お抱え職人来る

神界工房から帰ってきた俺は早速パパスからもらった召喚用のハンカチを広げた。

魔法陣はまばゆい光を放ちながら大きくなっていく。


「某、降臨であります。ささ、来訪者殿。案内をお願い致しますぞ。」


光が収まるとそこにはヨレヨレの白衣で白髪交じりのヒゲと髪はボサボサのいつも通りのパパスが立っていた。

ただ、その表情は新しいおもちゃを目の前にした子供のように嬉々としていた。


「案内する前にちょっとみんなと話してくるから。あんまり変なことはしないでくれよ。」


「お任せくだされ。静かに待っておりますので。」


微妙に信じられないんだけど今どうこう出来るわけでもないので二人で馬車から出るとちょうどヴィオラとメイちゃんがいたので皆を呼んできてもらうことにした。


「イサナよ、呼んだということはまた気だな。」


「なんでレディアは俺が前提で話を聞くんだ…とりあえずだなスチュワート邸を修理する事にした。ただ、修理するにあたっていろいろ問題が発生する可能性が高いと言う事になったので近場の職人を使わずに俺のお抱え職人達を呼ぶことにしたんだ。」


俺の言葉にヴィオラとメイちゃんの表情が青ざめる。

なんせ俺のお抱え職人たちの正体神界工房を知ってるからな。

それに反してほかのメンバーは興味深そうな顔をしている。

この対比は見てる側からしたら面白いな。


「と言う事はとうとう貴様の持つ凄まじ過ぎる逸品を作った職人達に会えるのか。」


「あ~その件な。申し訳ないがレディアにはここでお別れしようと思うんだ。」


「な、なぜだ!これから面白そうな事をしようとしているのが目に見えてるいるのになぜ余だけ仲間外れにするのだ!!」


「これから工事するんだから工事が終わるまで俺たちは遠出を出来ない。だからしばらくはここと学園都市を往復するだけになる。さらに言うと職人たちの世話もしなければ行けないわけだ。そんな地味な仕事にお前が耐えられるとは思えない!」


「ぐぬぬ…正直に答えるならば貴様の見立て通り余の好む仕事では無いな。飽きるのも目に見えるな。」


「そういう事だ。それにお前の本職もあるだろ?」


「余の…本職…?」


「政治だろ!政治!!この国の王様なんだろ!?」


「ああ、そういう事か。そこはあまり気にする事はあるまい。宰相と余の素晴らしき弟がほとんどをしておるからな。余としては弟に王位をさっさと譲りたいのだが弟が頑なに断っていて困っているのだ。」


「そんなこと笑いながら聞かされても俺も困るんだけど…まぁそういうわけでレディアとはここでお別れだ。ただ、ここが完成したらすぐに呼ぶからそれで納得してくれ。作っていく途中を見ていくより完成形を見た方が楽しいだろ?」


「それもそうだな。宰相と弟に任せておけば問題ないが余が決裁せねばならん書類があるのも確かではあるしな。ごねすぎるのもみっともないし楽しい休暇であったと割り切るとしよう。ただし!完成したときは真っ先に余に声をかけるのだぞ、よいな!」


「出来たら声を声をかけるからそれは安心してくれ。ほかのメンバーはまだ一緒にいてもらうから安心してほしい。基本的に自由に過ごしてくれていいから。というわけで解散。」


・・・

・・


解散した後ヴィオラにレディアを学園都市に送ってもらって俺はパパスが待っていた部屋に戻るとそこには誰もいなかった。


「…どこに行ったんだ?」


「イサナ様、お客様でしたら今は別のところに居られますのでご案内致します。」


やっぱりじっとしていられなかったか。

スチュワート邸のメイドにパパスがいる場所に案内してもらうと近づくにつれパパスの興奮した奇声が聞こえてきた。


「素晴らしい、素晴らしいですぞ!!なるほど、こんな風に魔力神経が走るのですな。いやはや、ゴーレム造りの名人ですらこれほどの魔力神経は走らせることはないでしょうな。このように魔力が走るならあの素材ならばもっと強固に出来ますな。」


「あぁ…どうだパパス。順調なのか?」


「おお、来訪者殿!スチュワート邸殿は素晴らしいですな!!建築物に魔力や霊力が溜まり自我を得る。言葉ではわかっておりましたがこのように実物を見ますと思ってもいなかった発見がありますな。無機物が長きにわたって動き出す。精霊や妖怪と話すよりもまずゴーレムを思いつかなかったのは不覚でしたな。間違いなくゴーレムの近縁種なのになぜ思いつかなかったのか。しかも100年以上たっているエルダーゴーレム。これは凄いですぞ、素晴らしいですぞ。魔導力学が大きく進みますぞ。」


少しだけあいさつするとすぐに自分の世界に戻っていった。

魔法に関してはほんとにわからないんだよなぁ…

ヴィオラが帰ってきたらメイちゃんと一緒にパパスの対応を頼むか。


っと思いついたのが三日前。

2人にパパスの対応をお願いしたら3人でスチュワート邸を調べることになったので俺は完全に蚊帳の外になった。

でもそのおかげか思っていたよりも早く調査が終わりパパスはすでに神界工房に帰って素材の準備をしに行った。


〈救世主よ聞こえるか?ガンドラダじゃ。こちらの準備ができたので召喚用道具を宝物庫にいれたのでまたカバンから取り出して使ってほしい。使う時は周囲に何もない場所で使ってくれ。〉


腕輪から連絡があったので言われたとおりにカバンから召喚用の道具を取り出すと両手で抱えるような大きさのクリスタルが出てきた。

デカいしクリスタルの中に凄い量の光の粒子が入ってるのが凄く気になる。

安全のために皆に声をかけた後周りに何もないところにクリスタルを突き刺してみた。

クリスタルに入っていた光の粒子があふれ出てそれが大中小のサイズの円に幾何学模様が大量に刻まれた魔法陣の形になる。

魔法陣だんだんと速度を上がって回っていくと円の中心に10mはありそうな巨大な門が姿を現していく。

巨大な門がゴンゴンゴンと大きな音を立てて開いていくと先頭に立っているガンドラダが見えた。


「ワシらが来たぞ。さぁ、天上の御殿をこの地に造ってやろうぞ。」


とうとう、新界工房の面々が降臨したのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る