戦うためにはまず協力して…
「どうも、どうも、わざわざ集まって貰ってすいませんね。」
「店長さんの頼みだし今は落ち着いてるからね。気にしなくて良いよ。」
ババ様の言葉に「そうだ、そうだ」と頷いてくれているのがガンテツ、ダンテスの兄弟にサイクロプスの大神官だった。
それ以外にもリーサとネフェルにヴィオラとメイちゃんと俺と言った面々が集まっている。
今日は俺が頼んで皆に集まって貰っていた。
「先日の戦いから数日立ちまして3種族の関係は非常に友好。そして、互いに関わりあうことで今まで以上に活気に包まれております。これを機に3種族の同盟を明文化してはどうかと思って集まって貰ったのです。」
俺は今まで温めていて荒地経済圏の設立と隣国との通商条約を結ばせる為にまず荒野の住人達の同盟を結ばせる事にした。
「そうじゃな。ワシらには浄化の儀式が始まったらリザード族に集まるように伝わっておったがリザード族は知らんかった様じゃしサイクロプス達が来ることも知らんかったからな。何かしらに残しておいた方がいいじゃろうな。」
「ガンテツさんの言う通りだね。今回2種族が集まってくれたのは運が良かったとしか言いようが無いからねぇ。口伝えじゃなく何かに刻んでいればこちらも安心できるし準備も出来るしねぇ。」
「んだな。いくら怨念が消えたからといってこの土地が過酷な土地なのは変わらないだぁよ。浄化の儀式の事だけでなくいろいろ取り決めて協力して行く必要があるだぁよ。」
よしよし、ここまでは予定通り順調だな。
こうやって同盟を結ぶことに慣れれば他の種族と結ぶ時に戸惑い難くなるはず。
「ところで兄弟、本題はこれじゃねぇんだろ?次は何を企んでるんだ。」
「そうそう、店長さんは二手三手先を計画して動くからね。あまり無茶でない頼み事なら聞くよ。」
「んだ。サイクロプスの目よりも遥か先を見てる商人さんの事だぁ。それを教えて欲しいだぁよ。」
「え~と、そんなに何か企んでる様に見えるかな?」
「見えるな」
「見えるね」
「見えるだ」
ヴィオラ達の方を見たらうんうんと頷いていた。
チクショー、なんだか納得いかない。
「そこまで言うのなら全部話しましょう。俺が画策していたのはこの荒地と隣のニンゲンの国との貿易経路作ることです。そして、ここの腕利きの職人達が作った逸品を世界に知らしめるのです。その為にまずこの荒地だけの同盟を作って物々交換でもいいので経済というのを何となく実感してもらってから貿易の話しに繋げようかなって思ってたんだけどなぁ~」
最後の方は若干投げやりになったが俺の計画をとりあえず話した。
俺の話を聞いて各種族の代表は少し考えたようだったがすぐに返事をくれた。
「別に貿易してもいいんじゃねぇか?」
「そんな簡単に結論を出していいのか!付き合いたくないから目利きさせてたんじゃないか?」
「あれは、武具を求めてきた奴にだけしてた試験じゃ。日用品とか欲しがった奴には普通に売ってやってたぞ。まぁ、そもそも数年に一人こればいい方じゃがな。」
「リザード族は基本的に種族で全部足りてたからねぇ。たまにすぐ近くの街に余ったのを売りに行ったりはしてたからねぇ。」
「サイクロプスは関りが無かっただぁよ。ただそれは、サイズが合わないとか使いようが無いからだぁね。使えそうなものがあれば欲しいだぁよ。」
「とりあえず皆が乗り気で嬉しいがもうちょっと考えてみて欲しい。貿易が始まるといろんなヒトが来るから治安も悪くなるかもしれないしそのヒトたちの宿を建てたり
従業員育成したりいろいろ大変だぞ?」
思いついた限りのデメリットを上げていくがなんで俺が反対派に回ってるんだろうか…
そんな俺の肩にガンテツが手を置いて俺の目をまっすぐ見据えて言った。
「兄弟がワシらの事を心配して言ってくれとるのは良く分かっとる。じゃがな、ワシらがこう言った考えを持つ事を出来るようになったのも兄弟のおかげじゃ。火の山の麓で生まれて火の山の麓で死んでいく、すぐ隣の荒地の事すら知らずにな。ワシはそれが当然じゃと思っとったから疑問にも思わんかった。そんな時にリザード族の嬢ちゃんと兄弟がやって来た。兄弟は新たな技術を嬢ちゃんは新たな種族をワシらに教えてくれた。その2つは一瞬のうちにワシらにとって切っても切り離せない物になったんじゃよ。その時に気づいたんじゃよ、鉄を叩き火の山を見上げながら酒を飲むだけがワシらドワーフの生き方では無い。硬いだけの刃というのは案外使いにくい、若干の柔らかさを持った刃が素晴らしい物だと知っておったのにドワーフ自身がそうなっておらんかったとな。」
「変化があったのはドワーフ達だけじゃないよ。リザード族だって大きく変えられたさ。リザード族はこの荒地の守り手としての自負があった。だからこそいかに日差しが強くともラザードに乗って荒野を見回り続けてきたのさ。だからこそだろうね、他者に頼るという簡単な事を忘れていたのわ。もし、店長さんが来てくれなかったらまだ塩の祠は埋まったままだったろうしもしかしたら呪いで全滅していたかも知れない。リーサが店長さんに声をかけたのはたまたまだったかも知れない。でもそのたまたまがリザード族を救い、忘れていた簡単な事を思い出させてくれたし、何よりもドラゴンに連なるものとして誇りを持ってきてくれたさ。外から来たヒトのせいで治安が悪くなるなんて起きないさ。なんせリザード族がこの荒地を見回ってる限り無礼な事はさせないさ。」
「サイクロプスもすっごく感謝してるだぁよ。サイクロプス達は体は誰よりも大きいけど基本的に憶病だぁよ。だからこそ種族皆で見張りをしてるだ。そして、リザード族が困ってたことも見てて分かってたけど助けに行く勇気が出なかっただぁよ。そんな憶病者の背中を押してくれたのは間違いなく店長さんだぁよ。店長さん達が来てくれなかったらサイクロプス達は自分の足でリザード族のもとには行けなかっただろうし見殺しにしてたかも知れないだぁ。そんな人でなしにならなくて済んだのは店長さんのおかげだぁよ。だから今度はこっちから勇気を出す場面なんだぁよ。店長さんにサイクロプスの勇気を見て貰いたいだぁ。」
そこまで言われたら俺に反対する気は無い。
というか元々は俺が言い始めたことだしな。
俺が出来るのは貿易が互いに損しないように手伝ってあげる事だな。
「みんなの気持ちは分かった。俺ももう反対意見は出さない。とは言ってもいきなり貿易しましょうって言うのは無しだ。貿易してあげてもいいよってちょっと強気で行くべきだと思う。実際にちゃんと利益を読めるなら話に乗ってくるはずだ。」
「話に乗ってこんかったらどうするんじゃ?」
「そうなったら諦めるしかないな。それにちゃんとした道がまだ出来てないしな。ここの品は重量物が多くなるのが目に見えてるから舗装してない道だとキツイんだよなぁ。」
ここに来た時の道を思い出しながらため息交じりで話す。
馬車にパンパンに詰めた状態であのガタガタの道を行けるのかどうかかなり疑問である。
「貿易のちゃんとした
俺が聞くと代表の3人は大きく頷いてくれた。
「ならとりあえず話し合ってもいいよの文面をまとめよう。その後に貿易向けの商品を売るのに大事な物を1つ決めたい物があるんだ。」
「売るのに大事な物なんて何があるんだい?」
ババ様の質問に俺は含み笑いをした後に答えた。
「フフフ…それはズバリ、ブランドだ!!」
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