各々の動き・その1(オオイリ商店編)
建築作業中に各々が何をするかは昨日決めたので今日から各々のやりたい事をすることになった。
レディアとは別れ彼女は本来の仕事に、サイクロプス組は道路敷設のお手伝いに、ガンテツは建築工事の見学の予定だったがやってきた職人の中に身内がいたらしく呼び出しを受けて連れていかれてリーサはストンズ子爵と共に荒野に一度帰って行った。
そして俺たちオオイリ商店は建物の打ち合わせと職人たちの希望を叶える為に学園都市とスチュワート邸を行ったり来たりすることになりそうだ。
今日は朝から早速買い付けをしに学園都市にやってきた。
昨日は食い物より酒をメインに買ってきたというのもあるがあれほど山盛り買ってきた食い物があんなに直ぐに無くなるとは俺も想定外だった…
そうしてやってきたのはお馴染みロッソ商会! ではなく商人ギルドだ。
昨日買い付けたときにロダンさんと世間話していたのだが定期的に大量購入するなら商人ギルドにお願いしてみたらどうかと言う話だった。
利益を分配してほかの商人との繋がりを作った方が後々のために役に立つかもしれないからという理由だ。
ただ、ギルドや他の商人と関わるといろいろ厄介ごとがついてくるかもしれないとも言っていたけどな…
意気揚々と商人ギルドの扉を開けるといろいろな視線が突き刺さるが慣れたもんだな。
「生鮮食品の定期購入をお願いしたいんだけどどこで頼めばいい?」
背伸びして受付嬢に話しをすると一瞬驚いた顔をしたがすぐに笑顔になって対応してくれた。
「定期購入の斡旋ですね。こちらで相談を受け付けております。ギルドカードと購入計画などがありましたら提出をお願い致します。」
受付嬢に言われた通り黒光りするギルドカード購入計画を描いた羊皮紙を受付嬢に手渡す。
ロダンさんに相談したときに購入計画書を用意しておけば手続きが簡単になるからと事前準備しておいたのだ。
ヴィオラとメイちゃんと雑談しているとさっきの受付嬢が帰ってきた。
「オオイリ商店の皆様お待たせいたしました。相談室にご案内いたします。」
相談室と呼ばれるところに部屋に行くとそこには中年男性が一人座っていた。
「初めましてオオイリ商店の皆様。今回の案件の担当でございます。購入計画書を拝見させていただきましたが正直厳しいかと存じます。」
「厳しいとは何がですか?量を集めることですか?それとも予算が少ないことですか?」
「どちらも、でございます。もともとこの街では食料品を扱ってる店が少なくその店も既に販売先を決めております。そこにこれだけの量を追加でとなると難しいかもしれません。」
「こちらは1つの店で揃えて欲しいとは言いませんよ。露店や複数の店から集めてもらって構いません。卸売りを引き受けて欲しいのです。」
「お、卸売りですか?」
「…もしかしてこの国には卸売り業がいないのですか?」
「申し訳ございませんが聞いたことがございません。よろしければお聞かせいただけますか。」
「卸売りと言うのは生産者と商人を結ぶ仕事をしている者です。農家や漁師が売りたい物を卸売りが買い付けそれを商人が買い付け顧客に売るというものです。メリットしては商人は卸から買い付ければいいのでわざわざ各地に出向く必要がなく輸送や在庫の大量保管も卸売りがするので非常に楽であることでデメリットは間に業者が絡むのでどうしても販売金額が上がってしまうという所ですね。」
そういえば元の世界も卸売り業者って海外だと少ないんだったっけ。
完全に忘れてたな…
俺の言葉に担当を名乗った男性と受付嬢がメモをしていたけどメモするほど難しいこと言ってないんだけどな。
「なるほど…確かにその仕組みでしたら集められるかもしれませんね。一度協議させていただいてからこの案件にお返事させていただく形でよろしいでしょうか。本日は食料品を扱っております所の紹介状を無料でお渡しさせていただきます。」
こうして今日は結局自分で仕入れる事になったのだった。
楽しようと思ったのにどうしてこうなった…
・・・
・・
・
いろいろあって午後。
午前中に買い付けた食料はスチュワート邸に運び込み済みだ。
料理自体はスチュワート邸の料理人達が作ってくれるので安い食材でも美味しくしてくれる。
同じ顔の料理人が一糸乱れぬ動きで料理を作っていくのはかなりシュールだけどな。
神界からの職人たちは久しぶりの食事だとかなり嬉しそうに食べている。
何せ一度死んだ身なので神界では食事や睡眠などの生存欲求が無いというか不要らしく趣味の一環になってるらしい。
だから作品が出来るまでひたすら没頭し続けてるらしくその癖がでてすでに2,3人倒れてる職人が出ているほどだ。
しかし、神界工房の職人たちの人種は多種多様だ。
サイクロプスのガンドラダをはじめドワーフやリザードマンにエルフ、鬼、高所にはハーピーやアラクネとかが作業をしている。
「おお、来訪者殿ここに居られましたか。どのように改装するかすこし打ち合わせできますかな?」
「ああ、いいぞ。何を聞きたいんだ?」
「入り口は言われた通り吹き抜けにしてサイクロプスサイズの扉を設置しましたぞ。聞きたいのはベッドですな。来訪者殿が絶対用意したいと言ったボヨンボヨンのベッドというのがよくわからないのです。」
「ああ、なるほど。作りたいのはスプリングマットレスってやつでなマットレスにコイル状のスプリングを敷き詰めた奴なんだ。」
そうして地面に簡単にスプリングやマットレスの絵を描いてパパスに説明する。
フムフムと納得して俺の絵の横に何か書くとしばしお待ちをと言って離れたと思うとドワーフの職人を一人連れてきて彼に説明した。
ドワーフもこれぐらいならすぐに出来ると言って近くにいた数人に声を掛けるとパパスと一緒に神界に一度帰って行った。
それから1時間ぐらいたった後、パパスとドワーフの職人がマットレスを担いで帰ってきた。
「来訪者殿出来ましたぞ。一度試しましたがこれはまさしくボヨンボヨンのベッドですな。」
パパスと職人がしたり顔で持ってきたマットレスにダイブしてみるといい感じの反発を受ける。
そのまま寝っ転がると元の世界を思い出すほど見事な寝心地だった。
もうこの世界のめっちゃ固いベッドで寝れない…
「これだこれ!よく1時間で出来たな!」
「いやはや気に入っていただけで何よりでございます。とはいえこれはプロトタイプなのでこれから品質を高めていきますぞ。とはいえこれが世に出るとは生きてる者達が羨ましいですな。生前は寝床で難儀しましたからなぁ。」
パパスの言葉にドワーフの職人もうんうんと頷いている。
ドワーフたちのベッドって基本的に石製に藁みたいな草を敷き詰める物だったからそりゃ硬いだろうよ。
「とはいえこれで目玉のベッドについては問題ないな。ほかにも色々頼むな。」
「フッフッフ、お任せくだされ。この世で最も優れたホテルを作って見せますからな。」
パパスの言葉に周りにいた職人たちもガッツポーズで答えてくれた。
本当に神界工房の皆は頼りがいがある。
とりあえずこのマットレスとヴィオラとメイちゃんに体験させて驚かせよっと。
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