案内!ドワーフの集落

結局一晩中ドワーフの相手をしてた俺は朝早くリザード族の集落に出発するリーサとドワーフの若い衆を見送ってるとダンテスさんの家に案内された。

ドワーフたちが住む大きな岩山は規則正しくくり貫かれており外から見るとマンションのような感じだった。

そんな岩山の隅の方にあるダンテスさんの家は奥さんと娘さんが住んでおり俺たちの為に朝ごはんを用意してくれていた。


「まぁ、食べながらで良いから聞いて欲しいんだが今年のアニキへのプレゼントなんだが周りをアッと言わせるような物を用意したいんだ。だけど、オレは見ての通り細身だろ。だから鍛冶では他の連中には負ける。そこでイサナの知識を貸してほしいんだ。行商人として旅をしてきたお前なら何かいいものがあるんじゃないかと思ってな。」


どう見てもマッチョなので細身って所に若干の違和感を感じるが世話になる以上それぐらいなら協力しよう。


「何処までお役に立てるか解りませんが喜んで協力しましょう。」


「よし、決まりだな!あぁ、それとオレ相手にかしこまった話し方はしなくて良いぜ。お前は試練を乗り越えた新しい同胞だからな。じゃぁまずは敵情視察を兼ねてオレたちの集落を案内してやるぜ。」


朝ごはんを食べ終えるとダンテスを先頭にドワーフの集落に出かけていくのだった。


・・・

・・


「ドワーフと言えば鍛冶、鍛冶と言えばドワーフだ!まずはココ、大工房だ!!」


ダンテスが一番最初に案内してくれたところは山1つが丸々鉄鋼所になっているようでいろんなところから白煙、黒煙がもうもうと立ち込めておりよくわからない鉄塔のようなものがそびえ立つ巨大な鉄鋼所だった。

沢山のドワーフが鉄鉱石と思われる石や鉄のインゴットを運んでいたり金槌やピッケルを持ってどこかに向かっていくなど皆忙しなく動いていた。


「あわわ、皆さん忙しそうですね!」


「長いこと森で暮らしていたボクにとってこんな大きな鉄鋼所はかなり衝撃的だね。」


「俺だってこれだけ立派なのははじめて見るよ。しかし、若いドワーフばっかりいる気がするな。」


「ああ、ここは職人見習いになる前の連中が働いてるんだ。ここで一番基礎となる鉄の扱いを身体に覚えさせてから何処かしらの親方のところにいくって流れだ。勿論ずっとここで働く連中もいるしな。オレもアニキも皆一度はここで働くのさ。」


ドワーフの技術の根幹を支えるところか。

ちらりと運ばれていく鉄のインゴットを見たがそれだけでもかなり質のいいものだった。

ドワーフ産業恐るべし。


「さてと、何時までも外から覗いてたって何もわからないから中もちょっと案内してやるよ。といっても危険なところが多いからあんまり見せるところは無いけどな。」


そういって中に入るとそこは大きなホールになっており前方と左右の三つの道があった。


「向かって正面が依頼所、右が販売所、左が食堂だ。依頼所は工房に住んでないオレのような連中がこういった比率の合金を作ってくれって頼んだり工房で研究された新しい金属を使ってくれといったやり取りがされているところだ。」


依頼所を覗いてみると石造りのカウンターに受付嬢と思われるドワーフの娘さんがそこそこ中年のドワーフから何かを聞いていたり部屋の奥のほうに大きな黒板のようなものが立てられておりそこにチョークで書いたみたいに白い文字でいろいろと書かれていた。


「皆さん真剣な目で読まれてますね。」


「少し違うがまるで冒険者ギルドだ、ちょっと懐かしい感じだよ。」


まさにファンタジーだ、こういうのを求めてたんだよなぁと感動しながら販売所に向かっていった。


「次はここ販売所だ。見習い連中が自分の作ったもの売っててな若い連中の小遣い稼ぎの場だな。日用品から奇妙な発想の物まであったり見るだけでも面白いぞ。」


そう言われたのでぐるりと販売所を見回ってみると包丁や鍋などの調理器具にカマやクワなど農業道具や綿で出来た生地に…何だこれ、鉄の筒?あ、物干し竿って書いてる。

と、まぁいろいろあったのだが上質や良質の製品がごろごろある。

見習いでこれだもんな、ドワーフの連中腕が良過ぎないか・・・


「鉄の物干し竿ですか…外で使って錆びないのでしょうか。」


「この包丁なんて並みの冒険者のナイフより切れ味が良さそうだよ。これが出回ったら他の種族の鍛冶屋は全部潰れるかもしれないね。」


各々が感想を述べているとダンテスが声をかけてきた。


「どうだ、お前さんの目から見てこいつらの品は?」


「昨日の宴会で見たのに比べたらまだまだだが。ヒトの町で見たものと比べたらこっちのほうが圧倒的に出来がいいな。正直ドワーフの職人の腕の良さに驚きを隠せない。」


「へへ、他の種族の連中に物作りでは負けられないからな。しかし、ヒトの職人の腕はそこまで悪いのか?」


「ヒトの職人の腕を基準に見てるからな。後でヒトの町で仕入れたものを見せてやるよ。あんまり出来がよくなくても笑わないでくれよ。」


「そいつは楽しみだ、酒の肴にでも見せてもらおうかな。次は食堂だが正直見て面白い物はないし飛ばして農場に案内してやるよ。」


そうして大工房を離れ俺たちは農場に向かうことになった。


・・・

・・


農場に着くと子供から大人まで多くのドワーフが働いていた。

ぱっと見た感じ女性のほうが多く7対3ぐらいも割合になっている。


「基本的に畑と料理と裁縫は女の仕事でな。こうして女達が管理してくれるから俺たち男は気にせず鉄を叩けるんだよ。」


「ふ~ん、でもどうして畑仕事が女の仕事になったんだい?女は鉄を叩いちゃいけないって決まりでもあるのかな?」


「いや、そんな決まりは特にないさ。昔から男達は鉄を掘りに行ったり鉄を叩いて女と子供は晴れたら畑雨は裁縫って暮らしだな。男でもずっと農業してる奴もいるし女でも鉄を叩いてる奴はいる。そうだなぁ、結婚の決め手に料理の腕で選ぶこともあってだなってがあるから料理が上手くなりたいって理由かもしれないな。」


「なるほど、そうかもしれませんね。主様はどう思います?」


「実際にダンテスが言うこともそうだと思うけどもう一点は子育ても理由だと思う。こうして沢山の大人の目があればパッと目を離しても誰かが見てる可能性が高いだろ?そういった作業分担を昔のドワーフが考えたかもしれないな。」


「あ~なるほどなぁ。オレには考え付かなかったけどそうかもしれないな。オレもガキのころは畑に行って他の家の連中と遊びまくってたからな。ちなみにさっきのの理由はわかるか?オレには畑と料理が結びついてる理由がわからねぇんだ。」


「それはドワーフが男女問わず職人気質って所じゃないかな。自分が育てたのを美味しく食べたい、食べさせたいってところからそんなが生まれたんじゃないか。」


「なるほどなぁ。そう言われると凄く納得するな。戦士の連中も自分の装備は自分で作りたがるしアレも同じ事なんだろうな。さて、そろそろ昼だからちょっと移動しようか。アッチに畑仕事の休憩所があって昼になったら飯が出てくるんだ。オレたちも貰いに行こうぜ。」


そう行ったダンテスの案内で移動すると木製の屋根とイスとツクエが置かれてる壁のない建物があった。

ダンテスの言う通り野外のかまどで調理中だったようでドワーフの奥様方が楽しそうに談笑しながら料理を作っていた。

するとこちらに気づいたダンテスの娘さんがパタパタとこちらに走ってきた。


「おとうさん、このキラキラ石あげるね。」


と、言うと拳大の大きさの半透明な石をダンテスに渡すとパタパタと走って奥さんのほうに戻っていった。


「ダンテスそれは?」


「ああ、ガラスだよ子供達はキラキラ石っていうけどな。この辺りにはそこらじゅうにガラスが埋まってんだ。オレもガキのころは無駄に拾ってきたもんだ。オレは飯をもらってくるから穴が空くぐらい見てて良いぜ。」


俺がキラキラ石もとい天然ガラスを受け取るとダンテスは飯を取りに行った。

しかし、天然のガラスがゴロゴロあるとは凄い世界だな、確か元の世界ではかなり希少だったと思うが。


「大きくてキレイですね!」


「これが地面の中から出てくるって凄いところだよな。ところでヴィオラ、ガラスの価値ってこの世界ではそんなに高くないのか?」


「まぁそうだね。脆いし魔力の保有量も少ないから重宝されることはないね。どちらかというと水晶の代用品ってイメージが強いね。でも、その美しさから趣味で集めてるってヒトの話は聞くよ。」


俺がヴィオラからガラスの説明を聞いてるとダンテスが皆の分の飯を持ってきてくれた。

出てきたのは茹でたトウモロコシっぽいのとじゃがいもっぽいののふかし芋といろいろな野菜のサラダだった。

トウモロコシっぽいのは甘みが少ないぐらいで味までトウモロコシっぽかった。

芋の方はじゃがいもそのままだった、バターつけて食べたくなるぐらいに芋って味だわ。

サラダはサラダだな新鮮で美味い、俺のカバンに入れてる限り鮮度は落ちないので余分があれば後でもらっておこう。

ここで休憩をとった俺たちはまた午後からドワーフの集落を回るのだった。

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