サイクロプスの人たち

「そういうことなら手伝ってやるだぁよ。ワシらに任せるといいだぁよ。」


リザード族の現状をリーサとネフェルが伝え手を貸して欲しいと伝えるとあっさりと了承してくれた白いサイクロプスの代表。

正直こんなに簡単に話がまとまると思っておらず俺たちは呆気にとられていた。


「ただぁ、向かうのはちょっと待って欲しいだぁよ。準備って話もあるが5日後が成人の儀の祭りがあるからそれが終わってからにして欲しいだぁよ。」


「行き成り来た此方が悪いノダ。それぐらい待ツサ。」


「ありがたいだぁよ。そうそう、よければ祭りが終わるまでこの砦でゆっくりしていって欲しいだぁよ。ヒトにエルフにオニなんて初めて見る連中も多いから祭りが盛り上がるだぁよ。」


そう言われてしまったら留まるしかないわけで、べ、別にサイクロプスの生活に興味があるわけじゃないんだからネ!ちょっとここらで一儲けしようと考えたわけじゃないんだからネ!


そんなこんなで留まるついでに露天を開く許可を貰ったので早速店を広げてみた。


「いや~今日も俺のオオイリ商店は満員御礼だな。流石、俺。これはいずれは商売の神様だな。ハッハッハ・・・」


「確かにお客様は沢山来られてはおりますが・・・」


「主~現実を見たらどうだい?残念ながら売り上げは皆無だよ。」


「チクショー。ヴィオラの言うとおり売れてねぇよ。というか、あきらかに商品がニーズにあってねぇよ。」


平均5mぐらいはありそうな人達に普通の人間サイズは小さすぎたのだ。

俺たちの道具が向こうからだとミニチュア扱いになるのだからなかなか売れない。

そんななか1つだけ売れ筋の商品があった。

それはカービン子爵領で買いあさった材木だった。

もともと奉納用に買ったのだがガンドラダから十分だと言われたのでこっちで売ることにしたが職人が多いだけあってか思ってたよりは売れた。

とは言ってもまだまだ在庫は抱えているのだが…

このままだとこの遠征は大赤字だから逆転の一手を考えとかないとダメだな…


「元気出すだぁよ。カクタ酒奢ってやるからな。」

「成人祭りには間に合わないかもしれんがまた道具を作って完成させればいいだぁ。」


俺がこれからの事を悩んでいると少し小さめの見るからに落ち込んでいますってサイクロプスを2人のサイクロプスが励ましながら俺の店の近くにやって来た。


「お、ここが噂のヒトの露店だぁか。気晴らしに見て行くだぁよ。」


励ましてた1人がそう言って俺の店にやって来た。

2人は面白そうに品物を見ていたが落ち込んでいるのは見向きもしなかった。

流石に気になったので俺は励ましてた方に声を掛けてみた。


「あの~、不躾ですが何かあったかお聞きしてもよろしいでしょうか?場合によっては裏に置いてある在庫を見て参りますが。」


俺は元気のある2人にそう言うと2人は申し訳なそうな顔をして答えてくれた。


「ああ、悪いことしただぁね。元気が出ないのは商人さんのせいじゃないだぁよ。」

「そうだぁ。あっちの落ち込んでるヤツが使ってる彫刻用の道具が魔物に壊されただぁよ。成人祭りの時に戦士は試合をして職人は自分の作品をだすのが慣習だからソレに参加できなくて落ち込んでるだぁよ。」

「んだぁ。別段成人祭りに出す義務があるわけでないから問題は無いだぁがなかなか割り切れるもんでも無いだぁ。それに、ワシらの道具はドワーフに特注で作ってもらう物だから出来上がるまで時間が掛かるだぁよ。」


そう答えてくれた2人は落ち込んでいるサイクロプスを連れて店を離れて行った。

その後も店を開けていたのだが鳴かず飛ばず状態でそろそろ畳もうかと思っていた所にサイクロプスの代表が来て是非見て行って欲しい所があるからと案内された。


案内された場所は礼拝堂のような場所だった。

ただの礼拝堂と言えどここはサイクロプスの礼拝堂、全てがビッグサイズなので不思議の国に迷い込んだ少女の気持ちが今なら良く解る。

そして、その奥に鎮座している石像があった、この要塞の名前でもありサイクロプス族であり死後神の1柱に数えられることになった男、ガンドラダである。

ただ、一言だけ言わせてもらうとしたら…


「ガンドラダ…デカくない?」


余りにも本人からかけ離れた大きさについつい口から零れてしまった言葉をサイクロプスの人が拾い上げた。


「商人さんは博識だぁね。実際のガンドラダは小柄だって伝わってるだぁよ。まぁ、祈りを捧げる石像だから見た目重視になったと思うだぁ。」


小さいって伝わってるのか、ガンドラダ…

その後好きなだけ見てて良いと言い残すと代表の方は去って行った。

どうでもいいけど警戒心無さすぎない?大丈夫なのサイクロプス族。


≪救世主、救世主よ。聞こえるかの?≫


「その呼び方はガンドラダだな。随分と久しぶりじゃないか。何かあったのか?」


腕輪を見ると青白く輝くホログラム映像のように胸からうえのガンドラダが映し出されていた。


≪何か合った言えば合ったし、無かったと言えば無いな。言うなれば久々に連絡出来そうじゃったから連絡した感じじゃな。≫


「随分適当だな…そう言えば何で連絡出来なかったんだ?」


≪それは、あれじゃ。リザード族の集落を中心にこの辺りが少々特殊な魔力を持ってる土地でなこちらから干渉するのが難しいのじゃ。でもちゃんと同行は把握してるから大丈夫じゃぞ。と言うわけで先ほど出会った道具を失った坊主にワシの予備の道具を売ってやってくれ。背丈が近いからワシのサイズの道具が使えるじゃろ。≫


「ああ、その事な。残念ながらそれは出来ないわ。」


≪な、なんじゃとー!!≫


俺の答えにガンドラダの大きな顔がアップで映し出されヴィオラとメイちゃんも驚いていた。

そんなに驚くことか?


≪いつもなら手八丁口八丁であらゆるものを売りつけとるガッツはどうしたんじゃ!?サイクロプスの大きさにビビる救世主ではなかろう!≫


大きな顔で話すガンドラとうんうんと頷く外野2人、君ら俺の事そんな風に見てたの?


「別にそう言う事ではないんだが、さっき付き添いが言ってただろ『サイクロプスの道具は特注』だって。それがいきなり来た人間が『どうぞ、サイクロプスのサイズの道具です使ってください』って言ったらおかしいだろう?」


≪む、むぅ。そう言われると確かに変な話じゃな。下手したら救世主が魔物を差し向けたと思われかねん。≫


「だろう?だから俺から売りつけることは出来ない。だけど、渡すだけならある程度俺にいい考えがある。」


≪いい考え?一体どんな策じゃ?≫


「フッフッフ、その名もずばり『ご先祖様総立ち作戦!!』」


ポーズと共に決めると皆静かになった。

どうやら俺の素晴らしい作戦に言葉も出ないようだった。

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