高貴なる者
「メイから聞いたぞイサナ!そのような案件何故余に相談しなかったのだ。」
「「レディア!?」」
「「陛下!?」」
扉をバァンと勢い良く入って来たのは猩々緋色の長い髪に見慣れた旅装を身に纏っているレディアだった。
だが、彼女に対して俺とガンテツはレディアと声をかけ宰相とロダンさんは陛下と声をかけた、陛下と。
俺はその言葉に驚いて後ろを振り返ると宰相とロダンさんはうやうやしく頭を下げていた。
「宰相とロッソ男爵も楽にせよ。さて、イサナよ。余は貴様の口から何を企んでいたか直接聞きたいのだがなぁ。」
レディアは俺たちを座らせると一方的に肩を組み顔をすぐそばまで持ってきて俺の耳元で言った。
美人にこんな近距離に来られると緊張するものだが、今感じてるのはどちらかというと恐怖だった。
「公王陛下にあらせられましては、「堅い、堅いぞイサナ。貴様と余の仲ではないか。いつも通りで構わぬ」
「いや、でも、不敬罪的な何かが…」
「そんなものは余が良いと言ったら良いのだ。宰相も良いな、余とイサナの間に不敬は存在せぬと。」
「承知つかまつりましてございます。」
宰相の方を見ると頷いてくれたので不敬罪は無いのだろう。
俺はこれまで説明したことを改めてレディアにもした、ガチガチに縮こまった状態で。
「王都を買うぐらいの品々を持ってきていたが本命はこっちだったとはな。荒野の連中もオオイリ商店の連中も誰も口にしなかったから気付きもしなかったな。全く、貴様らは国を買うつもりだったのか?」
何とも答え辛く適当に愛想笑いをしてかわすとレディアは宰相とロダンさんの方に振り返った。
「改めて確認したいがロッソ商会は買い取る意思は無しで良いのだな?」
「その通りでございます。」
「では、問題はコチラの払い件だけだな。イサナ、小霊銀貨1枚で良いか?」
「陛下!それは…」
「宰相もわかっているだろ、この紙の価値が。」
「それは承知しておりますが国家予算数年分を支払うとなると反王家勢力が騒ぎ始めますぞ。」
「別に気にすることでもあるまい。いつも通り狂王の戯言としておけば良い。」
「しかし、それでは…」
「あぁ~そのぅ、一括が無理なら分割払いでもいいですよ。」
レディアと宰相の話し合いが終わりそうにないので無理やりさえぎって分割払いを提案する。
極論を言えばこっちは売れてしまえば良いのだ。
こっちの狙いこの紙を高値で買わせてこの国と荒地の交易のスタートしようとする気にさせる事であってこの紙が売れずに交易も始まらないというのが一番マズい。
だからこそ支払いで揉めるぐらいならこっちからとっとと譲歩する。
「イサナがそういうのであれば構わないが本当に良いのか?」
「別にいいよ。逆に支払い能力が無いのに一括払いをされても困るしそれなら払える金額で分割払いしれくれた方が安心できる。」
「払おうと思えば国庫を空にでもすれば出来るがイサナがそう言うのであれば甘えさせて貰おう。ただ、甘えてばかりではこの国のメンツに関わるからな、宰相良き案は無いか?」
「では、交易が始まってからの税の一部を彼が死ぬまで払うと言うのはいかかでしょうか。」
「よし、それで行こう。では、商人ギルドに行って早速手続きと行くか。」
レディアを先頭に宰相とロダンさんが続くが俺はずっと気になっていた事をロダンさんに聞いた。
「ロダンさん、今更ですけど霊銀小貨ってどれぐらいの価値ですか?」
「ん?あぁ、普通の商店では扱わない額なので普通は知らないですな。大金貨の1つ上となればわかりますかな?」
えぇ~と、この国の高価は金銀銅の3種類で各大中小があったな。
小金貨が俺の見立てでは元の世界の100万だから
10億!!!
いやいや、宝くじだってそんなに行かねぇよ!
え、えぇぇ…
ちょっと頭が追い付いてこないわ
「…兄弟よ、思ってた以上に大事になって来たな。」
「いや、ほんと、全く持ってその通りだわ。」
・・・
・・
・
未だに現実味が無い状態で商人ギルドに到着する。
5人で中に入ると元々いた人たちの目線が宰相とロダンさんに集まり一気にざわつき始める。
直ぐにギルドマスターを名乗る老年の男性が現れて俺たちは奥の個室に案内された。
ロダンさんが慣れた様子で分割払いの手続きをしたいと言うといろいろな書類やら道具やらが運ばれて来た。
何だこの水晶板みたいな道具、相変わらずマジックアイテムは見ただけでは良く分からないな。
そして、ロダンさんに言われるがままの席に着くとギルドマスターはかなり驚いた表情をした。
席順は俺とガンテツが隣り合ってテーブルをはさんでレディアと宰相、そして俺たちの間でテーブルの側面の所にロダンさんとギルドマスターが座っていた、仲介人とか見届け人のポジションなのだろう。
出て来た色々な書類をチェックしながらサインをして行く霊銀小貨の支払いは50年払いにしてもらった。
年間
そして、交易での税の1割が俺に支払われる事になった。
簡単に言うと遊んで暮らせる状態になったわけだ。
その後、サインした書類は水晶板の上に置かれその下に俺のギルドカードを置くと水晶板から光が出てきて俺のギルドカードに収縮するような形で光が集まっていった。
これは水晶板の上に置かれた書類の情報をギルドカードに書き込んでいて他の水晶板で確認できるようになるらしい。
凄いなファンタジー技術、たまにえげつない位尖った魔法技術が出てくるな。
光が収まると茶色ベースだった俺のギルドカードは黒ベースで金色の文字で書かれたカードに代わっていた。
…なんか厳ついな。
「ロッソ様、彼は一体何者なのでしょうか…」
「我ら商人の期待の星ですかな。」
ギルドマスターの呟きにそう返すロダンさんの言葉が聞こえて来たのでちょっと照れる。
「諸々無視してブラックカードとは流石はイサナだな。いつも通りやることが派手だ。」
「ブラックカードを持つ行商人なんて聞いたこともありませぬ。」
「良く分からんが褒められておるぞ兄弟。」
「ホントに良く分からんが喜んでいいんだよな?これは厄介事を呼び寄せる色じゃないよな。」
褒められているっぽいけど今の俺には不吉カラーにしか見えないんだけどなぁ…
何はともあれ第一目標である条約の売り払いは出来たので良しとしておこう。
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