オオイリ商店珍道中・パレードと付き添う人々

「イサナくんから見て売れそうなのあるかな?」

「ガンテツさんはこの剣をどう思います?」

「なるほど。公都ではそのような物が流行っているのですか。」

「ウロコってよく見るとキレイねぇ…」

「巨人ってホントにいるんだなぁ…」


学園都市まで残すところ3分の1ぐらいになったのだが俺たちは多くの同行者たちと一緒に進んでいた。

どうやら俺たちが『異種族の秘宝を運んでる』とか『異種族の奴隷を引き連れてる』とか根も葉もない噂がいろんな所に飛び交っていたようで公国の中央部に入ったぐらいからいろんな人が俺たちの所にやってきた、賊やら、商人やら、自称貴族の使いやら。

この3種類の中で一番対処が楽だったのは賊だった。

なにせヴィオラとかレディアとか俺以外は皆血気盛んだからね襲ってきた奴を返り討ちにしてお終いだ。

逆に商人とか貴族の使いとかのなんとまぁ、めんどくさい事か。

これ買えあれ売れは当たり前、挙句には傭兵を雇って奪い取ろうとするしもう賊と変わらない連中もいた。

それを上回るのが貴族の使い達だった。

はした金で買い叩こうとするのは当たり前、献上しろって言ってきた奴もいるしついにはレディアすら知らない貴族の名前を使った本当に自称貴族の使いが現れたぐらいだった。

そういえば無茶な事を言った貴族の使い達の名前をレディアが全員分書き留めていたが何に使うんだろうか。


まぁ、そんな無茶苦茶な連中は少数であったが目に付いてしまうのは仕方がないし気に留めるのもアホくさいのでとっとと忘れるに限る、それに勿論ながら常識的な付き合い方をしてくれる人は非常に多くいた。

聞いたことはあっても見た事無い種族が自分たちの町の近くを通っていくんだからどこに行ってもお祭り騒ぎになる。

北部いなかみたいな人が密集していない町だと大した問題にはならないが国の中央部になると人が多くなり町が混乱するのは目に見えているので事前に告知や兵の配備をして俺たちを歓迎してくれた。

歓迎されるとこちらも対応するしかないので普段よりも遅い速度で馬車を進めたり馬車の上に板を置いてそこにガンテツやリーサを載せたりした。

一番の人気はサイクロプスの2人だ。

元の世界の象とか大型の生き物の様にやっぱりおっきいのは人気者になる傾向があるのだろうか。

最初は多くの人に見られることに戸惑っていた彼らだが何度も経験して慣れてきたのだろうか胸を張って堂々と歩き観客に向けて手を振る余裕すら出てきている。

そして彼らがその大きな手を振るとそれに応えるように大きな歓声があがるのだ。


そんな感じでほぼパレード状態になっている俺たちだがそんな俺たちを良い意味で利用しているつわもの達もいる。

その1つが各町で店を営んでいる商魂たくましい人達だ。

俺たちを一目見ようと集まる人たち対して露店を出したりしていろいろな物を売っている。

この世界の商業はまだまだ発展途上で俺やロダンさんみたいに仕入、販売を専門に行っている商人は意外と少ない。

大体は自分たちで作った物を売るといった製造、販売を行う農家兼任商人や職人兼任商人がほとんだ。

要するに何が言いたいかというと露店の品は出来立てに近い物を売っている事が非常に多いのだ、若干クセがあるが出来たてのパンは世界が変わっても美味い。


そして、俺たちを利用するもう1つの人たちは出稼ぎの商人達だ。

大半が隣町までや隣の隣の町ぐらいだが鮮度に関係ない物を扱う人たちは学園都市まで同行したいと言っている。

なにせ俺たちの行く先々には治安維持のための兵が配置されていることが多いという事はそれだけ賊が出難いわけだ。

護衛を雇う金が無いのか惜しいのか分からないが少なくとも普段よりは安上がりで行けると見込んで多くの商人が俺たちの後ろをゾロゾロと付いてきている。

武器や防具、衣服に、雑貨、果ては古本等の多くの職人商人が集まったキャラバンと化しており休憩時間にはいろいろな話が聞けるのでかなり楽しい。

ガンテツに至っては武具職人の馬車に移って移動中も話をしに行ってるぐらいだ。


「見事な光景だなイサナよ。余も大市の期間でない時期にこれ程商人が集まるのを見たことが無いぞ。」


「勝手についてくる商人が現れるのは想定してたけどこんなキャラバンになるのは正直想定外だったけどな。ところで大市って何?」


「年に1度公都で開かれる祭りの事だ。国中から山の様に商人が集まって来るのだ。」


「なるほど。道が良くなれば流通が良くなるから年に数回出来る様になるかもしれないぞ。」


「ほう、それほど変わるのか?」


「俺はそう思うぞ。馬車のサイズは道に即した物になるからな。悪路だと移動時間が長くなってしまうし馬車が転倒しやすいからどうしても積載量が少ないサイズになるしだろ。その分、原料から製造品まで一度に運べる分が少ないわけだ。それが道が良くなって流通が良くなれば確実に移動時間は短縮されるし馬車のサイズアップ出来るかもしれない。そうなったら製造能力は増えるが製造能力が増えるという事は在庫も増えるという事だ。その在庫の消費先を増やさなければ職人も商人も国も成長できないぞ。そうなったら必然的に大市の回数も増やす事になるだろ。」


「一口に道といっても広い視野で考えて行けばそれほど変わるか…貴様は本当に何者だ?」


「見ての通りの子供店長だぞ。まぁ、生まれと育ちはこの国では無いけどな」


「そうだろうな。貴様の様な子供がおれば嫌でも余の耳に届くであろうからな。学園都市で一段落ついたら余の御用商人にならんか?」


「お断りします。俺は今もこれからも勝手気ままな行商人で行くからな。」


「その答えは聞かなかった事にしておいてやるから余の元に来たくなればいつでも言うが良い。」


そういうとレディアは俺の元を離れて行った。

レディアの爵位は聞いて無いが話し方からして高位の貴族なのは間違いないからなぁ。

本気で勝手気ままな行商人ライフを送りたかったのにレディアやら宰相やらに何で出会ってしまったんだろうか。

変な問題に巻き込まれるような出会いがこれ以上増えないように今度神様達にお祈りしておこうかな。

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