送別パーティー(敗戦模様)

「ヴィオラさん良ければこちらもどうぞ。」


「ありがとう、マルチナ。君の家の料理長は本当に腕がいいな。」


「フフ、その言葉伝えておきますね。」


「ところで君はあそこに混じらなくていいのかい?」


「ああ、流石にあれはちょっと…」


そう言って彼女が視線を動かした先にいるのはボクの主達だった。

主はブリッサやリーサ、ネフェル達と楽しそうに過ごしている…


「ウェ~~イ!このジュース甘くて美味しいな。もっと持ってこ~い!」

「ゴシュジン、飲み過ぎじゃナイカ。そろそろ辞めた方がいいんじゃナイカ。」

「ダメですよ、巫女様。男の人が楽しそうに飲んでいるのを止めては。そっと見守るのが女の甲斐性って奴ですよ。」

「ム、そうナノカ。やはりネフェルはいろいろ知ってイルナ。」

「お、許可が出たよイサナくん。じゃぁもう一杯いってみようか。」


パーティーが始まってすぐは問題はなかった。

主も喜んで料理を食べてたり会場の面々とちゃんと話したりしてたのだが、気づけばあのような状態になってしまっていた。

ちなみにメイは主の醜態を見る前におねむになってしまったので部屋で眠っている。

子供だから酒は飲まないようにジュースしか飲んでなかったはずなのだが何故こうなった。


「マルチナ。本当に酒精は入っていないんだな?」


「え、ええ。何度も確認しましたし私も飲んでみましたがただのジュースでしたよ。」


「なら何故あんな事になったのやら…」


ちなみに後で知ったことなのだが、ハチミツと果汁で作られたこの甘いジュース。時たま飲んだ子供が主みたいに騒いだり泣いたりと酔っ払いの様な症状になることがあるらしい、恐らく主はその体質だったのだろう。

因みにそのことを主に伝えたら。

「それアレじゃん…発酵してるだけじゃん…完全にミードじゃん」

とブツブツ言っていたがまぁ気にすることは無いだろう。


・・・

・・


ブリッサさんから甘くて美味しいジュースを貰ってからなんだかとっても気分が良い。

やっぱり久しぶりの甘味だからかな~


「ねぇねぇイサナくん。もし帰ってきたらまたセキトに乗ってもいい?」


「いいよぉ、いいよぉ!」


「話をしたら父様も乗ってみたいって言ってたんだけど良いかな?」


「いいよぉ、セキトはつよいこだからぁ、大人が乗ってもダイジョウブ。」


ウィ~~イ、なんだか今なら何でも許しちゃえる気がするぞ~


「そう言えばイサナくんって何処から来たの?行商中に家に帰りたいとかって思わないの?」


「ん~~。おれはわけあって商人なったときには家族に会えないことがきまってたからおもわないなぁ~それに、じたいずぅぅとずぅぅぅと遠くにあるからぁ~。」


「え!?あ、ゴメンね変なこと聞いちゃって言いにくい事だったら無理に言わなくていいんだよ。」


「ダイジョブ、ダイジョブ。今はヴィオラもいてメイちゃんもいてリーサもいるし、ブリッサさん達もやさしいからきにならないよぉ。あと、何か聞いておきたいことあるぅ~今ならなんでも答えちゃうよぉ~」


「ほう、ならばこちらの質問に答えて貰おうか。」


やってきたのは宰相だった。

あいも変わらずしかめっ面だなぁ~娘にきらわれるぞぉ~


「君は何処からやって来たのかね?こちらが調べた限り君はこの国の人間ではないようだが?」


「俺は東のほうからきたんだ~そこのかいたくむらで塩をうったのが初めてのしょうばいだよぉ。」


「東の開拓村で塩を?まぁ、あそこは確かに行商が通らないと塩が無いからな。ちなみにその塩は何処で仕入れた?」


「しおはねぇ。でろーっておもったらワサーってでるんだ~。俺のマホウ、マホウ。」


「魔法?塩の出る魔法なんて聞いたこともないな。ちなみに今も出せるか?」


「今はダメです~ しおはうちのだから安売りはしませ~ん。」


「塩の事はあとで金を用意するからその時に改めて確認しよう。一番聞きたいのはこれからだ。確実に答えて貰うぞ。君は何故この国にやってきた?何が目的でここに来たんだ?」


「ん~なぜっていわれてもぉ、神さまにおねがいされたからとしかいえないなぁ」


「は?神様?それは教会の言う神か?」


「キョウカイの神さまがだれかは知らないけど~ おねがいされたのはグランフィリアさま~ 住むとこないぐらい物であふれたからうっぱらってきてっていわれた~」


「グランフィリアとはまた大それた名前をだしたが流石にそれを信じるとでも?」


「そういわれてもホントのことだってばぁ~お仕事できないっていってったってばぁ~」


「商人!隠したい気持ちは分かるが素直に本当のことを言いたまえ。正直に言って君の考え方は異質だ。今はまだいいがいずれ名が広まった時に素性不明のままでは厄介ごとに巻き込まれるぞ。ここで打ち明けるならここだけの秘密に出来る、言うなら今だぞ。」


「だ~か~ら~、ほんとうのことだって~ だからあんまり揺らさないで~目がまわる~」


宰相が肩を掴んで揺すっているがなんだか眠くなってきたなぁ…

ジュースのおかげで気持ちがいいしここまま寝ちゃおっかなぁ


「宰相閣下、大人しく我が主から手を放してもらおうか。」


最後にヴィオラの怒った声が聞こえてきたような気がする。

ヴィオラ、ケンカはダメだぞ~


※…………………………………………※※※…………………………………………※


「…ヴィオラ、ケンカはダメだぞ」


その言葉を最後に主は眠ってしまったので宰相から無理やり奪い取り主を抱きかかえた。


「お前は商人の…一つ聞きたいが君は彼の正体を知っているのか?」


「もちろんです。ボクもメイも主が何処からきて何を成そうとしているのか全部きいています。ですが、ボクの口からそれを伝えるわけにはいきませんので。」


「君ならば分かっているのではないか。彼は非常に危うい存在だと言うことが。」


「もちろん分かっていますよ。主の存在が世界を変えかねない程も。」


「だったら!「だからこそボクから言う事は何も無い。ボクは主をあらゆるモノから守るだけですから。」


「本当に何も言うつもりは無いのだな。」


「その通りです。ただ、まぁ最近あった事件の容疑だけでも晴らしておきましょうか。ある程度大きなゴーレムのかけらを使って魔法学院の連中に残存魔力を調べさせればいい。それで少なくとも実行犯の目星はつく。あとは戦場となった森を徹底的に調べさせることだあれほどの量なら触媒を使った術師の痕跡が残っているはずだよ。」


「…言われたとおりにやってみよう。」


「では、ボクは主を部屋に運ぶからここで失礼するよ。ああ、それと最後に一つだけ。」


「なにかね?」


「主は。では、さようなら。」


それだけを告げてボクは会場を後にした。

別にあの人間に協力をする気はないが主の事を気に入ってるようなのでこれぐらいはしておいてやろう。

さて、早く部屋に主を持って行かないとね。


大丈夫だよ、主。

君のことはボクが守ってあげるから、ずっとね。



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