ご先祖様総立ち作戦!!
俺、ヴィオラ、メイちゃんの3人は礼拝堂でコソコソと密談をしていた。
というのもサイクロプスの砦に来て3日、祭りまで後2日を切ったのだが俺の考えた『ご先祖様総立ち作戦』はうまくいってなかったからだ。
ちなみにリーサとネフェルはサイクロプス族を受け入れる準備の為一足先に集落に戻って行った。
「おかしいな。俺の中では『ご先祖様サイコー!もう何も怖くない』ってなってるはずだったんだけどなぁ・・・」
「残念ながらうまくいってないね。発想は面白いし上手くいけばこれから何か役に立つと思うのだけどね。」
ヴィオラの言葉に俺はむ~、と言葉にならない唸り声で返事をすることしかできなかった。
「メイなら夢枕にご先祖様が立ったら急いでお墓参りに向かうのですがサイクロプスの方は違うのでしょうか。」
俺の立てた『ご先祖様総立ち作戦』は夢の中にご先祖様達が入ってもらいここに道具を置いておくから持って行けよって伝えて貰うというサイクロプスの彼は道具が手に入ってラッキーご先祖様達は感謝されてラッキーというwin,winの作戦だった。
それがまさかここまでうまくいかないとは読めなかった、このイサナの目をもってしても。
「何が悪いんだろうな…完璧な作戦だと思ったんだがなぁ。」
「やっぱり神官ですらないヒトに宣託というのが難しいのだろうね。高位の神官ですら一生に一度できるかすら分からないものだしね。」
「そうなのか?俺なんて寝る度にしょっちゅう
「世の神官たちが聞いたら卒倒する事案だねそれは…まぁ、今の僕たちにはこのお守りがあるから他の人たちよりかは宣託を受けやすくはなっているけどね。それでも前に
「へぇーまるで電波が悪い時の電話みたいだな。俺はいつもすっきりクリアに聞こえるし会話もできるからなぁ。ああ、そういえばあの時は教会じゃなくてお屋敷で寝てたからかな。」
「まって、ちょっと待って主。君は夢での宣託を受けたときも会話が出来るぐらい繋がってるのかい?」
「え?ああ、そうだぞ。宿屋で寝てた時だって普通に話すしそのまま
「そうか…そうだったのかぁ。ああ、まぁ、主だしねぇ。ここまで規格外とは思わなかったけれど。そもそも、宣託とは受ける物であって返すものではないのだよ。だから会話なんて出来るはずはないんだよ。それに触媒もなしに神を降ろした挙句に
「なん…だと」
俺は信じられなくて、いや信じたくなくてメイちゃんの方を見ると首を縦に振った。
なんてこったい、まさかそんな状態になっていただなんて。
「だったらご先祖様総立ちしてても言葉が伝わってないかも知れないじゃないか!」
「気にするのはそっちなのかい!?まぁ、そうだね。言われてみればその可能性はあるね。宣託を授ける側も今回は神席ですらないからね。もっと名のある神に手伝って貰えたらうまくいくかもしれないね。」
困った時の神頼みということでガンドラダに俺達の考えを話してみて今晩夢枕に立って貰えないか話してみた。
「救世主よ、宣託を行った者たちから話を聞いてみると彼らも向こう側の音が聞こえず難儀しとったそうじゃぞ。毎晩、毎晩頑張ってたみたいじゃが何せ宣託を行う身分でないから彼らを責めんでやっとくれ。それで今晩ワシが行う事には何にも問題は無いぞ。ワシがヘタレた小僧に喝をいれてやるわい。」
と、いう事になったので今夜はガンドラダが頑張ってくれることになった。
そして、ヴィオラの提案でサイクロプスの寝ている近くに俺達も潜むことになった。
恐らく俺が近くにいるほうが宣託も成功しやすいだろうと言う見立てだ。
ようするにアンテナとか無線LANの子機扱いである。
さて、今夜が楽しみだな。
※…………………………………………※※※…………………………………………※
太陽が荒野の岩山に隠れ代わりに綺麗な満月が天に上った頃、一人のサイクロプスの青年が悩みながら床に就こうとした。
彼は1週間ほど前に彫像を作るための素材を取りに行った時に運悪く魔物と出くわしその時の騒動で愛用の道具を壊してしまっていた。
巨人族とも称されるサイクロプスの彼はまわりのサイクロプスよりも小さいとはいえ普通のヒト達よりも2周りは大きい故に道具を用意するのも時間が掛かっていた。
基本的にドワーフ族に特注で作ってもらうとはいえある程度のサイズならば既に金型があるので比較的直ぐに手に入るのだが彼の場合は一般的なサイクロプスともヒトも違うサイズなので完全にオーダーメイドになり時間が掛かるのだ。
成人の祭りが行われるのは目前でその祭りに自らの作品を出す義務はないのだがその祭りに作品を出すのは幼いころからの憧れであった。
(素材も手に入れたし意匠も考えたぁ、後は掘るだけだが肝心の道具がないだぁよ。明日にでも道具が手に入らなければ諦めるしかないだぁよ。それに、最近はヘンな夢もみるし、もうダメかもしんねぇだ。)
そう、道具を失った事以外にも1つ彼には悩みが出来ていた。
それは彼の夢に数多くの職人が現れて何かを告げようとするのだが声が全く聞こえないので何を伝えたいのか分からず朝を迎えるのである。
道具を手に入れることと不思議な職人の夢の事を考えていたのだが次第にウトウトとし始め彼は夢の世界に向かうのだった。
・・・
・・
・
周りは気づけば礼拝堂になっていた。
ただ、起きた記憶もないしここに来る用事もなかった、それに何よりもここが夢の中だという意識はあった。
折角なのでお祈りをしていこうと思うと奥に進むと違和感があった。
礼拝堂の奥に置かれている石像がなく変わりに自分と同じぐらいの年老いたサイズ感以外はとても見慣れたサイクロプスが一人立っていた。
「やっと来たか小僧。貴様の事は聞いておる道具をうしなったそうじゃな。全く持って情けない。貴様もサイクロプスなら道具を守りながら戦うことぐらい出来るようにならんか。まぁ今回はその話ではないから置いておくとしよう。小僧、最近の夢に職人達が立っておったじゃろ。奴らはな道具を失ったお主を哀れに思って助けてやろうと思ったみたいなんじゃがどうもうまく伝わらずワシが出てきたというわけじゃ。
ワシの事は言わんでもわかるじゃろいつもここに大きくされてたっとるからな。と言うわけでワシの予備の道具を貴様にやろう。ワシも貴様も同じぐらいの大きさじゃから使えるじゃろう。場所はワシの立っとる場所じゃ。では、起きてとっとと向かうんじゃ小僧!!」
バッと青年は飛び起きると最低限の服を慌てて着替え大慌てで部屋を飛び出して行き周りの迷惑なんて考えずドタバタと走って行った。
「主、どうやら作戦は成功したみたいだね。」
「だな、うまくいってよかったよ。」
「これで一件落着なのです。」
ドンドンと走る音が響く廊下に3人の小さな笑い声がヒッソリと響く夜でした。
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