炎の試練
ドワーフの所で一泊した俺とリーサは日の出と共に火の山の頂上へと向かっていた。
俺はいつでも全速で逃げれるようにセキトに乗りリーサはいつでも戦えるように【霊具・炎の誓い】を構えているのだが俺たちの準備とは裏腹に何も起きずかなり順調に進めていた。
「・・・なんというか順調すぎるペースだな。」
「ソレについては同感ダ。やはり
十中八九リーサの言ってることが正しいのだろう。
何故なら襲わてはいないが先ほどから常に見られているからだ、この山を住みかとする
真っ赤な体の大きな蜥蜴のような彼らはたまに舌をチロチロ出したりするものの、本当にこちらを見るだけで一切襲ってくるそぶりがない。
はたから見れば不気味かもしれない全く敵意を感じない以上俺たちはあまり気にすることなく進んでこれた。
「
「そうかも知れないナ。野生の魔獣はいろいろとビンカンだからナ。」
そういった話をしつつ俺たちはファイアー・ドレイクに見守られつつ山頂に向かっていった。
荒地地帯の最北端にある火の山は高いうえに非常に暑い。
なにせ至る所に炎の赤い揺らめきが見えるのだからそれはもう非常に暑い。
上に行けば行くほどその揺らめきは多く見えるようになりいくら魔獣に襲われないとはいえますます暑くなる山の熱気にバテ始めたころようやく山頂と思われる場所についた。
「ゴシュジン、どうやらついたようダゾ。」
「そうみたいだけど何もないな…」
山頂に着いたのはいいがそこは平たい広場のようになっているだけで所々白い蒸気を噴き出してる以外は何もなかった。
俺とリーサが辺りを探していると何かに気づいたセキトが声を上げた。
『イサナ殿!上です、空をご覧ください。』
セキトに言われ空を見上げると信じられないものが存在していた。
「太陽が2つある!?」
俺の真上には驚くべきことに太陽が2つあった。
大小2つの太陽のうち小さい方はだんだんと大きくなりもともとあったものより大きくなった頃に俺はその正体に気づいた。
もう一つの太陽は太陽のように燃え盛る火の珠だと、そしてそれが段々と近づいている事に。
俺はセキトに乗って慌てて離れ、リーサは大盾を構えた。
太陽の如き火球は俺たちの上、10mぐらいに滞空すると徐々にその輝きが消えていった。
輝きが消えると正体も解り地に降り立った。
その正体は俺の世界でも古から伝えれてきたファンタジーの代表の一角と言っても過言ではない存在だった。
「
フェニックス、ファンタジーを少しでもかじれば出てくるであろう伝説の生き物。
火の中で死に、生まれ変わる故に不死鳥や火の鳥とも呼ばれる永遠に生きる伝説の存在。
体高は5mぐらいで羽根は胴体に近い部分は金色に輝き翼の真ん中ぐらいにかけて赤くなり真ん中以降は紫になるグラデーションでその美しさに息をするのも忘れたほどだ。
そして、その存在に俺のテンションは暑さも忘れるほど跳ね上がった。
『リザード族が我が試練を受けに来るのはいつ以来か。100年か200年かもっと前か…』
おおぉ、喋った、喋ったよフェニックス!
鳥の鳴き声のように聞こえるが俺が貰った
『それにその武具…懐かしき顔だ。キミは自分で敵を倒せないなら武具になってまでも戦い続ける事を選んだのだな。』
フェニックスは少し目を細め懐かしそうな声で【霊具・炎の誓い】に声をかけた。
【霊具・炎の誓い】はそれに答えるかのように眼孔の炎が明滅した。
「フェニックスはその武具の生前の姿を知ってるのか?」
『勿論知っているとも。ともにこの山で生まれ育った我が親友だからな。…いやまて貴様!なぜ我が言葉が解る!?そもそもその身に纏う神気は一体なんだ!?この瘴気に覆われた地では神々は顕現出来ぬはずだぞ!』
フェニックスは甲高い声を上げ俺に対して最大限の警戒の姿勢を見せた。
「ゴシュジン!ゴシュジン!さっきからフェニックスは何を言ってイル!?どうしてゴシュジンを狙ってイル!?」
フェニックスの警戒の姿勢にリーサが武具を構え臨戦態勢で俺を庇うように前に立った。
『貴様!潔くその正体を話せ!ここは神聖な御山であるぞ。対応によっては我が炎で灰になると思え!』
嘘だろ…俺の一言でこの場が一瞬でカオスになったぞちょっと待って説明するから2人とも落ち着いてくれ。
俺の為に争わないでぇぇ!
・・・
・・
・
なんとか両者を収めたがドッと疲れた。
『状況は解ったがかと言って炎の試練に対して手を抜くことは出来ぬとそのリザード族に伝えよ。それと、あえて貴様が話してなかった部分は後で詳しく聞かせてもらおう。』
フェニックスに言われたことをリーサに伝えると彼女はこくりとうなづき武具を構えなおした。
『リザード族の巫女よ、炎の試練を受ける前に貴様の力を見せてもらおう。
フェニックスは翼を一度羽ばたかせると一瞬で10mぐらいの高さに飛び上がりそこで激しく羽ばたいた。
フェニックスの翼から落ちる燃え盛る羽根は矢の如くリーサに襲い掛かったがリーサが炎の誓いの大盾を構えるとその眼孔には炎が燃え盛りリーサの目の前に薄っすらとした炎の障壁が現れ燃える羽根を吸収していった。
その後も場所を変え数を増やした炎の雨がリーサを襲ったが全て炎の障壁が飲み込んでいった。
炎の雨の熱気は遠く離れた俺もとにさえ今までとは比較にならないぐらい熱くその中心にいるリーサが気になったが彼女はただの雨を防いでいたかの如く平然としていた。
フェニックスもこの攻撃では無意味と悟ったのだろう高々と空に飛びあがると初めて見たときと同じようにその身に炎を纏って太陽の如く煌めくとそのままリーサに向かって突っ込んだ。
対するリーサは大盾を地面に突き刺すと彼女とフェニックスの間に大きな炎の壁を作り出し迎撃の姿勢を見せた。
だが、フェニックスにとって炎の壁は目くらまし程度にしかならないのだろう躊躇なく地面に突き立て大盾ごとリーサに突撃したが大盾は簡単に倒れそこにリーサはいなかった。
そのときのフェニックスの表情は見えなかったが恐らく驚いただろう何せすぐ横から彼女が赤熱した
勿論ながら滑空状態のフェニックスには踏ん張ることなどできずまともに喰らった
俺は離れて見てたおかげで一連の攻防がはっきりと見れた。
フェニックスが突撃の姿勢を見せてリーサが炎の壁で迎撃の様子を見せたのだがそもそもその迎撃がフェイントだった。
炎の壁はフェニックスを倒すべきものでなくただの目隠しに使い彼女は大盾を地面に突き立てるとフェニックスが突撃した時にギリギリ当たらないように盾から離れていたのだった。
その後はフェニックスが盾を構えて待ち構えているであろうリーサに向かって突撃したがそこに彼女はおらず渾身の一撃をまともに喰らったというわけだ。
正直リーサはゴリ押し戦法を使うとばかり思っていたのでかなり意外だった。
というより渡してまともに使ってる時間なんて無いはずなのにいつの間にあれほど見事に炎の誓いを使えるようになっていたのだろうか。
商品に選ばれるというのはこういう事なのかと俺が思っていると一息ついたリーサが満面の笑みでこっちにサムズアップしていた。
『穢れし身で見事である。その力を認めこれより炎の試練を行う。己を失わず還ってくるがよい。』
何処からともなくフェニックスの声が聞こえるとリーサの足元から業火が渦を巻いて彼女を飲み込んだ。
こちらに手を伸ばしていたリーサは一瞬のうちで灰の山になり彼女の持っていた
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