重機を探せ!?

リザード族の里に来て10日、手作業とは思えない量の岩が塩の祠から運び出されているがそれでもまだまだ終わりは見えない状況だった。


「流石はリザード族だね。1人で普通のヒトの2、3倍は動いてるんじゃないかな。」


「確かに凄いと思うぞ。俺のカバンの中も掘り出した岩でいっぱいだしな。ただ、やっぱり重機を知ってる身としては中々進まないと思ってしまうんだよなぁ。」


「ジュウキ?それはどういった物なのかな?」


「ああ、重機ってのはデカくてパワーがある物で鉄の塊を持ち上げたり簡単に大地を引っ繰り返したりするんだよ。」


「・・・それは凄いね。というか主の自慢の商品にはそういった物は無いのかい?」


「それがな、この辺りについてからどうも腕輪の調子が悪くてさ。こっちから呼びかけても全く反応しないんだ。夢にも出てこないしどうなってるか俺も気になってるんだけどこればっかりはサッパリだ。」


俺とヴィオラが2人して悩んでいると後ろから肩を叩かれた。

何だと思って振り返ってみるとメイちゃんが自信満々の笑みで仁王立ちをしていた。


「主様!このメイに名案がありますよ!」


「名案?なんだメイちゃんは重機を知っているのか?」


「ジュウキ?は知りませんけど此処の人たちより大きくて力強いものに心当たりがありますよ。」


フンスと力強く息を吐きながら話すメイちゃんに微笑ましく思いながらメイちゃんの考えを聞いた。

それは、俺が考えもつかなかった、いやこの集落の皆が考え付かなかった内容だった。


・・・

・・


その日の夜、メイちゃんの考えを皆に伝えようと思いババ様に頼んで集落の重鎮たちを集めて貰った。

俺達は大ジジ様を頂点に円座を組み時計回りにババ様、戦士長、職人達のトップの親方、ラザードの飼育舎の管理人、俺、リーサの順に座っている。


「忙しいところ集まってもらいありがとうございます。」


「いやいや、ワシらは店長さんにはお世話になりっぱなしだから相談したいことがあると言われたら断れないさ。」


「そうそう、店長のおかげで職人たちのやる気が今までにない程あがってるからね。相談ぐらいいくらでも乗るさ。」


「そうね。店長さんが来てくれたおかげでラザード達が飢える心配が減ったのだから感謝しかないわ。そうそう、また飼育舎に来てね。あなたの顔を見るだけでラザード達が元気になるのよ。」


親方と管理人さんは一度会ってるからかなりフレンドリーに話してくれる。

ただ、初対面の戦士長は厳つい顔でこっちをジッと見ていた。


<こうして顔を合わせてちゃんと話すのは初めてだな商人殿>


久しぶりに聞くリザード族特有の地響きのように低いゴロゴロと言った言葉に内心ビビりながらも俺もしっかりと目を合わせた。


<こちらこそ挨拶が遅れてしまい申し訳ございません。ご存知の通り自分が商人のイサナです。改めてよろしくお願い致します。>


俺がリザード族の言葉を話したので戦士長以外は驚いた顔をしていたが戦士長はそのようなそぶりを見せなかった。

むしろ、いかつい顔でありながら何処か申し訳なさそうな表情を浮かべていた。


<謝らないで欲しい商人殿。むしろ挨拶が遅れたのはこちらのせいなのだ。恥ずかしながらヒトの言葉が苦手なのでこちらから避けていたのだ。ただ、ネフェルに言葉が通じる『ギフト』を持っていると聞いてこの場に来たのだ。遅れながらではあるが良くぞ我らの為に来てくれた。戦士達を代表して歓迎と感謝をしたい。商人殿のおかげで我々は変わらずにこの大地と誇りを守り続けられる。>


想像もしていなかった歓迎と感謝の言葉を受けて俺は一瞬呆気に取られたが何とかすぐにお礼を言う事が出来た。

そして、ある程度挨拶と近況報告が終わり俺は本題を切り出した。


<自分が相談したいことは塩の祠の復興についてです。集落の老若男女関係なく日々力を合わせている事で順調に進んでいるように見えますが残念ながら圧倒的に手が足りていません。こちらも可能な限り支援を続けますが今の速度では限界のほうが先に来てしまいます。ですので他の場所から手を借りるのはどうでしょうか、と言うのが今回の話です。>


<他か…確かに手が増えればそれだけ早く作業は進むだろうが他の部族は正直足手まといだと思うぞ。>


戦士長の言葉にほかの人たちもその通りだと賛同しているし俺も戦士長の言う事は何となく分かる。

実は前にこの集落に野菜を持ってきた『緑の部族』のリザード族とラミア族を見たのだがよく言えばスマート悪く言えばヒョロイそんな感じだった。

たまたま一緒にいたネフェルに聞くと緑の部族の人たちは赤の部族の人たちより一回りぐらい小さいとのことで『青の部族』の人たちは基本的に地底湖周辺にいるから暑さに弱いらしいとのことだった。


「確かに緑の部族の人たちと青の部族の人たちに応援を呼ぶのは厳しいと思います。ですので応援を頼むのは他の方です。それこそ赤の部族ここの人たちより大きくて力持ちの方ですよ。」


俺の言葉に心当たりが無いのか戦士長と管理人と親方は首を捻っているがババ様は気づいたのか驚いた顔をしていた。


「店長さんそれはまさか…」


「ババ様は気づいたみたいですね。応援を頼むはそうですよ。」


・・・

・・


ババ様たちと話し合った翌日、俺達は日が昇り始める前に集落を出発していた。


「主、見えてきたよ。女神様とドラゴンだ。」


朝日に照らされた巨大な女神様とドラゴンの彫像が俺たちを真っ先に歓迎してくれた。

そう、俺達はまた荒地の入口に戻ってきたのだ。

ガンドラダ要塞に住む荒地の門番、サイクロプス族の力を借りるために。

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