Q.ご先祖様にであったらどう思いますか?

「ヴィオラにメイちゃん!なんでここにいるの?」


「主!キミもここにいたのか!ここはいったいどこなんだい!?周りにいるのは祖霊ばかりなんだが!?」

「この方々のお名前を聞くと皆様歴史に名だたる名工ばかり。主様、メイたちは死んでしまったのですか!?」


「とりあえず説明するから落ち着け。あぁ、メイちゃんも泣かないで少なくとも死んではないからさ。」


俺は慌てふためく二人をなだめてここの説明とどうしてここにいるかを伝えた。


「そうか、ここが主がいつも商品にしている職人たちの工房だったのか。聞いたことのある祖霊ばっかりだったからホントに死んだのかと思ったよ。」

「メイも死んだとばかり。しかし、ここが神々の世界とは驚きです!主様はやはり御使い様なのですね!!」


「そうですね。神の使いという事ならばイサナさんは間違いなく御使いと言っていいでしょう。」


言葉と共に現れたのはこの世界の主神グランフィリア様だった。

周りにいた職人やガンドラダ慣れた様子で膝をついたのだったがヴィオラとメイちゃんは驚きのあまり固まっていた。


「ふふ、こうして直接会うのは初めてですね。イサナさんを支えている姿をいつもここから見ていますよ。」


「そ、そんな!ボク達は出来ることを精一杯しているだけでむしろ主に迷惑をかけてばかりじゃないかと思ってるぐらいです。」

「あわわ…そ、そうです。メイはまだ天神様に褒められるような事は何もしてません。むしろ支えて貰っているのはメイのほうで。」


「いえいえ、よくやっていますよ。イサナさんはこの世界に招いた客人です。その方を支え、力になるというのはこちらが想像している以上に大変だと思います。ですので今回はその報酬とこれからも多くの難題が立ちふさがるであろうあなた方の助けになるべくちょっとしたものをご用意しましたの受け取ってください。では、ガンドラダ。後のことは頼みますね。それでは~」


フィリア様は光の粒子になって消えて行き残された2人は心ここに有らずといった顔で立ち尽くしていた。


「全く、あの御方の悪戯好きにも困るわい。現世の者があの御方に出会ったらどうなるか等想像できるじゃろうにの~ まぁ、良い。ワシらはワシらの仕事するだけじゃ。お前たちアレを持ってこい。」


職人たちが威勢のいい返事をすると奥から布を被せた2つの物を持ってきた。

1つはヴィオラぐらいの大きさ(ヴィオラの背は170㎝ぐらい)のものでもう1つはもっと大きかった(180㎝ぐらい)。

職人たちが準備をしている間に俺は未だに意識が無限の彼方に行ってる2人に声をかけた。


「ほら、お前たちこっちの世界に帰ってこい。フィリア様からのプレゼントだぞ。」


「ッハ!そうだね、まだ驚きが来るんだよね。前に何が来ても驚かないって言ったけど無理だったよ主。」

「メイは大丈夫です。大丈夫です。…大丈夫ですよね?主様。」


俺に聞かれても困るんだけど、とりあえず2人は深呼吸して落ち着きを取り戻そうとしているが汗びっしょりだ。

すまんな二人ともきっとこの後も爆弾が来ると思うが心をしっかり持ってくれ。


「救世主よ、こちらは準備が出来たがどちらから見せるんじゃ?」

「じゃ、ヴィオラからで」

「主!ボクはまだ心の準備がついてないんだけど!!」

「ハハ、シランナ~ソンナコト。では、職人さんお願いします。」


俺の言葉にエルフの職人が頷くとバサッとプレゼントにかかっていた布を取り外した。

そこにあったのは短剣2本と弓1本、それに胸当てチェストプレート手甲ガントレット脚甲レガースそれとなぜか耳飾りイヤリングがセットになった武具一式がヴィオラを模した人形に付けられたいた。

ただ、そこにある武具もただの武具でなく全てが翡翠色に光り輝いていた。

これ、何で出来てるんだ、とてもじゃないが金属には見えないんだけど。


「ま、まさか。これは輝翠晶ユグドラシル・クリスタルの武具…?あの、伝説の輝翠の騎士団ユグドラシル・ナイツの使ってた装備…!?」


ヴィオラが震えた声で隣にいる職人に尋ねると職人が口を開いた。


「君の言う通りこれらは全て輝翠晶ユグドラシル・クリスタルで作られた武具だ。我々エルフにとって最も相応しい武具と言えばコレしかないだろう。ただ1つ間違いがあるならばこれらは輝翠の騎士団ユグドラシル・ナイツの使ってた装備では無く全て君の為に作られた物だということだ。」


「これが、ボクの…ボクの為の装備…」


フラフラと輝く装備に近寄り弓を手に取るとヴィオラはポタポタと涙を落とし始めた。


「ガンドラダ!ヴィオラが泣いてるんだけどその装備そんなにすごいのか!?」


「そうじゃな。輝翠晶ユグドラシル・クリスタルというのはエルフの森で極僅かしか取れない物でな。ミスリルより軽く、硬く、魔力保有力が高い魔術にも戦闘技術にも秀でたエルフの為にある様な素材なんじゃがその加工は凄まじく難しくてな、1000年生きると言われるエルフでも900年修行してやっと扱えるような素材なんじゃよ。そして輝翠の騎士団ユグドラシル・ナイツと言うのは輝翠晶ユグドラシル・クリスタルの装備を身に着けた過去に実在したエルフの騎士団でエルフなら知らない者は無いと言われる伝説の者達らしいぞ。」


なんつうか話が凄すぎて想像がつかないが要するにエルフ版のオリハルコンとかヒヒイロカネ的な物で作られた装備で元の世界で言う円卓の騎士のような存在が身に着けてた装備を自分用に作って貰えたって事かな…

まぁ、そんなん貰ったら泣くなわな、俺だって嬉しすぎて間違い無く泣くわ。

さて、短剣を手に取り笑いながら泣くという恐ろしいヴィオラは置いといて次に行くか。


「じゃ、メイちゃんカモーン。次見るよ」

「ひゃ、ひゃい。メイは大丈夫です。」


大丈夫じゃなさそうなメイちゃんが大きい方の品物のほうに立つと鬼の職人が布を手に取りバサッと取った。

そこにいたのは長く黒い髪に額から生えた一本の角、出るとこは出て引っ込むとこは引っ込んでいる優しそうな微笑みを浮かべた女性だった。

それを見たメイちゃんは慌てて土下座をして頭を伏せた。


「ま、まさか慈母様にお会いできるとは思っておらず。失礼をいたしました。」


メイちゃんは慌てて女性に謝るが女性は何も言わず先ほどと変わらず優しく微笑んだままだった。


「落ち着け若き傀儡師よ。これは我ら鬼職人が魂を籠めて造った慈母傀儡だ。御使いを護るお主の力になるよう慈母様自ら傀儡のになって頂けたのだ。あらゆる最高の素材を使い慈母様の戦闘傀儡を造り操り糸には海神白鯨ワダツミノハクゲイひげを用い、扱う太刀、槍、鉞、には日緋色金ヒヒイロカネを、弓には千年梓で作った。まさに我ら鬼職人最高の逸品。これらを使いあらゆる悪しきものから御使いを護るのだ。」


「はい!このメイ身命を賭して主様を御守致します!」


「鬼組は熱いなぁ~ とりあえずガンドラダ解説お願いしていい?」


「うむ。鬼の言う慈母と言うのは鬼族を連れてきた神のことだ。普段は慈悲深く何に対してもやさしいのだがひとたび怒らせれば辺り一面焦土と化す荒神の面も持っておるらしい。正直、合ったことないからよく知らんのぅ。それで海神白鯨ワダツミノハクゲイは海神が乗る白いクジラで日緋色金ヒヒイロカネはオリハルコンと似た性質を持つ金属でな溶かすのすら非常に苦労する物で現世の職人で扱える者が残っておるかすら怪しい程じゃな。千年梓はその通り千年以上生きた梓の木じゃな。悪しきモノを祓う力を持つ。正直あれらの一つ一つを巡って戦争が起きるぐらいじゃな。」


「マジ?」


「マジも、マジ。まぁ全部武具が認めた者以外扱えない魔法がかかっとるから大丈夫じゃがな。」


「まぁ、大丈夫ならいいんだが。しかし、貰ってばっかりで悪いんで何か返したいんだが何か欲しいのは無いか?」


「別に気にせんで構わんぞ。ワシらの尻拭いをして貰っとる礼なんじゃから。」


「それでもだ。何か返さないと俺の気がすまない。まぁ、俺の一生を懸けてもあの装備1つ分の代金にもならないけどな。」


「そうか、何でもいいから魔獣素材を用意してくれんかの。」


「魔獣素材?そんなのここなら何でもあるんじゃないのか?」


「たとえば蜘蛛の魔獣の糸であったり羊の魔獣の毛であったり魔獣を殺さずに入手できる素材ならばいくらでもあるんじゃ。ただ、骨や皮や牙など魔獣の死体での素材は手に入らんのじゃ。というのもここは神の世界であり死後の世界と同義。ここに来る人も魔獣も死体では無く死ぬ直前の姿じゃ。じゃからどうあっても今言ったような素材は手に入らんのじゃよ。」


「今度から魔獣を倒したら確保するようにするけどどうやって送ればいいんだ?」


「それはお主の収納の加護でポンッと納めればこっちに来るように調整するわい。生きてるモノは入らなくても死んでいるなら問題無いからの。もしそっちで使いたいなら解体だけも受け付けてやるぞ。」


「了解。こんどからガンガン回収しとくよ。さて、用も済んだしそろそろ帰りたいんだけど。これ以上起きてたら明日の出発に響きそうだ。」


「それもそうじゃな。どれワシが送り返してやろう。」


そう言ってガンドラダが取り出したのは黄色と赤で作られた見たことのあるおもちゃのハンマーだった。


「何そのピコハン?」


「うむ、お主の世界のおもちゃをモデルに作った道具でな。これでピコンと殴れば現世に帰れるって訳じゃ。」


「なるほど、じゃ、頼むわ。」


「おう、まかせい。」


ガンドラダはそう言うとピコハンを両手でしっかり持ち古のホームラン王の如く一本足で構えた。


「っちょ、バカ、お前の体で思いっきり振ったら」


3mの巨体から繰り出される一本足打法。

俺はそれを受けて気を失ったのだった。

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