待ってる間のほんの一幕

ガンドラダ要塞で炎の試練を行うために必要な式服を手に入れた俺たちはサイズ直しのためにリザード族の集落に戻っていた。

リーサとネフェルはそのサイズ直しのために職人たちのもとにおり俺たち3人は集落から少し離れた場所に馬車を止めて待っていた。


「主!主!要塞で手に入れたのはあの服だけなのかい?」


「…どういうことだ?」


「どうも、こうもないよ。また前の魔剣みたいに凄い物を手に入れてきたのではないかい?」


「要するに俺が手に入れて来たであろう何かを見てみたいと。」


そういうとヴィオラは力強く頷きメイちゃんは恥ずかしそうに顔を半分ぐらい隠して小さくうなずいた。


「いいかい、主。君は自分自身がぶっ飛んだ物を装備してるし簡単に神々とあってるから気にもとめてないかもしれないけど普通の魔剣すら一生に一度見れるかどうかの品なんだよ。そんな物を見れるタイミングあるのに見ないのは魔術に携わる物の沽券にかかわる。」


「まぁ、見せてやるのは構わないけど魔剣ってのはそんなに珍しい物なのか?冒険者なら魔法のついてる武具ぐらい見たことあるんじゃないか?」


「どうやら主は魔剣と付与道具エンチャントがごっちゃになってるいるね。2つの違いを簡単に言うと付与道具エンチャントは生まれはただの道具で魔剣は生まれながらにして魔剣なんだよ。というのもたとえば切ったら火が出る剣があったとして付与道具エンチャントで作った場合は元は鉄やら銅やらなんでもいいけど既存の剣に火の魔術を後乗せして作るのに対して魔剣は製作時から様々な儀式を行いながら神界にある魔剣の力の1部を降臨させて作るのさ。成功率なんて殆どないけどもし成功したら一族の宝になるのは間違いないね。」


そういえば前に魔剣を取り出したときに王剣がそんなことを言ってたな、力の一部を憑依させることでこれまで顕現してきたって。

ということは正真正銘本物の魔剣だったあの二振りは相当ヤバい奴だったってことだよな…

まぁ、終わったことは仕方ないので考えないことにしよう、いろいろ怖いし。


「とりあえず魔剣と付与道具エンチャントの違いは分かった。お望み通り見せてやるよ。ちなみに今回はリーサの武具だぜ。」


「彼女は戦士だから喜ぶだろうね。それで今回はどんな魔剣だい?」


「魔剣というよりは恐竜だな。ではとくと御覧じろってな!」


カバンを寝かせて(大きすぎて引っ張り出そうとしたらつっかえるので)骨でできた棍棒メイスとトリケラトプスそっくりな大楯を取り出すとあまりの迫力に二人はちょっと引いてた、気持ちは痛いほどわかる。

そういえばコレには【目利き】をしてなかったので二人に説明する前にしておこう。


【霊具・炎の誓い】

・荒野地帯の最北端にある火の山に住んでいた炎帝蜥蜴エンペラー・ドレイクの遺骸で造られた武具一式

歪悪イービルが荒れ地に出現した際に一部が火の山に侵攻し当時存命だった炎帝蜥蜴エンペラー・ドレイクが単騎で殲滅させたがその時の傷が原因で死亡する

・死後、いまだに荒野地帯に歪悪イービルが蔓延っているのを知り神々に自らの遺骸を武具に変え奴らの討ち手に渡るように懇願した為に武具として生まれ変わった。

炎帝蜥蜴エンペラー・ドレイクが認めた持ち主に渡れば棍棒メイスは真っ赤に燃え盛り触れるだけで敵が溶ける程の温度での一撃を放ち大楯は近寄る敵を焼き付くす熱気を纏い炎の魔術なら難なく食らいつくす。

・金銭的価値付けはもちろん不可能。


魔剣ではなく霊具と来たか…まぁ、剣ではないから魔棍とかかと思ったが全く違ったがそもそも霊具ってなんだって話なんだが…


【魔具・聖具・霊具・神具の違い】

・魔具及び聖具は元々持ち主がおりその者の功績やあらゆる想いが積り変化したものでありその積もった物が正よりのものであれば聖具、負よりの物であるなら魔具である

・霊具及び神具は製作者によって区分されており純神、グランフィリアやピオス等が作成したものであり霊具は霊神ガンドラダや工房の神々及び精霊等が作った品のなかでも抜きんでた物が該当する


まさか、【目利き】で解説が来るとは思ってもなかったので少し驚いた。

というかだんだん【目利き】が使いやすくなってる気がするな。

やっぱり使えば使うほどレベルアップ的な事がおきているのだろうか。


「あまりの大きさと異様さに驚いたが相変わらず凄まじい魔力を込めてるね。それで主、これはどういった品物なのかな?」


俺はヴィオラに【目利き】で知った内容を伝えるとかなり驚いていた。

そんなに驚くことがあったか?


「主、この武具が霊具というのは本当かい?」


「本当だぞ。噓偽りなくコレは霊具だけどそれがどうした?」


「それがどうしただって!?君にはこの感動が分からないかね?いいかい、伝わっている魔剣や聖剣は元々は誰かが使っていたから何とか降臨させることが出来るけど霊具は神々から直接下賜されなければ手に入らないし現在ではその存在は伝説やおとぎ話の中でしか語られていないんだよ!?一応、霊具だとして現存するものもあるといわれているがその真贋すらわかってないものばかりだ。魔剣が一生に一度見るかどうかなら霊具は三度生まれ変わっても見れるかどうかわからないような物なんだよ!メイを見たまえ、目に焼き付けようとするどころか拝み倒してるじゃないか!」


ヴィオラに言われてメイちゃんの方をみると確かに手を合わせて拝んでいた。

霊具ってそんなにレアなのか…

どうしよう、実はヴィオラが

後々知って大ダメージを受けるより今知った方が流れで言った方がいいかな。


「なぁヴィオラ…多分お前は知りたくない真実があるんだが聞きたいか?」


「…それは今知っておいた方がいいかい?それとも一生知らない方がいいかい?」


「それは正直わからんが今大ダメージ受けるか今後大ダメージ受けるかの違いだと思う。」


「分かった…今言ってほしい、多分今なら耐えられるはずだ。」


凄まじい決心を決めた顔したヴィオラと目を閉じて何か祈っているようなメイちゃんに俺は衝撃発言をした。


「実はな神具を持ってるんだ。それどころか一度お前に使ったことがある。」


その一言にヒゥと息を吸ってそのままヴィオラが固まりメイちゃんは目を見開いて信じられないような顔でヴィオラを見た。


「【薬神の診察灯】って言ってなストンズ夫人に薬を売るときに使ったんだけど覚えてるか?」


そういって俺は懐中電灯のような【薬神の診察灯】を取り出しその効果を説明し俺の体に光を当てて説明した。

患部を赤くする効果やレントゲンの様に体の内部を移すことが出来るのだが悪いところがないので赤くなることはなかったがレントゲンの様に骨を写し出すと面白そうに見ていた。


「神具だからどんな凄まじいのが出るかと思いきやあふれ出る魔力の威圧感が無くて逆に驚いたよ。いや、効果は凄まじいよ体の中を見るのは初めてだったしね。医者や薬師には間違いなく最高の神具だ。」


「体の弱った人に使うから魔力が漏れない様に作られているのですかね?その、主様。メイもその神具を触ってみてよろしいですか?」


「いいよいいよ、触るだけでなく使ってみればいい。」


神具を渡そうとちょこっとメイちゃんの手に触れた瞬間キャンと可愛い声を上げ慌てて後ろに跳んだ。


「メイどうした!?何かあったのか!?」


「この神具魔力が漏れ出てないですけど中に嵐の様に魔力が渦巻いてますぅ。こんなのずっと持ってたら体の中の魔力がグチャグチャになっちゃいますよぉ。」


涙目になってこたえるメイちゃんの言葉を聞いてヴィオラが恐る恐る触れてみると同じような反応を見せた。


「これが神具…今まで感じたことのない魔力の多さに呑まれるかと思ったよ。そしてそれを平気で持つ主の奇想天外さを改めて感じたよ…」


ええぇ、そんなこと言われても俺は何にも感じないんだけどなぁ…

ヴィオラの一言にちょっとショックを受けてると式服を身に着けたリーサがやって来た。


「待たせてスマナイ。少しサイズ直し時間がかかってしまっテナ。ところでヴィオラとメイはどうしてそんなに疲れてルンダ?」


・・・待ってる間に色々あったのさ

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