魔法技術の弊害?

昼ご飯を食べた後もダンテスの案内でドワーフの集落を見て回っていった。

いろんな職人のいるところを見たが印象的なのは鍛冶場の炉の熱気と職人たちの熱気が凄まじい所とそれとは反対に集落に一軒しかないという木工職人の工房はお爺ちゃんなドワーフが一人で黙々と作業している所だったな。

いろいろな物を見れて俺としては満足であったがもう一つの目的であるガンテツの誕生日プレゼントはまだ見つからなかった。


「どうだったよオレ達ドワーフの工房は。やっぱり世界一だろ?」


「俺もまだまだ世界中回ってるわけじゃないから世界一とは言い切れないが少なくとも鍛冶場はどこよりも熱気に包まれてたな。」


「そうだろう、そうだろう。石工とか木工なら他の種族に負けるかもしれねぇが鉄だけは負けねぇ、負けちゃならねぇ。鉄と酒はドワーフの誇り、ドワーフの血だからな。それでアニキへのプレゼントに良さげなのはあったか?」


「それが思い浮かばないんだ。コレにしようか、アレにしようかと思うたびに何処かで作ってるからさ。」


「だよなぁ~それは俺やお前だけの問題じゃなくてドワーフ全体の悩みなんだよ。どっかで誰かが作ってるっいうな。職人が多いのも考え物だよな。」


何かヒントが無いかと思って辺りを見渡すとダンテスの手にあるキラキラ石が目に入った。


「…そういえばガラス職人っていなかったな。」


「ガラス~?あれは金づちどころか床に落としただけで割れるぐらいだぞ。加工しにくいったらねぇよ。」


「ああ、パワーのあるドワーフからしたら扱いにくい素材に入るのか。そうだ、ヴィオラならガラスの加工方法しってるんじゃないか?」


「流石のボクだってガラスの加工方法なんて知らないよ。そもそも水晶だって魔術で削るのが難しいのにそれより脆くて魔力が入りづらいガラスをわざわざ加工するのなんていないと思うよ。」


「いやいや、削るのは形が整ってからだろ。先ずは溶かして何か作るだろ。削るとかの技みたいのは今はいらないぜ。」


俺の発言に驚いた様子のヴィオラとダンテスに不思議そうな表情をするメイちゃん。

何か変なこと言ったかな?

もしかして切子職人ってのがいないのかもしれないな。

切子ガラスってのはかなり独特だから仕方ないかもなぁ。


「主様、主様!ガラスって溶けるのですか?」


「ん?ああ、ガラスは鉄よりちょっと低い温度でドロドロに溶けるんだよ。その溶けたときにいろいろ形を変えることでコップとか食器とか作れるんだよ。」


「へぇーそうなのですか。メイ、初めて知りました!」


俺がメイちゃんに答えるとガシッと肩を掴まれた、ダンテスに。

それはもう力いっぱいなのでかなり痛いんですけど…!


「イサナ!ホ、ホントにガラスは溶けるんだな!!鉄よりも低い温度で!!!」


「あ、ああ…ここのガラスが俺の知ってるガラスと同じ性質なら溶けるぞ…」


「わかった、ちょっとすぐここで待っててくれ。いいか、絶対待ってるんだぞ!!」


ダンテスは俺にそう言うと慌てて部屋を出ていった。

…何をそんなに慌ててるんだ?


「主…ホントのホントにガラスって溶けるのかい?」


「ヴィオラまで何言ってるんだ。ガラスは溶かして鉄の筒にくっ付けて息を吹き込んだり回したりしながら加工する物だろ。」


「まさか加工方法まで知ってるなんて…いいかい、主、よく聞いて理解して欲しい。ボクが知る限りガラスの加工方法というのは存在しないんだ。少なくともエルフの里にもヒトの国にもガラス職人なんて存在しない。」


「…は?え? いや、でもガラスの収集家とか代用品で使うんだろ?」


「確かに収集家はいる。だけど彼らが集めてるのは天然の大きなガラス原石だ。そしてガラスが水晶の代用品で使われるときは本当に急いでる時でしかない。大事な物には絶対使わないから真の意味では代用品というのも怪しいぐらいだ。それほどガラスは見向きもされなかった石なんだよ。」


「それってもしかして…」


「…今日ここで世界で初めてのガラス職人が生まれるかもしれないね」


うわ~なんかやっちまった感が凄い。

いやいや、ガラスの加工技術なんて元の世界だと紀元前からあったぐらいだぞ。

それが発明されてないなんて想像がつくわけないだろ!

あぁ、あんまり元の世界の技術を持ち込む気は無かったのに…

過ぎたことは仕方ないか。

そこまで危険な情報でも無いし知ってる限りは教えるか。


「待たせたな!とりあえずホントに溶けるか試す道具を持ってきたぜ!」


そう言って部屋に飛び込んできたダンテスが持ってきたのは石で出来たツボっぽい何かと両手いっぱいのキラキラ石改めガラス原石だった。


「こいつはって言ってな鉄を溶かすときに使う道具で鉄より低い温度で溶けるって言うならこいつで代用出来るはずだ。とりあえずコイツに目一杯キラキラ石じゃねぇなガラスを入れて溶けるか見てみる。溶けた後は…そん時に考えよう。」


「わかった。上手く溶けたら俺が知ってる限りの加工方法を伝えるよ。だけ俺も職人じゃないから細かくは分からないからな。」


「いやいや、ガラスが溶けるって分かっただけでも十分だぞ。加工が出来るってのは後はオレ達ドワーフの仕事よ。じゃ、始めるぞ。」


ダンテスがを炉の中に入れてゴソゴソと何かすると炉が熱くなってきた。

数分もすると炉の中は真っ赤になってきても赤くなってきた。

それからまた少し時間がたつとも真っ赤になって中に入っていたガラスはドロドロになっていた。


「溶けたな…」


「溶けたぞ…溶けたぞ!!よし、次は加工だ!とりあえず何がいるんだ!?」


「一番重要なのは鉄の筒だな。ガラスを絡めとって息を吹き込んで形を作るからな。」


「筒、筒だな。何かあったか、筒、筒… そうだ!物干し竿だなあったな。待っててくれ直ぐに戻って来るからな!!」


この後、物干し竿改め吹き竿を持ったダンテスに覚えてる方法でガラスの加工方法を伝えることになったのだった。

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