新・スチュワート邸 後編
3階の食堂で一休みした俺たちは次に新館に入ってまずは5階へと向かった。
ここは一般的なヒトサイズで作られた場所で東側3部屋西側3部屋の計6部屋となっている。
部屋数が少ないかと思ったがレディアや宰相にリサーチした結果で決まったので妥当な数字だろう。
増築する可能性も考えて設計もしているので部屋数の悩んだら工事をしていこう。
今回の案内に向けて各階1部屋ずつモデルルームを作成しているので5階のモデルルームに入る。
この部屋は6人ぐらいを想定していてリビングにベッドルーム2つトイレにバスルームまでついている。
そこに神界工房の職人が作った家具や調度品を置いて派手過ぎずかつ高級感を押し出したデザインになっている。
「ここが一般サイズ向けの部屋になっております。ニンゲンやドワーフはここになりますね。」
「すごい豪華な部屋です。」
「これは…驚くしかないね。」
部屋の高級感に圧倒される2人。
フィリア様はテンションを上げてどんどん入っていく。
「イサナさんこれが噂の跳ねるベッドですね。試してみてもいいですか?」
「どうぞ、どうぞ。ここに置いてあるのが完成版のベッドになります。世界最高の寝心地ですよ。」
聞くやいなやフィリア様はベッドにダイブした。
ベッドはダイブの衝撃のほとんどを吸収しつつフィリア様を数回軽くバウンドさせるとそのまましっかりとフィリア様を受け止めた。
「これは凄いベッドですね!今まで使ってきたのも硬いと思ったことはありませんがこれは桁違いですよ。数世紀の間は間違いなく世界最高のベッドですよ。」
「ありがとうございます。そのベッドは場所によってスプリングの硬さや大きさが違うのでずっと寝てても疲れすぎない仕組みになっております。中身の綿の部分はバロメッツコットン、肌に触れるところはアラクネシルクを使ってます。もちろん掛布団も同様ですよ。」
バロメッツと言うのは子羊っぽい果実がなる変わった植物だ。
見た目はほんとに子羊なので少し味見として食べさせてもらったけど鳥のささ身以上にパサパサしてるし。
肉食動物にその子羊部分を食わせることで種を運ばせているそうだ。
アラクネシルクと言うのは下半身が蜘蛛、上半身が女性の種族が出した糸だ。
絹糸で無いのにシルクってどうなの?って思わなくもないがどうやらカイコの糸に対抗心があるらしくあえてシルクとつけることでアラクネの糸こそ優れたシルクなのだと世に知らしめたいらしいとの事をガンドラダから聞いた。
ちなみにアラクネの職人たちだが自ら糸を生み出せる関係上機織り職人として工房に入ったのだ今回の工事においてはちょっと違う作業を行っていた。
クレーンの事をポロっとこぼしてしまった翌日に滑車などを用意して彼女たちの強靭な糸を使って建材を吊り上げていたのだ。
蜘蛛の糸は強いと聞いたことはあったがアレには俺も驚かされたな…
そんな強靭さと滑らかな肌触りが融合した奇跡の糸アラクネシルクで作られた寝具と完成したスプリングベッドの寝心地は最高でベッドに入ったら最後。
次に目が覚めるのは翌朝になっているのだ。
「フィリア様起きてください。次の案内に移りますよ。」
「…ッハ! すいませんイサナさん。起こしてくれていなければ数年は寝て過ごすところでした。神にとって睡眠は娯楽なので一度寝付いちゃうと全然起きないのですよ。」
睡眠が娯楽って羨ましいかそうでもないか判断が付きづらいが少なくとも人とはスケールが違うな。
「次に案内しますのはこのトイレ!部屋を作るときに一番苦労しました。」
「変わった形だけど何が違うのかな?」
ヴィオラの言った変わった形だが俺には馴染みのある貯水タンク付きトイレだ。
この世界のトイレ事情はファンタジー要素が入っているので不思議だ。
便器などはレンガを積んだようなものや石で存在しているが水洗式ではなく汲み取り式に近いがかといって汲み取ることは無い。
使った後は便器の近くにおいてある水桶から水を汲んで流して終わりだ。
そのあとはどうなるのかと言うとゾルやジェルと呼ばれるゲル状の魔物が汲み取り槽の中にいてすぐに排泄物を取り込むので匂いなども無く結構清潔的だ。
ただ、すぐに大きくなるので使用頻度にもよるが月に数回は大きくなった個体を回収して天日干しに水気が抜けて小さくなった物を再利用するという事をしている。
こうした理由からゲル貯槽が必要になるのでトイレを作るにもある程度サイズが必要なので高層階にはトイレの設置も難しい。
それにゲル貯槽のおかげで不潔感も少なく事足りてしまっていたので水洗式トイレも上下水道も発展しなかったようだ。
ここのトイレも最終的にはゲル貯槽におくることになるが流すときは水洗式というシステムのおかげで高層階にも設置できるようになったと画期的な物が完成したのだ。
ちなみに上水道の方法は水が必要なところに貯水槽を設置していてそこにスチュワート邸の魔法で水を貯めるという方法を使っている。
屋上に貯水槽を使って流す方法も考えはしたがちょっと景観が良くなかったので結局は魔法でごり押した。
魔法万歳、ファンタジー万歳だ。
「…こうした様々な要因を解決したのがこのトイレなのだ。凄さが分かったか?」
「凄いのはよく分かったよ。レバーを倒したら勝手に水を流してくれるのは便利で良いね。」
「ホントはウォシュレット機能や陶器製の便器にしたかったが流石にそこまで手が回らんかった。とりあえずトイレに関してはまだまだ研究中だ。ちなみにお風呂に関してもマジック上水道のおかげで何とかなった。水もお湯もスチュワート邸がちょちょいと用意してくれる。」
トイレもお風呂もなかなか納得いくものが出来たと思っているがいつか高機能トイレを導入したいものだ。
次に向かったのは4階の客室だ。
3階と4階の客室は同じ造りになっていてここはラミアなどの一般サイズ以上巨人サイズ未満の方を向けになっている。
間取りは一般サイズの部屋にあったベッドルーム2つを1つに減らしバスルームも無くした。
そして片側3部屋ずつあったところを片側2部屋にしたことで部屋面積が1.5倍になったことで体の大きい人でも快適に過ごせると思う。
「主様ここは凄く広い部屋ですね!」
「ただ広いだけじゃないぞ。部屋の大きさに合わせて家具も大きくしてるからな。ベッドも幅広だぞ。」
ラミアサイズと名付けたベッドルームにある大型ベッドは俺が4人以上転がれるぐらいの大きさになっている。
実際にラミアの職人に寝てもらうと初めて体を全て伸ばせるベッドに出会ったと好評だった。
アラクネの職人たちが泣き言を言いながら寝具を作ってくれた。
「これと同じ造りが2階層にまたがってあるので8部屋用意してある。そして最後の客室は巨人サイズの部屋だぞ。」
1階に降りてきて入ったのが巨人サイズの部屋。
ここも間取りはラミアサイズの部屋と同じだがここは1階2階をぶち抜いて作ってあるので俺たちのような一般サイズからみたらめちゃくちゃ広い。
家具も大きいを通り越してデカい。
目玉であるベッドに関しては登れないぐらい高くて歩かないと全体が見えない。
このベッドの作成にあたってはアラクネだけでなくベッドフレームを作ったエルフやスプリングを作ったドワーフ達も死んだような目で作業をしていた。
「食堂でも感じたけれど何もかもが巨大すぎて混乱するね。」
「工房の職人達が虚ろな目で何かを作っていたのを見てましたがこういうのを作っていたのですね。」
ヴィオラもフィリア様もスケールの違いにあっけにとられている。
まぁ、俺も完成予想図を見ていたにもかかわらずいざ実際のを見ると開いた口が塞がらなかったからなぁ…
「とりあえず客室案内はここまでです。次は本館の方に戻りますよ。」
3人を連れて本館の方に戻り入り口を背に左に向かう。
食堂とは反対側にあるこちらはまっすぐ行くと庭園に出る。
庭園を通っていくと丸い屋根の立派な建物が見えてきてそこには勇ましいドラゴンが彫られた重厚な扉がついていた。
中に入るとたくさんの長椅子がおかれている広いホールになっている。
「主様、ここは礼拝堂ですか?」
「大正解!ここも新たに造ってもらったんだよ。」
ホールの壁面にはドラゴンの彫像が並んでいて先に進んでいくと3つ又になっていてその先に神々の彫像が並んでいる。左から巨人族の神マキア様、中央に主神グランフィリア様、右側にドワーフの神ドゥワーイン様を祀っている。
「こうして石像の私を目の前で見るのは少々恥ずかしいものがありますね。ところでイサナさんどうしてマキアだけ上半身からなのでしょうか。」
「これはいろいろと話し合ったのですが結論としてはマキア様が非常に大きいからですね。フィリア様とドゥワーイン様は全身像で全く問題なかったのですがマキア様の全身像を用意するとなると礼拝堂のバランスがおかしくなってしまう問題が出てきたのです。ならば上半身だけで限界サイズを作ろうという事になりました。それにマキア様を知らない人が見た時に上半身だけでこれほど大きいのなら全身ならもっと大きいのだと想像させることが出来るのと言うのも狙ってます。」
「なるほど。そういう理由があったのですね。そういえばイサナさんと初めて会ったときは山の様に大きかったですものね…」
「ちなみにリザード族はどうしようかとなった時にどのドラゴンを祀ればいいんだという話になりましてその結果高名なドラゴンの彫像をあのように並べることになりました。それに神々の様に祀るよりはすぐ近くにいる方がドラゴンらしいとの意見もありましたので。」
あのドラゴンの彫像も実は中々にヤバい物になっているのがある。
なんとモデルになったドラゴンの鱗の一部であったり爪や牙の一部が入っていたりするのだ。
何処からどうやってドラゴンに話が伝わったか分からないが建設中に青い顔したガンドラダがやってきてドラゴン素材を持ってきてくれた。
流石に丸見えにするのは大問題になるのが分かり切っていたので彫像の中に埋め込まれていたりする。
欠片を埋め込んでいるにもかかわらず分かる人には分かるようでたまにリザードやラミアなどがお供え物を置いていた。
「では、最後の案内に移りましょう。ここまでたくさん歩いたのでお疲れでしょうから大浴場にご案内します。」
大浴場は本館の東側、庭に出るの廊下から行ける。
もちろん男女別になっていて巨人族でも入れる大空間だ。
湯舟は中央に巨大な物があってそれはスロープ状にしているので自分の体のサイズ合わせて浸かることが出来るしそれ以外にも何個か一般サイズ向けと大型サイズ向けのを用意している。
今日は男は俺一人なのでゆっくり入れる、誰もいないから巨大湯船で泳いじゃおうかなって思っていたのに…
「主様、大きなお風呂ですね!」
「アア、ウンソウダネ」
「スロープだから自分で深さを調整できるのは面白いね。」
「アア、ウンソウダネ」
「これが入浴ですかぁ~これは確かにハマるのもわかりますねぇ~」
「アア、ウンソウデスネ」
メイちゃんはともかくヴィオラのたわっとフィリア様のたわわが…
しかもなんでヴィオラとフィリア様は俺のすぐ横にいるんだ!
身長差のせいでたわわが目の前に合ってたわわわわ…
今日は許すからメイちゃんみたいに泳いできなさい。
何でもいいから俺を開放してくれぇ!!
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