から500年前に開通し、今年は街道沿いの各所で500周年記念の催しが開催されている。

その生誕のふしぎに今日は迫る。


「皆さんこんばんわ。司会のクサハラです。そして、本日の回答者はこちらの3名。まずはシロヤナギさん。」

「宜しくお願い致します。」

「イタニシさん。」

「お願いします。」

「ノムラくん。」

「頑張ります。」


「さて、本日のミステリーの舞台はセーレ公国という事ですがシロヤナギさんは言ったことがあるとお聞きしましたが?」


「ええ、と言っても随分前の事ですが王都の方に伺わせていただきまして堅牢そうな城と整然とした街並みが印象深かったですね。」


「なるほど。知っているという事は少し有利かも知れませんね。それではVTRを見てもらいましょう。第一ミステリー、ふしぎ探検。」


・・・

・・


「みなさん、こんばんわ。ミステリーハンターです。荒野の玄関口にあたるガンドラダ大要塞に来ています。皆さん岩山の上を見てください。サイクロプスの方々がこちらを見ていますよ。あ!手を振ってくれてる。こんにちわ

ー」


セーレ公国と荒野地域の間には巨大な岩山がそびえ立っている。

その岩山の唯一の裂け目がセーレ公国と荒野地域をつなげる道となっている。


「ここ荒野地域は今から約1500年以上前の歪悪イービル大戦の主戦場の一つでした。ここでは荒野の種族だけではなくドラゴンやサラマンダーなどあらゆる種族が世界の為に戦ったと言われています。そうした多くの味方を助け、敵に睨みを聞かせるためにサイクロプスのガンドラダがこの岩山をくり抜き造り上げたといわれています。本日はラミアのガイドさんをお呼びしてますのでいろいろと聞いていきましょう。今日はよろしくお願いします。」


「よろしくお願いします。では側面の岩壁をご覧ください。ここは戦場に向かう勇者達を鼓舞するために多くの神々が彫られております。これを彫ったのはガンドラダでは無いと言われておりますがサイクロプスは石工の名手揃いですのでどの神々も素晴らしい出来栄えです。大戦の後もサイクロプスが称えるべき方が彫られていってますのでもしかしたらみなさんがご存知の偉人もいるかもしれませんね。」


「これは圧巻ですね!種族の大きさに合わせて大小様々な神々が彫られています。おや?ここにひと際小さいのが彫られていますね。このサイズはニンゲンの子供でしょうか。」


「それは大商人イサナの神像ですね。かの方がおられなければ今の我々がいないでしょう。さぁ、もうすぐ荒野側に抜けますよ。抜けたら後ろを振り返ってみてください。それこそがガンドラダ大要塞の真の姿ですよ。」


「後ろですか?うわ~、凄い、凄いですよこれわ!!これがガンドラダが彫り上げた大要塞の姿なんですね。これは凄い、これを攻めろと言われても私は足が震えちゃいますね。」


ガンドラダ大要塞の真の姿は荒野側にある。

彫刻ではあるのだが今にも飛び掛かってきそうなドラゴンと勇ましき戦装束を身にまとった主神グランフィリア像は味方に勇気を与え敵には恐怖を与えたという。

セーレ公国の将軍を務めた事のあるガランド辺境伯の手記にはこのように記載されている。

『もしも、荒野側のガンドラダ大要塞を攻めるとなると100万の私がいるかもしれない。並の兵ではドラゴンの恐ろしさに驚きすくみ上り、並の将ではその視線に気を取られ指揮が取れなくなるだろう。逆に守りとなれば100の兵でいいだろう。背にいる戦女神に激励され兵1人1人が英雄となり敵を壊滅させるだろう。』


「ガンドラダ大要塞を抜けるとそこに広がるのは果てしない荒野です。この荒野にはリザードやラミア達が各地に点在して住んでいます。歩くには広すぎるのでここからはラザードの牽く馬車に乗っていきましょう。」


「この子たちがラザードですか大きくてかっこいいですね。」


「ラザードは我々荒野に住むものにとっては欠かせない動物になります。リザードの戦士は今も彼らに乗って狩りを行いますよ。」


ラザードは二足歩行の羽根の無い地龍種の一種で騎獣として荒野の生活を支えてきた。

雑食性で獰猛そうな見た目とは裏腹にヒトに懐き世話をすればちゃんとヒトの指示を聞く。

馬に比べて速度では劣るものの持久力は高く特にその跳躍力には目を見張るものがある。


「ラザード車に揺られて私たちがやって来たのは荒野の北部にある。赤の鱗の集落です。ここは観光の町として歴史ある土地でしてあの石舞台や聖地である塩の祠がある場所です。」


石舞台や塩の祠は今でも荒野に住むリザードやラミア達にとっては神聖な場所であり年に一度ある浄化の儀式の時にはその神秘的な浄化の舞を見ようと各国から多くの観光客が訪れて賑わっている。


「夜になると石舞台を中心に多くの屋台が出てきて賑わいます。見てくださいこの人だかりをここにいるほとんどが観光客だそうです。すこし、話しを聞いてみましょうか。すみません、どこから来られたのですか?」


「私は公国が来ました。この辺りは眩しすぎる人工的なライト置いていないから星が良く見えるの。私は星を見るのが何よりも好きだから何度も来ているわ。」

「僕は王国から来ました。荒野の人たちは僕たち観光客の為に極力昔ながらの生活をしていると聞いてますし実際にここにくるとびっくりするぐらい不便な事が多いです。でもそれが楽しくて何度も来てしまうんです。」

「我々は帝国から家族で来ました。ご存じかもしれませんが帝国は非常に寒いので子供たちに暑いのを体験させてあげようと思って来たのですが暑くなれば成る程子供たちは元気になっていくのに対して大人たちはどんどんバテていってますよ。」


荒野でも有数の観光地であるこの辺りはあえて昔ながらの生活をしている。服も狩った獲物の革や毛を使う民族衣装を身にまとって狩りを続け、照明はかがり火や小さな魔石灯を使うという徹底ぶりだ。

その不便さが観光客を魅了しており多く観光客のリピート率が非常に高い。


「荒野地帯2日目ですが今日はさらに北に進みドワーフ達の住む火山地帯を目指します。」


荒野をさらに北上すると赤い土や岩が段々黒くなっていく。

その先にあるのが世界でも有数の大きさの火山地域で、そのすそ野にあるのがドワーフ達の都市だ。


「本日はドワーフの方がガイドについてくれています。ドワーフと言えば何かを作っているイメージがあるのですがここもそうなのですか?」


「確かに多種多様な職人がいますがこの都市は観光用の都市になります。荒地とは全く違うコンセプトになっていますよ。では岩山に入るのでついて来てくださいね。」


「荒地とは全く違うというのは楽しみですね。明かりがどんどん近づいてきますのでもうすぐ都市に付きますよ。わぁ、凄い街の中がキラキラしてますよ。見てくださいよこの照明。照明一つに凄く緻密な模様が刻まれてますよ。正面に見えるのはエレベーターのようですがその中にも豪華なデザインになってますね。」


「観光都市ミスラルドはドワーフをはじめあらゆる種族の職人が己の技術を限界までだして絢爛豪華な都市を創ろうと思い築き上げた場所です。サイクロプスは芸術、リザード達は文化、ドワーフは技術。そのバランスで私たち荒野の部族は多くの方をもてなしてきました。開通当時のメインターゲットはセーレ公国の貴族達でした。その貴族たちに多くの驚きと感動、そして楽しみを感じていただいたおかげで私たちは今も多くの観客の方々をもてなすことが出来ています。」


実際に開通した当時のセーレ公国の貴族の記録には荒地地帯での観光の内容や購入した物品に関する記載が多くあり当時の人々に多くの衝撃を与えたことは間違いない。

こうして近くて遠くにいた異種族が本当の意味で隣人になった影響は計り知れずこの衝撃は荒地地帯やセーレ公国だけにとどまらず世界中に影響を及ぼしていくのであった。


「ここで最初のクエスチョンです。ドワーフの技術力は古来から有名でしたがそれを不動の地位とする新技術が発明されました。さて、その新技術を用いられて加工される素材は何でしょうか?」


♪♪♪

♪♪


「さて、ドワーフが加工するようになった当時の新素材とは何か。」

「その素材は現代でも使われてますか。」

「ごくごく一般的に使われてますね。私もノムラ君も見ない日は無いと思いますよ。」

「見ない日は無い物?」

「では、お書きください。」


「さて、一斉に解答見てみましょう。」


『ガラス』

『ガラス』

『鉄』


「シロヤナギさんとイタニシさんがガラス。ノムラくんが鉄、と。では一人だけ違う回答をした。ノムラくん自信はありますか?」

「ドワーフと言えば鉄。鉄と言えばドワーフでしょう。」

「いやいや、ノムラくん。その考えは間違ってないけど鉄はニンゲンも使ってたろ。」

「それもそうか…」

「では、回答のVTRをどうぞ。」


・・・

・・


「私は今、ミスラルドの酒場に来ています。皆さんグラスになみなみとお酒を入れていますね。透明なガラスなのでお酒が良く見えます。ということで正解はガラスでした。」


水晶などをはじめ宝石や魔石を磨き上げる技術はエルフが圧倒的に上だった。

対してガラスは魔力をため込む性質を持たないためエルフ達は見向きもせず、ドワーフ達も金属融かすときの不純物になってしまう為ガラスはクズ石として捨てられていた。

そうした背景の中、ドワーフの職人であるダンテスが兄であり当時の首長であったガンテツへの誕生祝いを作りたいと行商人のイサナに相談する。

それが吹きガラスの誕生へとつながったとドワーフ達に伝えられている。

この時どうしてイサナがガラスが融ける物だと知っていたのかという疑問はあるが鉄を作るときの不純物になると言うところから着想を得たのではないかと言うのが一般的な説である。

こうして生まれたガラス製品はドワーフ達に多大な衝撃を与えガラスを融かしたことが無い炉は無いと伝わるほどの一大産業になっていく。

またガラスの衝撃はドワーフのみならず隣のセーレ公国にも多大な影響を与え熱風街道の開通の追い風になったのだ。


「最初に生まれたガラス製品ですが実はここ、ミスラルドに残っています。それがこのガラスのジョッキです。一番最初に作られたのが酒を飲む道具と言うのも非常にドワーフ達らしいですよね。」


テッテッテー♪♪♪

♪♪


「というわけで正解はガラスでした。シロヤナギさんとイタニシさんが正解。ノムラくんはボッシュートです。」


テレテレテテテン♪


「ガラスかぁ…あの最後のジョッキデカくないですか?」

「あれはデカかったねぇ。普通のサイズの倍はあったんやないかな。」

「ドワーフが大酒のみなのは今の昔も変わらないという事ですね。」


「さて、CMを挟みまして次は熱風街道の誕生に迫ります。では、CMです。」

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