外に向けて

荒地での商品開発も終了

観光事業の準備もOK。

浄化漏れも無し。


完璧だ、これで荒地での下準備も完了。

そろそろ打って出る時が来たな。


「何を暗がりでニヤニヤしておる。かなり怪しいぞ。」


「怪しいとは失礼な奴だな。レディアこそ俺に何の用だ?」


視線を予定表からレディアに向けると普段と違う姿の美女がいて一瞬息をするのも忘れた。

レディアが来ていたのは俺がデザイン的に問題視していたリザード族の最後の商品であるチャイナドレスだった。

この国のドレスは布製のスカートに膨らみがあるフワッとした形で淑女が足を見せるのは良くないとされる。

それ故にボディラインが良く分かるようなデザインは貴族たちの様な上位の人たちには存在していない。

だからこそデザインだけリザード族に伝えて世に出すタイミングを計っていたのだが前回工房に案内したときにレディアに見せると思いのほか気に入ったようで作って貰っていたのだがそれが完成したので見せに来たようだ。

革製故にどうしてもボディラインが強調されるようなデザインだが元の世界のモデルの様なスタイルのレディアにとっては何ら問題は無いようだ。

紺色の革は独特の光沢を放ち艶めかしい魅力がありながらも要所要所に散りばめられた金属箔ラメが上品さを醸し出している。


「どうだ店長。よくできているだろう。余もこれ程の品になるとは思ってもいなかったぞ。このドレスが世に出ればますますこの地域を無視できなくなるな。」


「あ、ああ。そうだな。俺もそんな風に仕上がって来るとは思ってもいなかった。正直思ってた以上にインパクトがあるな。」


「そうであろう、そうであろう。それに店長が懸念していたスリットもちゃんと布が当てられているから問題は無かったぞ。」


そういってレディアは片足を一歩前にだした。

フワリとはいかないまでもスリットの辺りの動きに目が行く。

レディアの言った通りあて布があるおかげで足が見える事は無いにせもそこはかとない魅力をそこに感じる、これがチラリズムと言う奴か。


「…俺は恐ろしい物を生み出してしまったのかも知れない。」


「ククク…そうだな。いつかこの形のドレスが主流になるかと思うと恐ろしさもあるな。ところでこのドレスに名前はあるのか?」


「名前?ああ、まだ広める気が無かったからつけて無かったな。チャイ…これはダメだな全く意味が伝わらないし。レザードレスはそのまま過ぎるし…リザードドレスはアレだなリザード族は着ている訳では無いし…えぇ~とそうだな…ドラゴンドレス… そうだ、ドラゴンドレスだ。そいつはドラゴンドレスだ!」


インパクトを求めてドラゴンドレスにしよう。

リザード族はドラゴンの眷属だし問題は無いだろう、多分。


「ドラゴンドレスか、良い名だな。淑女の服でありながらドラゴンという荒々しさを入れるその気概が気に入ったぞ。これまでの同じようなデザインをしていた服屋はこの名の通りドラゴンに恐れると良い。」


ククク…と笑うリディアにドン引きしたもののデザイン性を重視する品と言うのは伝統を受けながらも独自性を出さないと生き残れないのは真理だと思う。

荒地の品が起爆剤となって独自性やデザイン性が育っていくのであれば商人としてはありがたい物ではあるけどな。


「とりあえず店長に見せれて余は満足したので着替えてくる。そうそう、時間があったら話がしたいと長たちが言っていたぞ。後で顔を出してやれ。」


レディアは満足げに笑いながら自分の部屋に戻っていった。

俺も片づけたら向かうとするか。


・・・

・・


いつもの話し合いの場所に移動すると既に各種族の長たちは集まっており何か相談していたようだ。

俺が近づいて来たことに気づくと座れ座れと笑みを浮かべながら言うので遠慮なく座ることにする。


「待たせてしまったようですみません。それで話と言うのは?」


「義兄弟と話し合いながらワシらもいろいろ用意したがそれも一段落ついたと思ってな。そろそろ外にでても良い時なんじゃないかと思ってな。」


「実は俺もそう思ってた所なんだ。ここで出来る準備はこれ以上無いからな。あとはニンゲンの国を巻き込んで調整やらをするべきだってな。」


「とうとう、出発の時期なんだね。実はこっちもいつでも出れるように準備は整えていたのさ。内訳はサイクロプスの男女1組、リザード族からはリーサ、ドワーフ族からはガンテツ殿を派遣するよ。」


「リザード族とドワーフに関しては異論は無いがサイクロプスの男女は大丈夫か?正直に言うとあまりいい見られ方をしない可能性のほうが高いぞ。」


「んだぁ。それも承知の上だぁよ。それでもサイクロプスを出さない訳にはいかないだぁよ。戦いも初撃での奇襲が一番効くだぁよ。」


「そこまで言うのであればこちらとしてはとやかく言うつもりは無い。では、3日後を出発の目安に動くということでいいだろうか?」


その提案に3人とも反対は無かったので解散して俺たちは出発の準備に入った。

それから出発までの3日間は準備でかなり忙しかった。

一緒に行くメンバーとの打ち合わせや持っていく品物の選定、特に学園都市までのルートはストンズ子爵とカービン子爵が新設中の道を通るのは決まっていたが問題はそのルートを俺もヴィオラも知らないと分かったときはかなり焦ったがまさかレディアが知っていた時は驚いた。


あと、一番面白かったのは新型馬車のお披露目だったな。

品物や食料、その他日用品など荷物は基本的に俺のカバンに収納するつもりだったがその時にサイクロプスの荷物で問題が出た。

なにせ彼らように作られたものはデカい、カバンに入れるときは問題は無かったが出すときに問題があったのだ。

どんな問題かというと大きすぎて俺が彼らに渡せないという問題が。

常にそばにいれば問題は無いのかもしれないがそういうわけにもいかないのでサイクロプスの荷物に関しては彼らにもって貰う事になりその荷物を今の馬車に積むことになったのだ。

今の馬車をサイクロプスが曳けるように改良することになりその時に神界工房産のオーバースペック馬車を準備が終わって手の空いていたメイちゃんとヴィオラとレディアに見せることになった。


「…というわけでこれが俺たちの新戦力のスゴイ馬車だ。前回の馬車よりかなり大型だが悪路もスイスイ、振動もかなり少ない。ちなみにこの馬車はどうやって作られてるのとかドコで手に入れたとかは聞くな。俺も答えられないからな。」


俺の出した新型馬車に三者三様の驚きを見せる。

うん、うんいきなりこんなデカい馬車が出て着たら驚くわな。

俺が逆の立場なら絶対驚くもしくは頭を抱えるかもしれない、今のヴィオラ見たいに。


「あ~主。これはやはりあの方々神々からと言う事でいいのかな?」


「おう、そのトップの御方グランフィリア様からだ。ちなみに素材についても聞くな。俺は戦争の引き金を引きたくないからな。」


「もし、余がこの馬車を欲しいと言えばどれほどの価値になる?」


「価値というのならお前の背中の両手剣神器ぐらいだな。まぁどれだけ言われても渡さんがな。」


「フッハッハ…そう言われると流石の余も強くは出れんな。しかし、とてもじゃないがまともな馬車の価値ではないな。本当に何で出来ているのだ?」


「だから聞くな。俺だって怖くて最後まで聞いてないんだよ…」


そんな一悶着もありつつもとうとう出発の日になった。


俺たちの馬車の周りにはリザード、ドワーフ、サイクロプスが大勢集まっていた。

馬車の中には俺を始め、ヴィオラにメイちゃん、レディア、リーサが座り外には荷車に改造された馬車を曳いたサイクロプスの男女のペアが準備をしていた。


「店長さん、ガンテツ殿。交渉は上手くいかなくてもいいから体には気を付けて行ってくるんだよ。」

「んだぁ。交流が出来なくなっても問題ないだぁよ。これまでと変わらず生きていくだけだぁ。」


「ガッハッハ、二人ともそんな心配はするな。ワシと義兄弟がおるんじゃ。絶対首を縦に振らせてやるわい。」

「そうそう、むしろこの商品の価値が解らない様なら付き合う必要なんて逆にないってことだよ。」


2人から言葉を貰った後に馬車の周囲の人だかりを遠ざかる。

周りの安全を確認した後俺は大きく息を吸った後あらん限りの声を上げた。


「出発!!!」


3種族の歓声とここに来た時よりも晴れ渡る空の下で俺たちは学園都市に向けて進みだしたのだった。

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