領主の息子

再びやってきましたカービン子爵のお屋敷。

学園都市の物よりは大きいが良く言えばレトロな感じ悪く言えば古臭い感じのお屋敷である。

案内してくれた女性に客室に通されとりあえず一息ついた。


「なんというか主の下についてからやたらと貴族と関わることになったよ。」

「フフン、俺のあふれ出る商才の力だな。」

「でも、そんなに儲かってはいないようですけど。」

「ウグ!」

「商売以外でビックリするような大金を使ってたからね。だからボクたちは貧乏旅なのさ。」

「ウググ・・・」

「大丈夫ですよ主様。メイはいつまでもお傍にいますから。」

「ゴシュジンならきっと大丈夫だぞ。」

「2人の優しさが逆に辛い。」


そんな、たわいの無い話をしているとドアがノックされ先ほどの女性が入ってきて準備が出来たとのことで応接室に案内された。

中にいたのは覇気とか威厳とか諸々を取っ払ってカービン子爵を若くしたらこんな感じだろうなと言える男性だった。

間違いなくこの人がパーティーの主役って言われてたご子息だな。


「ようこそ、我が領地へ!僕はジャック・カービン。妹や両親から話は聞いていたが本当に子供なんだね!会えてとっても嬉しいよ!」


「こちらこそ会えて光栄です。ご存知かと思いますが商人のイサナと申します。以後宜しくお願いします。」


「ああ、別にいいよ。そんな硬い挨拶とか話し方とかしなくとももっと楽に話して。そうそう、料理を用意してあるから食べながらでいいから話を聞かせてよ。流石に君の持ってきたコショウみたいな高級品は無いけど我が家の料理人に腕によりをかけて作ってもらったから悪くは無いはずさ。さぁ、行こうか。」


あの寡黙なカービン子爵の息子とは思えないほど良く喋るな。

俺は勢いのまま流れ流され映画とかに出てきそうなあの長い食事テーブルに着かされ一緒に晩餐を食べた。

その間もジャック様は良く喋る、内容は自分の学生のときの話やこの領地の話、こちらからはブリッサさんに初めて出会った時の話から出発前のパーティーの事までを話した。

ちなみに、出てきた料理の内容は地元で取れた新鮮な野菜のサラダにスープ、香草で焼いた豚っぽい味のステーキに前に食べたドーナッツみたいなやつに甘いソースのかかったデザートまで出てきて大満足です。

そして食べた後は相談事があると言われたので俺は1人サロンに通されたのだった。


・・・

・・


「さて、イサナ君。食事中に言ったかもしれないが実は僕には婚約者がいてね。テレサ・ウィンストンといって西部にある海に隣接している子爵領のお嬢さんなんだけど来月には我が家で一緒に住むことになっていてね。彼女の為に取って置きの何かを用意してあげたいんだよ。だけど、残念ながら我が領地は材木こそ自信はあれどそれ以外はからっきしなんだ。だから、もし君の商品の中でこれこそというのがあれば是非見せてもらいたい。金ならいくらでも出す!・・・と言いたいが個人で使えそうな金額は50銀ぐらいまでなのでそれぐらいで頼む。」


婚約者の彼女にプレゼント、いい話じゃないかホント。

ただ、問題が1つある。

この世界の女性が何を送れば喜ぶかが分からない・・・

いや、この世界と言うよりも前の世界もだな、彼女いない暦=年齢だったからな、ハハハ・・・


「どうしたんだい、イサナ君。黙り込んでしまって。あ、やはり50銀と言うのは厳しかったかな。」


「ああ、いえいえ、違うんですよ。ちょっと考えことをしてまして。1つお尋ねしたいのですが、女性に贈ると喜ばれるものがあまりいいのが思い浮かばなくてですね。ジャック様は何か思いつきますか?」


俺の質問にすごい表情をして固まる。

あ、この人、俺と同じタイプじゃないかな。


「やはり君も思い浮かばないか。というよりも子供に聞く事ではないか、何がいいかな。こう、花や宝石みたいな在り来たりでない物がいいんだけど。う~ん、出てこないな。何か、無いか、こう女性が喜びそうなもの・・・ そうだ!ちょっと待ってて、すぐに戻るから。」


ジャックさんはそういうと急いで部屋を出て行った。

ドタドタと足音が離れていくのが止まったと思ったらすぐにドタドタと近づいてくる音が聞こえた。

バンと勢い良くドアが開くと満面の笑みのジャックさんと何度も案内してくれた女性が無表情気味でジャックさんに手を引かれて後ろに立っていた。


「さぁ、メイド長!君は何を貰うと嬉しいんだい?」


あ、メイド長が呆れたオーラを出してる。

俺は慌てて一連の話の流れを説明した。


「そういう話であれば鏡台はいかがでしょうか。奥様も毎朝鏡を見て髪を整えておりますし。」


「「鏡台かぁ・・・」」


男2人して声がハモる。

その考えは無かったな、鏡は女性の必須アイテムだし日常的に使えるからいいかもしれないな。

と言う俺の考えとは裏腹にジャックさんの顔は暗かった。

多分、この国では高い分類なんだろうな。


「分かりました。では荷物から探しておきます。鏡はあるか分かりませんが鏡に類似したものならご提供できるかもしれませんので。」


「うう・・・不甲斐無い貴族ですまない。とりあえずよろしく頼むよ。」


俺は一言挨拶をして馬車に戻っていった。

さて、今回はどんな逸品があるかな。

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