1000年の終戦
月とかがり火に照らされたドラゴンは間違いなく大ジジ様が変身したドラゴンだ。
もしかしたら逆にドラゴンが大ジジ様に化けてたのかも知れないがどちらにしろ巨大なドラゴンが俺たちの前に鎮座していた。
この荒地と同じ色の黄土色の体躯に一対の大きな翼、長い長いヒゲをアゴの下に蓄えたドラゴンは優しそうな眼差しで一同を見回すとその大きな口から出たとは思えないほど静かに話し始めた。
「眷族達よ、よくぞ
深々と頭を下げるドラゴンに慌てる俺達。
「お、大ジジ様はずっとドラゴンだったノカ!?」
対処に迷ったリーサが早口でそう言った。
周りからはソレは無いだろう見たいな視線が彼女を突き刺し、リーサ本人も言ったまま固まっていたが大ジジ様ドラゴンは特に気にもせず答えてくれた。
「そうだとも。この荒野で多くの眷族や同胞達と
今まで遠巻きに見てた2種族はドワーフとサイクロプスの名前が出てくると興味深そうにすこし詰め寄って来た。
「せっかく荒野の3種族が揃っている事ではあるし少し昔話をしようか1000年前の戦いとその後にあったことの話だ。」
懐かしそうに昔を思い浮かべながら大ジジ様は話し始めた、今日に至る経緯を。
・・・
・・
・
皆も知っていると通り1000年前にこの大陸の至る所に突如して
目的はこの世界の強奪と聞いているがところ詳しくは不明といった方が正しいだろう。
だが奴らは間違いなくこの世界の敵だった。
奴らが支配した地域に居た命あるものは全て殺され大地は穢され草木は全て枯れ果てた。
そんな奴らに対抗すべく神もヒトもドラゴンも精霊も妖精もそれこそ野山を駆ける獣すら集まり種族、遺恨、老いも若きも関係なく共に戦った。
多くの神々が傷つき我が同胞含め多くの命が戦い散って行った。
だが散る命だけでなく輝く命も多くいたのも確かだ。
例えばサイクロプス族のガンドラダ、後に霊神と呼ばれる人として生まれ神の座に収まることになる者も多く生まれたのも確かであった時だった。
その激動の時代にこの土地も巻き込まれた。
一つがここにある塩の祠、もう一つが不死鳥が潜む火の山だった。その2か所に
塩の祠の門は非常に大きく凄まじい激戦が繰り広げられ、火の山の門は比較的小さめであったが塩の祠の本隊と合流されると戦況的に不利になるので早急に潰すように言われていた。
だが火の山は1頭の英雄のおかげで
そう、それだ、今リーサの横に置かれている炎の誓い、
彼の働きのおかげで我々は全戦力を敵の本体にぶつける事が出来ることが出来たのだから。
なにはともあれ我々は激戦を続け何とか敵本隊を殲滅し残りは門を潰すだけの段階になったのだがそこで問題が起きた。
門を潰す手段が無かったのだ。
神々の力を持っても潰せないほどの巨大な門をどうするかという問題が出た時に同胞の1人が言ったのだ。
「先の戦いでこの身は傷つき間もなくこの命は尽きるだろう。ならばこの身を門の封印の楔にして欲しい」
グランフィリア様や
そして多くの同胞が門に群がり最後の力を持って門の魔力を吸い上げた後に何千年たっても変化しない様に塩にその身を変えたのだ。
ただ、1つ誤算があるとすれば封印しようとしたつもりだったが楔側が門の魔力を全て吸い上げたので門を潰せたことだろうな。
その後積みあがった同胞を野ざらしするのは忍びないというとこで地龍王が大地を操り岩で包み今の塩の祠が出来上がったのだ。
これで全てが終わったとこの時は皆が思っていたのだが実際はそうでは無かった。
この魔力がどの様な事を起こすか分からない以上どう対処するかという話になった時に眷族であるリザード族とラミア族が言ったのだ。
「我々がその塩を食べることで処理しましょう。我々の寿命何てたかが知れてます。生まれてから死ぬまで食べ続けてもごくわずかですが末代まで続ければいずれはなくすことが出来るはずです。」
その提案を我々ドラゴンは受け入れることにしたのだ。
そうして荒地に住むリザード族とラミア族は龍屍塩を食べることになり命を削って大地を守ろうとした2種族を守るために守護者としてこの土地に共に住み始めたのだ。
実際の所、最初100年ほどは問題は無かった。
毎日龍屍塩を取り続けても年に一度の浄化の儀式を行えば皆溜まった穢れた魔力は浄化されていた。
だが、少しずつ少しずつおかしくなり始めていた。
例えば巫女の浄化のための炎の試練の時間が長くなっていったりリザード族から
一晩が一日になり三日、五日、七日、十日、一月、とドラゴンとしてそれぐらい眠るのは珍しい事ではないがそれはそれぐらい眠るつもりが無ければ出来ない事だ。
戦後200年近くになった頃には一眠りが1年ほどになっていた。
余りにもおかしいと思い調べて行けば皆が呪われていることが分かったのだ。
何とかして龍屍塩を取ることを止めさせようとしたがこの暑き大地で塩を取らずに生きて行くのは不可能だ。
この辺りに岩塩のとれる地域は無く海から塩を作って運ぼうにもドワーフの集落よりまだ奥地に行かねば海には出れぬ。
あれこれと悩んでうちに時間だけが立っていきワタシも呪いの影響で起きてる時間より寝ている時間の方が長くなってしまっていた。
万策尽きたと思っていた。
もはや滅びを受け入れるだけだと、しかし今日を迎えることが出来た。
皆には感謝しかない、良くぞ今まで戦い続けてくれた。
そしてよくぞ
・
・・
・・・
大ジジ様からの話を皆静かに聞き、終わると皆は勝利を祝ってと再度飲み始めた。
俺はさっきの話で気になった事があったので大ジジ様に寄って声を掛けた。
「大ジジ様、一つ聞きたいのですが
元の世界だと銃を持った騎兵を指すがこのファンタジー世界ではまだ銃の存在を確認で来ての無いので恐らく
この世界のドラゴンは絶対強者なのでドラゴンじゃなくてワイバーンとかかも知れないけどどちらにしろ
<御使い殿は
「リーサ、少しこちらに来てくれないか。」
大ジジ様がリーサを呼ぶと彼女は急いでやって来た。
そんな彼女に大ジジ様は真珠ぐらいの赤い玉を渡した。
「それを噛まずに飲み込みたまえ。時間をかければ皆も出来るようになると思うが祝いの席なのだから1人ぐらい先走ってもよかろう。」
意味深な事をいう大ジジ様をよそにリーサは言われたままに赤い玉を飲み込んだ。
するとリーサは胸を抑え込んだので近寄ろうとするといきなり燃え始めた。
だが、それもほんの数秒の出来事で炎が収まりそこにいたのは全身に髪と同じ赤みの強い茶色の鱗を持ちドラゴンの様な頭部を持つヒトが立っていた。
これはもしかして、
「「「ド、ドラゴンナイトだぁ!!!」」」
リザードマンじゃないの?と思っているとリザード族が歓声を上げながらリーサを包囲した。
どういう事かとババ様に聞こうとしたら目を限界まで見開き涙を流していたので近寄り辛かったのでネフェルに聞いてみた。
「巫女様のあの御姿は古のリザード族の戦士の御姿です。リザード族の血に宿るドラゴンの力を引き出すとなれると言われておりましたが伝承とばかり…ご立派です巫女様…」
とうとうネフェルも感動で泣き始めてしまった。
リーサは最初は戸惑っていたが今はポージングなんかしている。
<
「その呪いの後遺症ってどれぐらいで解けるんです?」
<あの龍輝塩があるので早くて数カ月遅くても数年でしょう。次代に呪いの影響はないでしょうな。>
「そうか、頑張ったかいがあったな。」
この後も宴会は続き朝日が昇る直前リザード族とラミア族の皆が大ジジ様の前に集まって行った。
大ジジ様は荒地の問題が片付いたことを地龍王様に報告に行くらしい。
皆が見守る中大ジジ様は2度3度確かめるように翼を軽く振り次に大きく羽ばたいた。
巨大なドラゴンが浮かんでいく様は圧巻で朝日に向かって飛んでいくのを見えなくなるまで見守ったのだった。
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