準備万端も奇襲を受けて全てご破算
「あ~、アレか確かにいるな。」
砂塵除けのマントを身に着け目が覚めるよう様な赤い
それを俺とヴィオラとメイちゃんの三人は気取られないようにガンドラダ要塞から見下ろしていた。
どうしてそんなことをしているかというと少し前にサイクロプスから報告があったからだ。
「オオイリ商店を訪ねて来た」と言った女が荒地の入り口に来たと。
・・・
・・
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ガンテツ、ダンテスが朝から仕事をせずに呑んでいるが奥さんたちにバレて叱られているところをこっそり抜け出した俺は当てもなく集落をぶらぶらしていた。
その時にサイクロプスがやって来て言ったのだ。
「オオイリ商店を訪ねて来たニンゲンが来て対処に困っている」と
暇を持て余していたので出向く事にしたのだが思ってる以上に厄介な相手とはこの時は思ってもいなかった。
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「ヴィオラ、メイちゃん。何があってもあの女と戦うなよ。」
問題の女に会うためにガンドラダ要塞を降りていく時に俺は2人に話しかけた。
「それはどういう事かな?」
「チラッとしか見えなかったからちゃんと【目利き】出来なかったがアイツの背負ってた剣はヤバいヤツだ。イイ方にヤバい感じがしたから多分聖剣とかそんな類のな。」
俺自身もいろいろ見て来たためか【目利き】を使わなくても直感でざっくりとならそういうのが解る様になってきた。
だからと言って役立つかどうかは別の問題ではあるが…
「それは…確かに厳しいがもし向こうが剣を抜いてきたら容赦はしないよ。だってボクは主の護衛だからね。」
「そのとおり!相手がどのような名刀を持っていても戦う前に退くのは鬼の名折れです。戦うとなったら身命を賭して御守りします。」
「…全く頼もしい事だよ。」
力強い2人の返事を聞いて俺は件の女の前に立った。
何も話してないのに凄い圧を感じる。
威厳的な物から来るんだと思うがだけど俺にはまだぬるい。
だてに魔剣とか神器とか神様とか人外相手に関わってきてないぜ。
「ほう、余を前にして一歩も引か無い所か目を見る胆力があるとは見事である。貴様がオオイリ商店の店主で間違いないな。」
「その通りでございますお嬢様。自分がオオイリ商店の店主、イサナでございます。」
さっきの威圧感はどこへやらケラケラと笑う女に返答する。
俺が言うのもあれだけどちょっと自由人すぎないか、この人。
「うむうむ、話しに聞いていた通り本当に見た目は子供であるな。だが幼くともその才と知は見事である。だから余のものになれ、イサナ。」
「とても名誉なご提案でありますがこちらは卑しいで出の者。自分の様な者がお嬢様の様な高貴な方の邸宅に出入りしていてはお嬢様への不信になりますの辞退させて頂きます。」
『余』とか言ってるから多分高位な家なんだろうし適当にゴマすってお断りしとけば問題無いだろう。
「ふむ、ならば余がオオイリ商店に入ろう。それで問題あるまい。」
「…は?」
何言ってんだコイツ、マジで何言ってんだコイツ…
「こう見えて旅慣れておるからな護衛でも何でもするぞ。」
「お嬢様にそのような事はさせるわけには参りませんよ。それにうちには優秀な護衛が2人もおりますので。」
「では、客引きだな。余が声をかければ100人でも1000人でも集まるからな余に任せるがよい。」
「それも流石に…」
「ああ、客引きであれば背中のコイツが不味いのか。では、預かっておいてくれ。」
女は両手剣を軽々しく片手で抜いて放り投げた。
空中で回転していた剣は俺の目の前で見事に地面に突き刺さった。
ヤバいと思ってた剣が目の前に来たことで俺の【目利き】が発動する。
俺がヤバいと思ってた剣は思ってた以上にヤヴァい代物だった。
『主、とりあえず入れたらどうだい?たしかに旅慣れている様だけどここはかなり過酷な土地だ。お貴族様なら数日で根を上げるよ。武器を取り上げてしまえばボクとメイで主を守れる。』
【目利き】の結果に震えていた俺にヴィオラが耳打ちをする。
正直コイツは退く様子が無いしヴィオラの考えに乗るか。
使える人材であればいいけどなぁ…
「分かりました。オオイリ商店に入るのを許可しましょう。ただし、貴女は店員で部下になりますのでそのように扱います。それを不敬だなんだと言うのは無しですよ。」
「構わぬぞ。平時であれば不敬だが今の余はもうオオイリ商店の店員だ。何も言うまい。それで何処で何を売るのだ?ココに来たという事は異種族から仕入れることが出来たのか?さぁ、余に仕事を教えるがよい。」
「悪いが今のオオイリ商店は休業中だ。商品開発に忙しくてそれどころじゃないからな。」
「商品開発?なぜ商人が商品開発を行う?」
「何故って言われても売れる物を用意するのは当たり前の事だろう。既存の物で売り辛いのなら改良するし売れると思った物を思いついたらとりあえず試作品ぐらいは作るだろう?」
「商人の仕事を仕入れて売るだけであろうに。やはり貴様は面白い奴だ余のものになれ。」
「それは絶対ごめんこうむる。とりあえずお前の最初の仕事はそこでシクシク泣いてるソイツを持って馬車に乗り込むことだ。」
「ほう、コレの事を知っていたのか。」
「知らんよそんな物は。ただ、見たら解るそれだけの事だ。ほら早く乗れ!…ところでお前名前は?」
「なるほど。なかなか面白い力を持っているようだなますます気に入ったぞ。ちなみに余の事はレディアと呼ぶが良い。」
レディアと名乗った女は地面に刺さったのをを引き抜いて慣れた手つきで鞘に納めると馬車に乗っていった。
それを確認してからヴィオラとメイちゃんが俺の元に寄って来た。
「主様よろしいのですか?あの者に武器を持たせて」
「メイの言う通りだどうして返したんだい?」
「あの剣がただの剣なら俺も回収したがあの剣は神器だったんだよ…」
ため息交じりに言った俺の言葉にギョッとする2人。
なんせ戦闘用でない神器を持っただけ大慌てしたことがあったから仕方ない事だろう。
【神器・守りしもの】
・戦神が下賜した神器
・使用の求める大きさに変わる能力を有しており現在の見た目は肉厚な両刃の両手剣ではあるが種類的には防具である
・片手に持ち敵の武器を払い状況に応じ不可視の防壁を展開するのが本来の使用用途である
・切れ味はさほど良くない
両手剣かと思いきや実際は
切れ味も悪いらしいし本当に防具用なんだろうが人ぐらいの大きさの鉄塊で殴られたら余裕で死ぬからなぁ。
何はともあれ厄介者を拾ってしまったのだった。
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